ウイルス感染症の効果的制御のための病原体サーベイランスシステムの検討

文献情報

文献番号
200931013A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス感染症の効果的制御のための病原体サーベイランスシステムの検討
課題番号
H19-新興・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
清水 博之(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 小池 智(東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所)
  • 帖佐 徹(九州産業衛生協会)
  • 岩井 雅恵(富山県衛生研究所)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 有田 峰太郎(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 西村 順裕(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 野田 雅博(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 駒瀬 勝啓(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
56,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ワクチン予防可能疾患病原体サーベイランスの質的向上を行うとともに、未だサーベイランスシステムが確立していない他のウイルス感染症に応用する。ポリオ流行国は4ヶ国に減少したが、世界ポリオ根絶達成にとって重要な新たな技術的課題が生じている。重症エンテロウイルス感染症の制御を含む、世界ポリオ根絶達成後を見すえた研究が必要とされる。日本は2012年までの麻疹排除を目指している。2008年に全数届出制が導入されたが、いまだ臨床診断が多く、検査診断による麻疹サーベイランス体制は十分ではない。多くの急性呼吸器感染症の病原体サーベイランスは、いまだ十分に機能しておらずサーベイランス体制の確立が必要とされている。
研究方法
精度および感度の高い病原体サーベイランスの確立を目的として、病原体サーベイランス手法の評価・開発、実験室ネットワークの整備、およびウイルス感染伝播機構に関する研究を行った。腸管・呼吸器感染症の病原体サーベイランスシステム構築のための基盤的研究を行った。
結果と考察
環境サーベイランスは補完的ポリオサーベイライスとして重要であり、他の腸管ウイルス感染症の検出にも応用可能である。EV71特異的受容体の同定はウイルス学的にきわめて重要な知見であり、新たな検査法や感染動物モデル開発への技術的応用が期待できる。地方衛生研究所の中に10カ所の麻疹・風疹レファレンスセンターを設置し、情報、試薬、技術指導等の円滑な伝達が可能となる体制を整備した。麻疹患者報告数は激減しつつあり、全数検査診断に向けた取り組みが重要である。ARIウイルスの効果的なサーベイランス実施のための包括的な研究を行ない、ウイルスサーベイランスおよび重症例等の病原検索を試みた結果,多様なARIウイルスが検出された。臨床症状,ウイルス学的解析から呼吸器症状のみならず多様な疾患への関与が推定された。
結論
ポリオ、麻疹を含むウイルス感染症病原体サーベイランスについて、技術的評価および新たな検査手法の開発を行い、感度および精度の高い病原体サーベイランス手法の研究を行った。ウイルス感染症制御に必要とされる病原体サーベイランスのためには病原体の特性に合わせたサーベイランス手法の確立が重要であり、個々のウイルス感染症に則した基盤技術および実験室ネットワークの整備を行った。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200931013B
報告書区分
総合
研究課題名
ウイルス感染症の効果的制御のための病原体サーベイランスシステムの検討
課題番号
H19-新興・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
清水 博之(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 多屋馨子(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 小池 智(東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所)
  • 帖佐 徹(九州産業衛生協会)
  • 岩井雅恵(富山県衛生研究所)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 有田峰太郎(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 西村順裕(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 野田雅博(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 駒瀬勝啓(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ワクチン予防可能疾患病原体サーベイランスの質的向上を行うとともに、ポリオおよび麻疹の制御過程で得られた知見を未だサーベイランスシステムが確立していない他のウイルス感染症に応用する。感度および精度が高いポリオサーベイランス手法の開発は世界ポリオ根絶達成のため重要である。2012年までの麻疹排除に向け、麻疹制御の進展を精度の高い病原体サーベイランスにより検証する。日常的に検出される腸管・呼吸器感染症の病原体サーベイランスシステムを構築することにより、ウイルス感染症の発生を迅速かつ感度良く検出するための研究資源の蓄積を図る。
研究方法
質の高い疾患サーベイランスと連動した精度および感度の高い病原体サーベイランスの確立を目的として、病原体サーベイランス手法の評価・開発およびウイルス感染伝播機構に関する研究を行った。ポリオに関しては、AFPサーベイランスを補完する病原体サーベイランスについて、麻疹については、麻疹症例全数報告に連動した実験室診断系について研究を行った。また、腸管・呼吸器感染症の病原体サーベイランスシステム構築のための基盤的研究を行った。
結果と考察
国内外のポリオフリーを確認し、多様な病原体サーベイランスシステムの確立が重要であることを明らかにした。EV71特異的受容体の同定はウイルス学的にきわめて重要な知見であり、新たな検査法や感染動物モデル開発への技術的応用が期待できる。2012までの麻疹排除達成に向け、地衛研・感染研間の連携による麻疹検査実施体制の運営を開始した。麻疹患者報告数が減少した場合、全数検査診断を徹底することが重要である。急性呼吸器ウイルス感染症に対する病原体サーベイランスの重要性を明らかにし、検査手法の評価・改良および標準的実験室検査手法の整備を行った。地方衛生研究所実験室ネットワークを基盤としたサーベイランス手法の開発および病原体検出マニュアル等標準的検査法の整備が今後も重要である。
結論
ポリオ、麻疹を含むウイルス感染症病原体サーベイランスについて、技術的評価および新たな検査手法の開発を行い、感度および精度の高い病原体サーベイランス手法の研究を行った。ウイルス感染症制御に必要とされる病原体サーベイランス整備のためには病原体の特性に合わせたサーベイランス手法の確立が重要であり、個々のウイルス感染症に則した技術的改良および標準化を行った。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200931013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
エンテロウイルス感染増殖・病原性発現機構解明の一環として、エンテロウイルス71特異的宿主受容体分子の探索を行い、リンパ球へのEV71感染に関与する宿主受容体PSGL-1を同定した。
臨床的観点からの成果
・AFPおよび追加サーベイランスにより、国内および西太平洋地域のポリオフリーの確認を行うとともに、VDPVによるポリオ流行のリスクを明らかにした。
・地方衛生研究所から10カ所の麻疹・風疹レファレンスセンターを選び、感染研、地方衛生研究所を結んだ麻疹・風疹診断ネットワークを立ち上げた。
ガイドライン等の開発
Final quality assurance report of phase 1 wild poliovirus laboratory containment in Japan: WHO reportいの作成に協力しWHO西太平洋事務局に提出(December, 2008)
その他行政的観点からの成果
・麻疹教育啓発用DVD「はしかから身を守るために」作成・配布
・リーフレット「麻しんを疑ったら、検査診断にご協力を!麻しんは全例、検査診断を!2012年の麻しん排除をめざして」作成・配布
その他のインパクト
サイエンス「感染症、どこまでなくせる?」 日本経済新聞、2010年1月10日

発表件数

原著論文(和文)
31件
原著論文(英文等)
63件
その他論文(和文)
53件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
97件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishimura Y, Shimizu H et al.
Human P-selectin glycoprotein ligand-1 is a functional receptor for enterovirus 71
Nat Med , 15 , 794-797  (2009)
原著論文2
Yamayoshi S, Koike S et al.
Scavenger receptor B2 is a cellular receptor for enterovirus 71
Nat Med , 15 , 789-801  (2009)
原著論文3
Mizuta K, Ahiko T et al.
Cross-antigenicity among EV71 strains from different genogroups isolated in Yamagata, Japan, between 1990 and 2007
Vaccine , 27 , 3153-3158  (2009)
原著論文4
Goto K, Nishimura Y, Shimizu H,et al.
Rhombencephalitis and coxsackievirus A16
Emerg Infect Dis , 15 , 1689-1691  (2009)
原著論文5
Arita M, Wakita T, Shimizu H
Cellular kinase inhibitors that suppress enterovirus replication have a conserved target in the viral protein 3A similar to that of enviroxime
J Gen Virol , 90 , 1869-1879  (2009)
原著論文6
Arita M, Shimizu H et al.
Development of a reverse  transcription -loop- mediated isothermal amplification (RT-LAMP) system for a highly sensitive detection of enterovirus in the stool samples of acute flaccid paralysis case.
BMC Infect Dis , 9 , 208-  (2009)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-