遺伝子増幅RPA法に基づいた媒介蚊における迅速簡便病原体検出法の開発

文献情報

文献番号
200931011A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子増幅RPA法に基づいた媒介蚊における迅速簡便病原体検出法の開発
課題番号
H19-新興・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
嘉糠 洋陸(国立大学法人帯広畜産大学 原虫病研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福本 晋也(国立大学法人帯広畜産大学 原虫病研究センター )
  • 油田 正夫(国立大学法人三重大学 大学院医学系研究科)
  • 下島 昌幸(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
  • 平田 晴之(酪農学園大学 大学院獣医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,502,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
マラリア、西ナイル熱、デング熱等の蚊媒介性の再興感染症は世界的に大きな脅威となっている。このような感染症では、たった一つの病原体の侵入でも人への感染成立が可能なため、高感度かつ特異的な検出法が必要であり、これらの特性に優れたPCR法が現在の主流となっている。しかしながらPCR法は高度な設備を必要とし、汎用性に問題がある。本研究では、これらの感染症の本邦への侵入防除に寄与するため、等温遺伝子増幅法による迅速・簡便病原体検出法の確立を目的とした。
研究方法
一種類の蚊が同時に媒介可能な多種の病原体を一度の検査により検出可能な手法を開発する目的で、マルチプレックス等温遺伝子増幅法とイムノクロマト法の併用を試みた。各種病原体に対するプライマーにそれぞれことなる標識を施し、それらの混合プライマーを用いた等温遺伝子増幅法の反応条件至適化をおこなった。またこれら各種標識に対する抗体を用いたイムノクロマトを作製し、一度に多種の病原体を検出可能なマルチプレックス等温遺伝子増幅-イムノクロマト法を開発した。さらに、当該感染症流行地域において蚊サンプルを収集し、等温遺伝子増幅法の実用性を評価し、流行状況の把握を試みた。
結果と考察
本年度の研究成果として、(1)ウイルス検出のためのマルチプレックス等温遺伝子増幅-イムノクロマト法の開発、(2)寄生虫検出のためのマルチプレックス等温遺伝子増幅-イムノクロマト法の開発、(3)マルチプレックス等温遺伝子増幅産物のイムノクロマト法による検出技術の確立、および(4)流行地域における蚊サンプリングと等温遺伝子増幅法の実用性評価を実施した。LAMP法等の等温遺伝子増幅原理の病原体検出法としての応用開発研究は、我が国を含めた世界各国に於ける新規病原体サーベイシステムとして、多大なる貢献をもたらすものと考えられる。
結論
日本における蚊媒介性感染症の発症例は、諸外国での感染に起因する輸入症例に限られているが、人々の活動がグローバル化した現在、病原体を保有した蚊が航空機や船舶に紛れて我が国に侵入し、流行が勃発する危険性がある。本研究により等温遺伝子増幅法の応用開発が達成されれば、極めて高感度で迅速かつ簡便な病原体検出法を提供することになり、日本を含めた国際保健医療に多大な貢献をするものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200931011B
報告書区分
総合
研究課題名
遺伝子増幅RPA法に基づいた媒介蚊における迅速簡便病原体検出法の開発
課題番号
H19-新興・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
嘉糠 洋陸(国立大学法人帯広畜産大学 原虫病研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福本 晋也(国立大学法人帯広畜産大学 原虫病研究センター )
  • 油田 正夫(国立大学法人三重大学 大学院医学系研究科)
  • 下島 昌幸(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
  • 平田 晴之(酪農学園大学 大学院獣医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
マラリア、西ナイル熱、デング熱等の蚊媒介性の再興感染症は世界的に大きな脅威となっている。このような感染症では、たった一つの病原体の侵入でも人への感染成立が可能なため、高感度かつ特異的な検出法が必要であり、これらの特性に優れたPCR法が現在の主流となっている。しかしながらPCR法は高度な設備を必要とし、汎用性に問題がある。本研究では、これらの感染症の本邦への侵入防除に寄与するため、等温遺伝子増幅法による迅速・簡便病原体検出法の確立を目的とした。
研究方法
一種類の蚊が同時に媒介可能な多種の病原体を一度の検査により検出可能な手法を開発する目的で、媒介蚊そのものを用いた感染症モデルを駆使し、蛍光マルチプレックス等温遺伝子増幅法の開発とイムノクロマト法とのマッチングを試みた。また、当該感染症の流行地域(国内・国外)において蚊サンプルを収集し、等温遺伝子増幅法の実用性を評価し、流行状況把握の実施可能性を検証した。
結果と考察
研究成果として、(1)単一ウイルス検出のためのマルチプレックス等温遺伝子増幅-イムノクロマト法の開発、(2)単一寄生虫検出のためのマルチプレックス等温遺伝子増幅-イムノクロマト法の開発、(3)マルチプレックス等温遺伝子増幅産物のイムノクロマト法による検出技術の確立、および(4)流行地域における蚊サンプリングと等温遺伝子増幅法の実用性評価を実施した。LAMP法等の等温遺伝子増幅原理の病原体検出法としての応用開発研究は、我が国を含めた世界各国に於ける新規病原体サーベイシステムとして、多大なる貢献をもたらすものと考えられる。
結論
日本における蚊媒介性感染症の発症例は、諸外国での感染に起因する輸入症例に限られているが、人々の活動がグローバル化した現在、病原体を保有した蚊が航空機や船舶に紛れて我が国に侵入し、流行が勃発する危険性がある。本研究により等温遺伝子増幅法の応用開発が達成されれば、極めて高感度で迅速かつ簡便な病原体検出法を提供することになり、日本を含めた国際保健医療に多大な貢献をするものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200931011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
マラリア、西ナイル熱、デング熱等の蚊媒介性の再興感染症は世界的に大きな脅威となっているにも関わらず、媒介蚊への等温遺伝子増幅法の応用開発は国内外でも例が無い状況であった。研究論文として、ウイルスや原虫、寄生性蠕虫などの媒介蚊における検出法開発を立て続けに報告し、蚊一匹から単一の病原体検出が可能であること、蛍光標識によるマルチプレックス化の成功など、他の病原体検出法開発に大きな影響を与える成果を得ることに成功した。
臨床的観点からの成果
等温遺伝子増幅法のパイロット調査として、国内(沖縄県名護市:フィラリア症)および海外(西アフリカ:マラリア)の蚊媒介性感染症流行地域において疫学調査を実施した。その結果、採取した蚊の病原体保有状況を、本法により迅速かつ簡便に判定可能であることが明らかとなり、局所的または季節性の蚊媒介性感染症流行予測等に貢献する可能性を見出した。
ガイドライン等の開発
本研究課題はその性質の主が開発研究であり、ガイドライン等の作成を実施していない。しかし、病原体媒介蚊の診断に向けた等温遺伝子増幅法の普及にあたっては、「病原体媒介節足動物の輸出入および取扱いに対するガイドライン」等の作成が強く望まれる。
その他行政的観点からの成果
日本における蚊媒介性感染症の発症例は、諸外国での感染に起因する輸入症例に限られているが、人々の活動がグローバル化した現在、病原体を保有した蚊が航空機や船舶に紛れて我が国に侵入し、流行が勃発する危険性がある。本研究により等温遺伝子増幅法の応用開発が達成されれば、国内における媒介蚊の病原体保有状況把握による流行予測情報のオン・タイム提供、またはグローバル化による本邦への蚊媒介感染症流入に対するリスクマネジメントの必要性提起など、日本を含めた国際保健医療に多大な貢献をするものと考えられる。
その他のインパクト
本研究課題で開発された蛍光マルチプレックス等温遺伝子増幅法の臨床現場や各種検査施設での応用を睨み、コンパクトかつ少ない電源で駆動する検出デバイスの開発を実施した。この開発には複数の民間企業と大学研究者が参加し、PC接続によるリアルタイム検出が可能なプロトタイプを作出することに成功した(現在も開発進行中)。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
34件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
68件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Iwanaga S, Khan SM., Kaneko I, Christodoulou Z et al.
Functional Identification of the Plasmodium Centromere and Generation of a Plasmodium Artificial Chromosome
Cell Host & Microbe , 7 (3) , 245-255  (2010)
原著論文2
Yuda M, Iwanaga S, Shigenobu S, Kato T et al.
Transcription Factor AP2-Sp and its Target Genes in Malarial Sporozoites
Mol Microbiol , 75 (4) , 854-863  (2009)
原著論文3
Yuda M, Iwanaga S, Shigenobu S, Mair GR et al.
Identification of a transcription factor in the mosquito-invasive stage of malaria parasites
Mol Microbiol , 71 (6) , 1402-1414  (2009)
原著論文4
Miyazaki K, Yamaguchi M, Imai H, Kobayashi T et al.
Gene expression profiling of peripheral T-cell lymphoma including gammadelta T-cell lymphoma
Blood , 113 (5) , 1071-1074  (2009)
原著論文5
Shinzawa, N., Nelson, B., Aonuma, H., Okado, K. et al.
p38 MAPK-dependent phagocytic encapsulation confers infection tolerance in Drosophila
Cell Host & Microbe , 6 , 244-252  (2009)
原著論文6
Thekisoe, O. M., Rodriguez, C. V., Rivas, F., Coronel-Servian, A. M. et al.
Detection of Trypanosoma cruzi and T. rangeli Infections from Rhodnius pallescens Bugs by Loop-Mediated Isothermal Amplification (LAMP)
Am J Trop Med Hyg , 82 , 855-860  (2010)
原著論文7
Herbas, M. S., Ueta, Y. Y., Ichikawa, C., Chiba, M. et al.
Alpha-tocopherol transfer protein disruption confers resistance to malarial infection in mice
Malaria J , 9 , 101-112  (2010)
原著論文8
Aonuma, H., Yoshimura, A., Kobayashi, T., Okado, K. et al.
A single fluorescence-based LAMP reaction for identifying multiple parasites in mosquitoes
Exp Parasitol , 125 , 179-183  (2010)
原著論文9
Matsuno K, Kishida N, Usami K, Igarashi M et al.
Different potential of C-type lectin-mediated entry between Marburg virus strains
J Virol , 84 , 5140-5147  (2010)
原著論文10
Nishimura Y, Shimojima M, Tano Y, Miyamura T et al.
Human P-selectin glycoprotein ligand-1 is a functional receptor for enterovirus 71
Nat Med , 15 , 794-797  (2009)
原著論文11
Itoh Y, Itoh Y, Shinya K, Kiso M et al.
In vitro and in vivo characterization of new swine-origin H1N1 influenza viruses
Nature , 460 , 1021-1025  (2009)
原著論文12
Kakugawa S, Shimojima M, Neumann G, Goto H et al.
RuvB-like protein 2 is a suppressor of influenza A virus polymerases
J Virol , 83 , 3429-6434  (2009)
原著論文13
Aonuma H, Suzuki M, Iseki H, Perera N et al.
Rapid identification of Plasmodium-carrying mosquitoes using loop-mediated isothermal amplification
Biochem Biophys Res Commun , 376 (4) , 671-676  (2008)
原著論文14
Perera N, Aonuma H, Yoshimura A, Teramoto T et al.
Rapid identification of virus-carrying mosquitoes using reverse transcription-loop-mediated isothermal amplification
J Virol Methods , 156 , 32-36  (2008)
原著論文15
Okado K, Shinzawa N, Aonuma H, Nelson B et al.
Rapid recruitment of innate immunity regulates variation of intracellular pathogen resistance in Drosophila
Biochem Biophys Res Commun , 379 (1) , 6-10  (2009)
原著論文16
Aonuma H, Yoshimura A, Perera N, Shinzawa N et al.
Loop-mediated isothermal amplification applied to filarial parasites detection in the mosquito vectors: Dirofilaria immitis as a study model
Parasit Vectors , 2 (1) , 15-21  (2009)
原著論文17
Sasaki M, Omobowale O, Ohta K, Tozuka M et al.
A PCR-based epidemiological survey of Hepatozoon canis in dogs in Nigeria
J Vet Med Sci , 70 (7) , 743-745  (2008)
原著論文18
Sasaki, M., Omobowale, O., Tozuka, M., Ohta, K et al.
Molecular Survey of Babesia canis in Dog in Nigeria
J Vet Med Sci , 69 , 1191-1193  (2007)
原著論文19
Miyakoda M, Kimura D, Yuda M, Chinzei Y et al.
alaria-specific and nonspecific activation of CD8+ T cells during blood stage of Plasmodium berghei infection
J Immunol , 181 (2) , 1420-1428  (2008)
原著論文20
Amino R, Giovannini D, Thiberge S, Gueirard P et al.
Host cell traversal is important for progression of the malaria parasite through the dermis to the liver
Cell Host & Microbe , 3 (2) , 88-96  (2008)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-