救急医療機関における訪日外国人患者の未収金の実態把握と防止策検討のための研究

文献情報

文献番号
202306013A
報告書区分
総括
研究課題名
救急医療機関における訪日外国人患者の未収金の実態把握と防止策検討のための研究
課題番号
23CA2013
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
北川 雄光(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 八木 洋(慶應義塾大学 医学部 外科学(一般・消化器))
  • 岡村 世里奈(国際医療福祉大学大学院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、訪日外国人患者の効果的な未収金防止対策について検討するため、全国の救急医療機関を対象とした未収金に関する実態調査ならびに海外旅行保険会社・医療アシスタンス会社との円滑な対応の在り方に関する調査を行った。
研究方法
全国の救急医療機関(二次医療機関、三次医療機関、救急指定病院)3,987機関に対して、訪日外国人患者の未収金防止に向けた取り組み状況や令和5年1月1日~12月31日間における未収金状況に関するオンライン・アンケート調査を行った。スペイン・バルセロナで開催された「International Travel & Health Insurance Conferences GLOBAL」(ITIC GLOBAL)に参加して、海外旅行保険や医療アシスタンスに関する世界の動向や課題等に関する情報の収集を行った。さらに国内の動向を探るために、国内の医療アシスタンス会社2社に対して、オンライン・インタビュー調査を行った。
結果と考察
調査の結果、①救急医療機関における外国人患者の受入れ体制整備状況や訪日外国人患者の未収金防止に向けた取り組み状況には大きな差があること、②未収金防止の取り組みを行っているところであっても、その具体的な取り組み内容や実施方法については統一されておらず、かなりばらつきがあること、③未収金の発生には、単に外国人患者の受入れ体制整備や未収金防止に向けた取り組みを実施していなかったり、不十分であったりするといった基本的な部分とは別に、様々な訪日外国人患者または外国人患者一般に該当する特有の原因があること、④未収金発生事例の中でも、「直ちに治療を行わなければ命に係わる重篤な疾患」の場合には、たとえ訪日外国人患者が医療費の支払い能力がないことが判明したとしても医療機関としては治療を行う必要があり、結果的に当該医療機関がすべての金銭的負担やリスクを被る状況となってしまうケースがあること、⑤国際的な海外旅行保険ならびに医療アシスタンスの業界でもサービスの在り方に変化が生じていること、⑥医療アシスタンス会社においても、特に地方部において訪日外国人患者を受入れてくれる医療機関を探するのに苦労していること等が明らかとなった。
結論
以上を踏まえると、今後、わが国の医療機関において訪日外国人患者に関する未収金の発生を防止していくためには、①個々の医療機関が訪日外国人患者特有の未収金発生の要因に対して理解を深め、当該諸原因に対して具体的な対策を講じれるようにマニュアルや研修を通じて周知していくこと、②「直ちに治療を行わなければ命に係わる重篤な疾患」の場合には、たとえ訪日外国人患者が所持金やクレジットカードを保有していなかったり、海外旅行保険に加入していても既往症に基づく疾患ということで補償の対象外となるなど様々な原因によって医療費の支払い能力がないことが判明したとしても医療機関としては治療を行う必要があり、このような場合には医療機関がすべての金銭的な負担やリスクを被らなくてすむような施策や取り組みを検討すること、③医療機関と医療アシスタンス会社が円滑に連携できるように、2018年に発表された「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に向けた総合対策」の取り組みの一つである医療関係者・観光事業者・行政が協力して対策協議会等を通じて医療機関と医療アシスタンス会社間の連携関係の構築や強化を図るような取り組みを行っていくことが肝要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202306013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)研究成果:全国の二次・三次救急医療機関に対して未収金発生事案に関するアンケート調査を行うことによって、未収金の実態を把握するとともに発生要因が明らかになった。
(2)研究成果の学術的・国際的・社会的意義:国内外の海外旅行保険会社ならびに医療アシスタンス会社に対してインタビュー調査等を行うことによって、医療機関が円滑に対応・連携していくためのポイントが明らかになった。
臨床的観点からの成果
(1)研究成果:これまで明らかにされてこなかった未収金の具体的な状況や発生要因が判明し、今後の当該問題に対応するための効果的な施策の実施や医療機関への有益な情報提供に寄与するデータが蓄積された。
(2)研究成果の学術的・国際的・社会的意義:本研究成果が効果的な施策の在り方を検討するための貴重な基礎資料になるとともに、当該成果を「医療機関のための外国人患者受け入れマニュアル」等に反映させることによって、今後全国の地方自治体や医療機関の未収金対策が進むことが期待される。
ガイドライン等の開発
本研究は救急診療における外国人患者の現状を把握するための調査研究であり、本研究成果をもとに、今後ガイドライン策定に向けて検討を開始する。
その他行政的観点からの成果
全国の救急医療機関を対象とした未収金に関する実態調査ならびに海外旅行保険会社・医療アシスタンス会社との円滑な対応の在り方に関する調査を行った結果、訪日外国人患者の効果的な未収金防止対策について検討するための重要なデータが蓄積された。
その他のインパクト
今後外国人患者の未収金問題に対する具体的な政策につながる大きな布石となる研究成果を創出した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
202306013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,824,000円
(2)補助金確定額
5,824,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 917,943円
旅費 1,020,030円
その他 2,542,027円
間接経費 1,344,000円
合計 5,824,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-