動物由来感染症の生態学的アプローチによるリスク評価等に関する研究

文献情報

文献番号
200931009A
報告書区分
総括
研究課題名
動物由来感染症の生態学的アプローチによるリスク評価等に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山田 章雄(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岸本 壽男(岡山県環境保健センター)
  • 川端 寛樹(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 高橋 元秀(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 柳井 徳磨(岐阜大学 農学部)
  • 井上 智(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 棚林 清(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 今岡 浩一(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 藤田 修(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
26,030,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)国内での発生が稀ではあるがその存在が知られている動物由来感染症に関して、その生態系での存在の実態を明らかにする。
(2)狂犬病の迅速診断のために必須な頭部の解剖研修用教材を開発する。
これらにより、動物由来感染症対策に必要なリスク評価が可能になること、また、狂犬病侵入時の危機管理体制の一助となることが期待される。
研究方法
捕獲した野生動物ならびに環境中における病原体を遺伝子検出、分離培養および血清学的に検出した。
結果と考察
ウシの平均10.4%がQ熱コクシエラC.burnetiiに対して抗体陽性だったが、遺伝子については全て陰性だった。新規ボレリアが回帰熱病原体であるBorrelia turicatae, B. parkeriと類縁であること、ならびに鳥類寄生マダニが媒介ベクターである可能性を明らかとした。犬・猫からジフテリア毒素産生性C.ulceransを分離し、これら動物間での拡散を確認した。患者と野良猫から本菌を分離し、両者の遺伝的同一性を明らかにした。野生イノシシでは0.6%が家畜ブルセラ菌に対し、9.6%がイヌブルセラ菌B. canisに対し抗体陽性で、シカの1.0%はB. canis陽性だった。抗体陽性動物からB. canis遺伝子と100%配列が一致する遺伝子が検出された。野兎病菌については、ノウサギの斃死体から菌分離とゲノムDNAが検出できた。ツキノワグマ、ノウサギ、ホンドタヌキ、ハクビシン、ハタネズミ、ノスリに抗体陽性個体が認められ、ツキノワグマ検体では他の方法により陽性が確認された。パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)解析で、国内野兎病菌株が高い遺伝的多型を示すこと、海外由来株の鑑別にPFGEが有用であることを示した。猟犬における日本紅斑熱、ツツガムシ病、ライム病、ジフテリア症、レプトスピラ症およびヘパトゾーン症の病原体に対する抗体保有状況を調査を実施し、猟犬が動物由来感染症の浸潤状況把握に有用であることを示した。イヌ頭部モデルに関しては、主に解剖手技習得モデルの改良と、本モデルを利用した技術研修の試行を行い、その有用性を確認した。
結論
国内での存在は明らかにされているがその存在様式が不明な動物由来感染症について実態調査を実施し、このような調査研究が動物由来感染症対策における科学的根拠を提供するために極めて重要であることを示した。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200931009B
報告書区分
総合
研究課題名
動物由来感染症の生態学的アプローチによるリスク評価等に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山田 章雄(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岸本 壽男(岡山県環境保健センター)
  • 川端 寛樹(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 高橋 元秀(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 柳井 徳磨(岐阜大学 農学部)
  • 今岡 浩一(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 井上 智(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 棚林 清(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 木村 昌伸(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 鈴木 道雄(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 藤田 修(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ブルセラ症、野兎病、Q熱、Corynebacterium ulcerans等国内での発生が稀ではあるがその存在が知られている動物由来感染症に関して、その生態系での存在の実態を明らかにするとともに、狂犬病の迅速診断のために必須な頭部の解剖研修用教材を開発する。
研究方法
野生動物、ペット、環境などから病原体の分離、遺伝子の検出を行うとともに、動物からは抗体検出も実施する。
結果と考察
信頼できるQ熱コクシエラ検出法を確立し、イヌ、ネコ、ウシで調査したところ、イヌの2.1%,ネコの6.7%、ウシの10.4%が抗体陽性だったが遺伝子が検出できた動物はなかった。鳥類に付着したマダニがボレリア分布の拡大に寄与していることおよび新種のボレリアの存在を明らかにした。野鳥の移動で拡散しやすいマダニ種とこれを媒介種とするボレリア種の存在を初めて明らにした。Borrelia turicatae, B. parkeriと類縁である新規ボレリアが国内棲息の鳥類寄生マダニで媒介される可能性が高いことを明らかとした。ジフテリア毒素産生性C.ulceransがイヌ間、ネコ間で拡散することを明らかにし、患者と野良猫から遺伝的同一な菌を分離した。イノシシの0.6%が家畜ブルセラ菌に、9.6%がイヌブルセラ菌B. canisに、シカの1.0%がB. canisに対する抗体が陽性だった。これらの動物からB. canis遺伝子と100%一致する遺伝子検出され。国内マダニに野兎病菌に極めて近縁な菌が存在する可能性が示した。野兎病罹患ノウサギが発見された場所近隣の土壌および湖沼水から野兎病菌DNAを検出した。6種の動物種のうちツキノワグマ由来検体の陽性が確認された。パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)解析で、国内野兎病菌株の遺伝的多型性、海外由来株との鑑別にPFGEが有用であることを示した。猟犬の血清学的調査で、日本紅斑熱リケッチア、ツツガムシ病オリエンチア、C.ulcerans、ライム病ボレリア、などの浸潤状況を把握するために、猟犬が有用な指標となりうる可能性を示した。狂犬病の診断技術向上に必要なイヌの解剖手技の実地教育・啓発教材としてイヌ頭部モデルを開発した。
結論
国内での存在は明らかにされているがその存在様式が不明な動物由来感染症について実態調査実施し動物由来感染症対策における科学的根拠を提供するために極めて重要であることを示した。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200931009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ブルセラ症、野兎病、Q熱、Corynebacterium ulcerans等国内での発生が稀ではあるがその存在が知られている動物由来感染症に関して、その生態系での存在の実態の一部を明らかにした。イヌにおける狂犬病診断に必要な技術を習得するための教材としてイヌの頭部解剖モデルを開発した。
臨床的観点からの成果
該当しない
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
今後の動物由来感染症対策を講じる上で必要となる科学的根拠が集積しつつある。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kimura, M. Tanikawa, T, Suzuki, M et al
Detection of Streptobacillus app. in feral rats by specific polymerase chain reaction
Microbiol. Immunol. , 52 (1) , 1-7  (2008)
原著論文2
Seto, Y. Komiya, T, Iwaki, M et al
Properties of Corynephage attachment site and molecular epidemiology of Corynebacterium ulcerans isolated from humans and animals in Japan
Jpn. J. Infect. Dis. , 61 , 116-122  (2008)
原著論文3
Kimura, M., Imaoka, K., Suzuki, M. et al
Evaluation of microplate agglutination test (MAT) for serological diagnosis od canine brucellosis
J. Vet. Med. Sci. , 70 (7) , 707-709  (2008)
原著論文4
Fujita, H., Kadosaka, T, Nitta, Y et al
Rickettsia sp in Ixodes granulatus ticks, Japan
Emerg. Infect. Dis. , 14 (12) , 1963-1964  (2008)
原著論文5
Kubo, M, Uni, S, Agatsuma T. et al
Hepatozoon ursi n. sp (Apicomplexa* Hepatozoidae) in Japanese black bear (Ursus thibetanus japonicus)
Parasitol. International , 57 , 287-294  (2008)
原著論文6
Takano A Sakata, A. Ogasawara Y. et al
Relapsing fever spirochete in seabird tick, Japan
Emerg. Infect. Dis. , 15 (9) , 1528-1530  (2009)
原著論文7
Honma, Y., Yoshii, Y., Watanabe, Y. et al
A case of a febril pneumonia caused by non-toxigenic Corynebacterium diphtheriae
Jpn. J. Infect. Dis. , 62 , 327-329  (2009)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-