日本におけるカニクイサル等(非ヒト霊長類)の需要と供給の現状把握と不足見込み数の推計並びに今後の検討・提言に向けた研究

文献情報

文献番号
202306010A
報告書区分
総括
研究課題名
日本におけるカニクイサル等(非ヒト霊長類)の需要と供給の現状把握と不足見込み数の推計並びに今後の検討・提言に向けた研究
課題番号
23CA2010
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
三好 一郎(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山海 直(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 平林 容子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 三好 一郎(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
  • 中村 克樹(京都大学 ヒト行動進化研究センター)
  • 依馬 正次(滋賀医科大学 動物生命科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カニクイザルは、ワクチン、医薬品の研究開発などで必要不可欠とされ、国内の医薬品研究開発で実施される毒性試験のほぼ半数で利用されている重要な実験動物である。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの発生や中国のサル輸出停止により、カニクイザルの価格が高騰するなどを含め供給の混乱による入手困難な状況に陥ったことから、その実態の把握を目的とした。
研究方法
 アンケート調査は、アカデミア、製薬企業及びCROを対象に、日本実験動物学会、関係業界団体の会員等に、「カニクイザル等(非ヒト霊長類)の実態調査について(協力のお願い)」として2023年11月20日から12月27日にかけて、Google formやNTTデータ経営研究所を通じてウェブ調査を実施した。ヒアリング調査は、研究分担者および研究協力者が現地に赴くかオンライン会議を開催し調査票の記載項目に沿ったヒアリングを行い、アンケートだけでは得られない情報の収集をはかった。
結果と考察
輸入に関する統計情報によると、中国からの輸入は、2020年に大幅に減少し、2021年以降はなくなっていた。一方で、他国からの頭数が増加し、2023年は2012年以降で最高の輸入数量が記録されていた。輸入元は、カンボジアとベトナムの2か国のみであった。
 アンケート調査等においては、一部のCROと製薬企業から、サル試験の受託が困難な状況や、開発期間の遅延などの問題が生じたとの意見が挙げられるなど、パンデミック下で影響が生じていたことがうかがえた。海外の情報の収集により、EU、米国でも同様にカニクイザルの不足が生じており、後者ではそれに対処するために自国内での生産を強化する動きも見られた。
 今後のパンデミック発生時における研究開発の遅延は、本邦でのワクチン、治療薬の開発の障害となりうる。この度のパンデミック下での中国からの輸出の停止や、米国などの動向も鑑みると、日本においても、輸入のみに依存せず、国内においてカニクイザルの繁殖の強化を検討することが必要である。検討の際には、繁殖実績や人材育成の取り組みが豊富な医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センター(以下、医薬健栄研TPRCという)を活用することが合理的対応措置のひとつであると考えられた。また、将来的には、カニクイザルの適切なリリースや分配を可能とするシステムの構築、あるいはカニクイザル入手に関するアクセスポイントの多様化など、適切な管理について検討することも重要である。
結論
 2020年以降、我が国ではカンボジアとベトナムからカニクイザルが輸入されており、2023年は2012年以降で最大の頭数であった。一方、アンケートの結果、一部の企業から、新型コロナウイルス感染症のパンデミック発生時に、カニクイザルの入手が困難となり、試験の受託困難や、開発期間の遅延が生じたなどの回答があった。
 また、国内でカニクイザルの繁殖を行っているのは企業1社とアカデミア2機関のみであることがわかった。EU、米国でも同様にカニクイザルの不足が生じており、後者ではそれに対処するために自国内での生産を強化する動きも見られた。
 マーモセットやミニブタ等への代替が今後も進まない場合、品質、防疫などの観点からも、輸入ではなく国内においてカニクイザルの繁殖の強化を検討することも必要と考えられた。
 検討の際は、繁殖実績や人材育成の取り組みが豊富な、医薬健栄研TPRCなども活用して行うことが合理的対応措置のひとつであると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202306010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新型コロナウイルス感染症のパンデミックや中国の輸出停止により、医薬品開発試験や基礎医学研究に必要不可欠なカニクイザルの価格が高騰し入手困難な状況に陥ったことから,実態を把握するために、製薬企業及び安全性試験受託試験機関、アカデミアにアンケート調査等を実施した。パンデミック以降,我が国ではカンボジアとベトナムからカニクイザルが輸入されており、2023年は2012年以降で最大の頭数であった。価格高騰により円滑な入手が妨げられたことから受託試験や開発研究に支障が生じたことが示唆された。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
パンデミック下における研究開発の遅延はワクチン、治療薬の開発の障害に直結する。価格や品質、防疫などの観点から、いかなる状況下においても一定数の個体を円滑に利用するために、国産のカニクイザルを確保することは重要課題である。我が国で最もカニクイザルの繁殖・飼養の実績や知見を集積している医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センターによる、繁殖や生産・頒布体制、並びに人材育成も含めた研究環境の整備強化を合理的対応措置のひとつとして提言する。
その他のインパクト
1)『サル不足の実態把握へ,認識のズレ埋まるか-厚労省研究班、特定ルート依存への懸念も』日刊薬業2023年12月27日に掲載された。

2)『実験用サルの価格、コロナ流行前の5倍に高騰..中国輸出停止の影響か「20頭で1億円以上必要」』読売新聞2024年1月30日朝刊に掲載された。

3)日本動物実験代替法学会第37回大会
シンポジウム「実験動物としてのNHP(非ヒト霊長類)の現状と動物実験代替法開発の取り組み」2024年11月29日(開催予定)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-07-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
202306010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,848,000円
(2)補助金確定額
8,717,524円
差引額 [(1)-(2)]
130,476円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,171,990円
人件費・謝金 886,300円
旅費 1,407,171円
その他 2,834,063円
間接経費 1,418,000円
合計 8,717,524円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-07-31
更新日
-