文献情報
文献番号
202306007A
報告書区分
総括
研究課題名
NDBの迅速提供に向けたスキーム再構築に資する研究
課題番号
23CA2007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
山本 隆一(一般財団法人医療情報システム開発センター )
研究分担者(所属機関)
- 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
- 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
- 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
- 満武 巨裕(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
匿名レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下、NDB)は、医療費適正化計画の作成、実施及び評価の調査や分析に用いるデータベース(以下、DB)として、平成20年にレセプト情報等の収載を開始した。平成25年度から第三者提供を実施し、令和2年には法制化され民間事業者へも提供が拡大し、介護保険総合データベース(以下、介護DB)との連結規定を整備し、医療・介護サービスの利用状況の複合的な解析が可能となった。令和4年度からはDPCのDBとも連結解析可能となり、NDBのクラウド化によりデータ取込や抽出の効率化を可能とし、国の保有するDBの利便性の向上が図られた。また、他の公的DBとの連結や死亡情報との連結の検討、クラウド上で解析環境を提供する医療・介護データ等の解析基盤(HIC)の開発も進められ、研究の利活用が益々促進されている。 他方で、NDBデータ提供に関しては、提供審査の承諾後も、提供データが研究者に届くまで一定時間を要しており、研究の新規性の喪失等の学術的不利益のみならず、研究費執行期限内にデータ利用ができない等の課題が生じている。要因は様々で、厚労省側の資源の制約等もあるが、研究者のNDB構造の知識不足により抽出条件確定までに時間を要する場合も多い。他DBとの連結等でニーズが予測される中、限られた資源を有効活用し、医療費適正化計画の作成等の政策の活用及び研究利活用を共に推進するため、現状のNDB提供遅延の要因を検討し、課題解決への提言を行う。
研究方法
NDBが抱える課題解決の具体的な方法としては、知見のない研究者に対し、NDB分析の知見や経験を蓄積し、能動的かつ伴走型でアドバイスする支援体制の構築と支援内容の公共財化や、提供実態の分析等を通じた最適な提供方法の検討、クラウド化での効率的なデータ提供体制の構築等が考えられる。本研究の研究者らは、平成23年当初より「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」審査分科会の構成員を務めており、本研究を主導し取り纏めを行う研究代表者は、現在NDBデータの提供の審議を行う「匿名医療情報等の提供に関する専門委員会」で令和2年発足当時からの委員長であり、NDBデータの利活用方針の議論にも携わってきた。研究分担者は何れもNDBを最も活用する研究者で、ユーザー側の視点も保有する。また、厚労省でNDBの提供業務に従事した経験を有する研究者が研究協力者として参画することで、ユーザー側、提供側各々の課題の知見を有する研究班体制を構えた上で研究を進めた。
結果と考察
<縦断的追跡を可能とするデータセットについて>現状では、研究に必要なデータのみを調整・抽出することが、提供までに時間がかかる要因となっている。しかし、NDB全ての膨大なレセプトデータからのデータ抽出は、必ずしも全ての研究において必要ではない。探索的解析に十分なデータ件数を含み、個人特定性リスクを減じる加工をした、1~数年分の縦断的追跡を可能とするデータセットを作成し、簡易な審査によって提供することで、短期間で安全性の高いNDBデータ提供が実現するものと考えられる。
<審査の効率化について>個人特定性のリスクが高くないデータセットの利用についても厳格に審査しているといった合理的でない申請業務については、書類審査の実現等、研究者の負担軽減の観点に立った運用改善が必要である。上述のデータセットよりも多くのデータが必要な研究については、追加的な審査の上で、研究者に提供されたクラウド環境において追加的なデータ利用を可能とする。これにより探索的解析から切れ目ない研究環境を構築できると考えられる
<研究者支援について>新規参入者を増加させるためにも、利便性の高い分析環境の構築とともに、研究者への支援体制も必要である。NDBに関する分析等の知見を一元的に集約したプラットフォーム環境の構築が期待される。
<審査の効率化について>個人特定性のリスクが高くないデータセットの利用についても厳格に審査しているといった合理的でない申請業務については、書類審査の実現等、研究者の負担軽減の観点に立った運用改善が必要である。上述のデータセットよりも多くのデータが必要な研究については、追加的な審査の上で、研究者に提供されたクラウド環境において追加的なデータ利用を可能とする。これにより探索的解析から切れ目ない研究環境を構築できると考えられる
<研究者支援について>新規参入者を増加させるためにも、利便性の高い分析環境の構築とともに、研究者への支援体制も必要である。NDBに関する分析等の知見を一元的に集約したプラットフォーム環境の構築が期待される。
結論
探索的解析に適したデータをリスク等の低減等の措置をした上で、1~数年分の縦断的追跡が可能なデータセットを作成する。これらのデータセットは簡易な審査によって提供可能であり、短期間で安全性の高いNDBデータ提供が実現する。審査期間については、個人特定性のリスクが著しく低いDC提供の場合は、簡易な書類審査の実現等で審査にかかる時間を短縮し、研究者の負担軽減の観点に立った運用改善が必要である。研究者の支援については、NDBに関する分析等の知見を一元的に集約したプラットフォーム環境の構築が期待される。
公開日・更新日
公開日
2024-06-10
更新日
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