海外における標準化を有した高品質医療リアルワールドデータ基盤整備のための調査研究

文献情報

文献番号
202306005A
報告書区分
総括
研究課題名
海外における標準化を有した高品質医療リアルワールドデータ基盤整備のための調査研究
課題番号
23CA2005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
山下 貴範(国立大学法人 九州大学 病院 メディカル・インフォメーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 河添 悦昌(東京大学大学院 医学系研究科 医療AI開発学講座)
  • 松木 絵里(慶應義塾大学 医学部)
  • 鳥飼 幸太(国立大学法人群馬大学 医学部附属病院)
  • 青柳 吉博(国立がん研究センター東病院 医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日々の診療で生成されるリアルワールドデータ(以下、RWD)の利活用が世界的に進められている。我が国の、RWD利活用に関しては、医療機関間の電子カルテシステムや検査コード等の違いに加え、解析用に抽出されるデータの品質に問題があり、複数の医療機関からのデータを統合解析することができないという課題が示され、AMED事業などで高品質のRWD創出に向けて取り組んできたところである。先行する海外の基盤構築からエビデンス創出までの取り組み内容やデータ解析に当たって使用されている標準の内容等を把握する必要が生じている。
本研究では海外RWD利活用の事例と基盤構築に向けた行政的な支援や事業の収益体制、関連規制等についてヒヤリング等を含めた調査を行い、その成果を国内にフィードバックすることを目的とした。海外との共同研究によるグローバル展開を視野に入れた情報収集として、世界的に最も広範かつ先進的な地域を網羅し、実績を上げているOHDSIの仕組みを把握した上で、OHDSIで推進している世界規模のRWD分析用の標準規格のOMOP-CDMの実装事例について調査を行った。
研究方法
リアルワールドデータの最新の研究動向などの基本的な調査は、先行のAMED事業(医療技術実用化総合促進事業)にて実施されているものの、本研究においては世界規模のRWD活用を進めているOHDSI関連のプロジェクトを対象として、各活動の情報収集やOHDSI 関連プロジェクトの調査を行い更にその先の実地調査を行う。特にOHDSI関連の各国のプロジェクトや体制、その中で用いている共通データモデル、共通データベース、バリデーション手法、ビッグデータ解析を通した医療知識の創出の取り組み内容を把握する。OHDSIで用いている標準データモデル(OMOP-CDM)は、将来的な国際調和の観点で広く用いられることが想定されるため、重点的な調査を行う。実際にOHDIS関連のシンポジウムに参加し、有識者との意見交換を行い、具体的な内容を調査する。
結果と考察
OHDSIについて、欧米とアジア諸国がOMOP-CDMを基盤としたRWDの利活用が進んでおり、多施設連携、国間連携の取組み事例があり論文も増加傾向である。特にOHDSI APAC(アジア)については、韓国が突出しており、既に60施設以上のOHDSIネットワークを構築しており、各国との共同研究も積極的に実施している。台湾は、台北医科大学グループ病院の3〜4施設がOMOP-CDMを導入している。シンガポールは、シンガポール大学とそのNUH病院が中心となって進めているが、政府が各病院に対してOMOP CDMの導入を決定し、診療データだけではなくゲノム情報も収集する方針のようである。他にも中国、香港は既に構築できており、最近ではフィリピンやインドも参画することとなった。日本はまだ国内の普及は進んでおらずOMOP-CDMを保持する施設がほとんど無い。日本から距離の近い韓国・台湾の指導を受けながら連携しつつ、まずはアジア諸国とのOMOP-CDMコラボを見据えた実証としての国際共同研究を実施し、欧米へ展開することが現実的であると考える。OMOP-CDMの導入が遅れると国際的な共同観察研究に遅れるだけではなく、データ(OMOP-CDM)がないと共同研究提案もできない状況である。
結論
海外RWD利活用の事例と基盤構築に向けた行政的な支援や事業の収益体制、関連規制等についてヒヤリング等を含めて、OHDSI関連における各国調査を行った。OHDSIで進めるOMOP-CDMの構築には苦労があるものの各国の努力により普及し、その成果が顕著に現れている。海外との国際共同観察研究やグローバル展開を視野にすると日本国内でのOMOP-CDMの基盤構築が急務であると考える。
本事業を経て特に韓国、台湾、ドイツなどのメンバーと友好関係が築けた。一方で数年内に国内において基盤を構築し、OHDSIに参画しないと、観察研究の領域においてJapan Passingに陥ることを危惧する。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202306005C

収支報告書

文献番号
202306005Z