インフルエンザ(H5N1)の死因となる劇症型ARDSの病態解析と治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200931005A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ(H5N1)の死因となる劇症型ARDSの病態解析と治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
河内 正治(国立国際医療センター 手術部)
研究分担者(所属機関)
  • 布井 博幸(宮崎大学 医学部)
  • 本間 栄(東邦大学 医学部)
  • 前原 康宏(国立国際医療センター 麻酔科)
  • 鈴木 和男(千葉大学大学院)
  • 中山 俊憲(千葉大学大学院)
  • 山本 健二(国立国際医療センター研究所)
  • 大島 正道(国立感染症研究所 免疫部)
  • 川上 和義(東北大学大学院)
  • 赤池 孝章(熊本大学大学院)
  • 永田 典代(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 中島 典子(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 荒谷 康昭(横浜市立大学大学院)
  • 熊坂 利夫(日本赤十字社医療センター)
  • 岡本 竜哉(熊本大学大学院)
  • 志賀 由佳(国立国際医療センター 麻酔科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
39,793,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本国内研究機関とベトナム国立病院が連携し、インフルエンザ(H5N1)を含む劇症型ARDSの病態を臨床・基礎医学両面から解析、将来の治療薬開発研究につなげる。
研究方法
臨床班:ベトナム関係医療機関(国立小児病院 NHP-Hanoi)と共同で、H5N1感染症例を含む劇症型ARDS(肺内原因)について、PICUに入室した全症例を抽出しBALF/血清採取/biopsy(or autopsy)を行い(prospective study)、検体中マーカを現地で測定し、病理学的検討。2.国内ARDS症例について、超急性期BALF/血清中の特定マーカとなる因子を解析。AH1-pdmパンデミックインフルエンザ重症例の病院解析(病理;21年度追加)。基礎班:劇症型ARDS動物モデルを作成。モデル動物およびH5N1感染症例を含む劇症型ARDS患者のBALF/血液におけるサイトカイン等測定、特定マーカ因子抽出。
結果と考察
臨床班:ベトナム関係医療機関(国立小児病院 NHP-Hanoi)とH5N1を含む劇症型ARDS症例の研究活動(prospective study)続行、同じく終了(retrospective study)し、成果公表(JID 2009; 200: 510-515)。国内ARDS症例対象研究終了し公表(JJSICM 17: 179-184, 2010)小児インフルエンザ(H5N1)症例に対し、抗炎症療法である大量ガンマグロブリン療法を施行。症例数が少なく(2/3例生存)有意な治療効果は得られなかった。AH1-pdm重症死亡例の病理所見について発表(JJID 2010; 63: 67-71)。基礎班:劇症型ARDS動物モデルのうち、機械的損傷モデル(VILIモデルマウス)/化学的損傷モデル(LPSモデルマウス)において、病理所見上硝子膜が存在するDADを確認、ARDSモデルとして完成。モデル動物及びARDS患者のBALF/血液におけるサイトカイン等特定マーカ因子測定。
結論
インフルエンザ(H5N1)感染による劇症型ARDS患者の病態解析/原因究明は将来のパンデミック対策として重要であり、臨床・基礎医学両面からの緊密な提携をもった研究が不可欠である。本研究で、ベトナムにおけるヒトH5N1症例と劇症型ARDS病態のモデル動物を使用してサイトカインストームと産生細胞の機能調節分子を明らかすることで、インフルエンザ(H5N1)型ARDSの迅速特異診断および治療法を提案する。今後、治療法の確立のためにさらなる症例の集積が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-08-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200931005B
報告書区分
総合
研究課題名
インフルエンザ(H5N1)の死因となる劇症型ARDSの病態解析と治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
河内 正治(国立国際医療センター 手術部)
研究分担者(所属機関)
  • 布井 博幸(宮崎大学 医学部)
  • 本間 栄(東邦大学 医学部)
  • 前原 康宏(国立国際医療センター 麻酔科)
  • 熊坂 利夫(日本赤十字社医療センター)
  • 岡本 竜哉(熊本大学大学院)
  • 志賀 由佳(国立国際医療センター 麻酔科)
  • 鈴木 和男(千葉大学大学院)
  • 中山 俊憲(千葉大学大学院)
  • 山本 健二(国立国際医療センター研究所)
  • 大島 正道(国立感染症研究所 免疫部)
  • 川上 和義(東北大学大学院)
  • 赤池 孝章(熊本大学大学院)
  • 永田 典代(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 中島 典子(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 荒谷 康昭(横浜市立大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本国内研究機関とベトナム国立病院が連携して、インフルエンザ(H5N1)を含む劇症型ARDSの病態を臨床・基礎医学両面から解析、臨床病態の解明、将来の治療薬開発研究を目的とする。
研究方法
臨床班:ベトナム関係医療機関(国立小児病院 NHP-Hanoi)と連携、H5N1感染過去症例を洗い出し(retrospective study)、発症した劇症型ARDSにBALF/血清採取/biopsy(or autopsy)を行い(prospective study)、検体中マーカを現地で測定可能にし病理学的検討を行う。国内ARDS症例超急性期にBALを行い、BALF/血清中の複数サイトカインを測定し解析。3.AH1-pdmパンデミックインフルエンザ重症例の病因解析(病理;21年度追加)。基礎班:1.劇症型ARDS動物モデル(3タイプ:感染、器械的損傷、化学的損傷モデル)を作成。モデル動物とARDS患者のBALF/血液におけるサイトカイン等測定、特定マーカ因子を抽出。
結果と考察
臨床班:ベトナム関係医療機関との、H5N1を含む劇症型ARDS症例についての研究活動prospective study、retrospective studyともに開始-終了、H5N1-劇症型ARDSと他のARDSとの臨床的差異を発見し成果を公表(JID 2009)。国内ARDS症例対象研究活動開始-終了し公表(JJSICM 2010)、小児インフルエンザ(H5N1)に対し、大量ガンマグロブリン療法を行なったが、症例数が少なく(2/3例生存)有意な治療効果は得られなかった。AH1-pdm重症死亡例の病理所見について、H5N1-ARDSとの類似性を指摘し発表(JJID 2010)。基礎班:劇症型ARDS動物モデルのうち、機械的損傷モデル(VILIモデルマウス)、化学的損傷モデル(LPSモデルマウス)において、硝子膜が存在するDADを確認、ARDSモデルとして完成。モデル動物及びARDS患者のBALF/血液におけるサイトカイン等特定マーカ因子測定。
結論
インフルエンザ(H5N1)感染による劇症型ARDS患者の病態解析/原因究明は、今回のAH1-pdmの流行で示されたように、将来のパンデミック対策として重要であり、臨床・基礎医学両面からの研究が不可欠である。今後、ベトナムにおけるヒトH5N1症例と劇症型ARDS病態のモデル動物を使用してサイトカインと産生細胞の機能調節分子を明らかにし、インフルエンザ(H5N1)の迅速特異診断および治療法を提案する必要がある。今後の治療法の確立のためにさらなる症例の集積が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200931005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
H5N1-ARDS 死亡例にて、肺胞上皮細胞内A型インフルエンザウイルス感染例を報告(世界2例目の証明)。H5N1-ARDSは他の肺内要因の重症ARDSと異なる臨床経過を示し、高い死亡率を示す事を証明(死亡率80%)。ARDS急性期に、細胞活性化因子であるケモカインが上昇。AH1-pdm重症死亡例の病理所見で、H5N1-ARDSとの類似性を指摘。機械的損傷モデル(VILIモデルマウス)及び化学的損傷モデル(LPSモデルマウス)にて病理所見上硝子膜が存在するDADを確認、ARDSモデルとして完成.
臨床的観点からの成果
病院受診時にはH5N1-ARDSが他の肺内要因ARDSより呼吸不全の程度が軽い事を証明。H5N1-ARDSでは血中白血球数及び血小板数の有意な減少、血清トランスアミナーゼ値(AST, ALT)の非特異的上昇も認めた。ベトナムにおける小児鳥インフルエンザA(H5N1)患者に対し、安全でベトナム国で投与可能な抗炎症療法である大量ガンマグロブリン療法(total 2g/kg)を行なった。効果については2例中3例生存と良好な感触であったが、症例数が少なく有意な治療効果は得られなかった。
ガイドライン等の開発
特になし.
その他行政的観点からの成果
インフルエンザAH1-pdmの迅速診断キットの臨床治験において臨床データを供出、市販化承認申請中。日本からAH1-pdmウイルス血症の危険性指摘あり(EID 2010; 16: 722-3)、社会不安軽減のため、重症例のAHI-pdm感染で、血液中にウイルスが存在しない事を本省に報告。AHI-pdm感染例の重症死亡例にて、肺組織の病理所見が高病原性トリインフルエンザとよく似たARDSである事を、早期から本省に提言。また医師、一般市民等への講演活動(葉山市 、東京都、他)。
その他のインパクト
2008年12月27日-2009年1月3日「新型インフルエンザの対策は?」週間東洋経済p115・ 2008年12月18日読売新聞「備える:新型インフルエンザ=家庭で子供に事前教育」・2008年10月28日朝日新聞「新型インフルに備える」・2008年7月4日日本経済新聞、読売新聞、毎日新聞、2008年7月3日NHK-TV「夜7時のニュース」:新型インフルエンザ対策のシミュレーション・2009年10月20日朝7:00-7:30「カラダのキモチ『ウイルス』」TBS系

発表件数

原著論文(和文)
86件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
40件
学会発表(国内学会)
109件
学会発表(国際学会等)
29件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
12件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yuka Osaki, Yasuhiro Maehara, Atsuko Matsya etal
Analysis of cytokine/chemokine levels in bronchoalveolar lavage fluids from patients with acute respiratory distress syndrome.
J Jpn Soc Intensive Care Med , 17 , 179-184  (2010)
原著論文2
Tatsya Okamoto, Shahzade Khan, Kohta Oyama, etal
A new paradigm for antimicrobial host defense mediated by a nitrated cyclic nucleotide.
J Clin Biochem Nutr , 46 , 14-19  (2010)
原著論文3
Khandaker A. Ahmed, Tomohiro Sawa, Takaaki Akaike.
Protein cysteine S-guanylation and electrophilic signal transduction by endogenous nitro-nucleotides.
Amino Acids  (2010)
原著論文4
Takeshi Marumo, Keiichi Hishikawa, Masahiro Yoshikawa, etal
Histone deacetylase modulates the     proinflammatory and –fibrotic changes in tubulointerstitial injury.
Am J Physiol Renal Physiol , 298 , 133-141  (2010)
原著論文5
Noriko Nakajima, Satoru Hata, Yuko Sato, et al
The first autopsy case of pandemic influenza (A/H1N1pdm) virus infection in Japan: Detection of a high copy number of the virus in type II alveolar epithelial cells by pathological and virological examination.
Jpn J Infect Dis , 63 , 67-71  (2010)
原著論文6
Akihiro Takiyama, Lei Wang, Mishie Tanino,etal
Sudden death of a patient with pandemic influenza(A/H1N1pdm) virus infection by acute respiratory distress syndrome
Jpn J Infect Dis , 63 , 72-74  (2010)
原著論文7
Kawachi S, Luong ST, Shigematsu M,etal
Risk parameters of fulminant acute respiratory distress syndromeand avian influenza (H5N1) infection in Vietnamese children.
J Infect Dis. , 200 , 510-515  (2009)
原著論文8
Mohammad Hasan Zaki, Shigemoto Fujii,etal
Cytoprotective function of heme oxygenase-1 induced by a nitrated cyclic nucleotide formed during murine salmonellosis.
J Immnol , 182 , 3746-3756  (2009)
原著論文9
Nakayama, T., and Yamashita, M.
Critical role of the Polycomb and Trithorax complexes in the maintenance of CD4 T cell memory
Semin. Immunol. , 21 (2) , 78-83  (2009)
原著論文10
Kazuyoshi Kaneko, Teruo Akuta, Tomohiro Sawa,etal
Mutagenicity of 8-nitroguanosine, a product of nitrative nucleoside modification by reactive nitrogen oxides, in mammalian cells.
Cancer Lett , 262 , 239-247  (2008)
原著論文11
Nguyen Thanh Liem, Noriko Nakajima, Le Phuc Phat, etal
H5N1-infected cells in lung with diffuse alveolar damage in exudative phase from a fatal case in Vietnam.
Jpn J Infect Dis , 61 (2) , 157-160  (2008)
原著論文12
Nakayama, T., and Yamashita, M
Initiation and maintenance of Th2 cell identity. Truncated title: Regulation of Th2 responses.
Curr. Opin. Immunol , 20 , 265-271  (2008)
原著論文13
Hidenori Yasuda, Nobuaki Yoshizawa, Mikio Kimura, etal
Preparedness for the Spread of Influenza: Prohibition of Traffic, School Closure, and Vaccination of Children in the Commuter Towns of Tokyo
J Urban Health , 85 , 619-635  (2008)
原著論文14
Tomokazu Nagao, Mimiko Matsumura, Ayako Mabuchi,etal
Up-regulation of adhesion molecule expression in glomerular endothelial cells by anti-myeloperoxidase antibody.
Neprol. Dialysis Transplant , 22 , 77-87  (2007)
原著論文15
Kaneko T, Hosokawa H, Yamashita M,etal
Chromatin remodeling at the Th2 cytokine gene loci in human type 2 helper T cells.
Mol. Immunol. , 44 (9) , 2249-2256  (2007)
原著論文16
Iwamura, C., Kimura, Y. M., Shinoda, K.etal
Schnurri-2 regulates Th2-dependent airway inflammation and airway hyperresponsiveness.
Int. Immunol. , 19 (9) , 755-762  (2007)
原著論文17
Yamashita, M., Onodera, A., and Nakayama, T.:
Immune mechanisms of allergic airway diseases: Regulation by transcription factors.
Crit. Rev. Immunol , 27 (6) , 539-546  (2007)
原著論文18
Tomohiro Sawa, Mohammad Hasan Zaki, Tatsuya Okamoto,etal
Protein S-guanylation by the biological signal 8-nitroguanosine 3',5'-cyclic monophosphate
Nature Chem Biol , 3 , 727-735  (2007)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-