防疫上緊急を要するウイルス性出血熱等に対する病原体診断法の確立及び予防・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200931003A
報告書区分
総括
研究課題名
防疫上緊急を要するウイルス性出血熱等に対する病原体診断法の確立及び予防・治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 甲斐 知惠子(東京大学医科学研究所実験動物研究施設)
  • 高田 礼人(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 安田 二朗(科学警察研究所法科学第一部)
  • 有川 二郎(北海道大学大学院医学研究科病原微生物学)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 水谷 哲也(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 田口 文広(国立感染症研究所ウイルス第三部)
  • 遠藤大二(酪農学園大学獣医放射線学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
69,825,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス性出血熱等の診断法の改良・充実及び新感染症発生時や新種ウイルス出現時の迅速なウイルス同定と診断法を確立するために以下の項目を目的とする。(1)BSL4のウイルスが日本では扱えないため代替え法で診断・治療法・予防法の開発 (2)南米出血熱・ニパウイルス脳炎・ハンタウイルス肺症候群・リフトバレー熱等の診断法の整備 (3)エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱等の診断系の改良と充実 (4)新興ウイルス感染症発生時や新種エボラウイルス出現時等に対応可能な遺伝子検出同定法の開発 (5)予防・治療に繋がる基礎的研究の充実
研究方法
本研究では、以下の項目に関して研究を行った。(1)診断体制未整備の対象ウイルス感染症の診断法の確立(2)エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱等の診断系の改良・充実(3)新興感染症発生時や新種ウイルス出現時のウイルス検出・同定法の開発(4)上記の成果に基づく疑い患者の迅速・正確な診断が期待される(5)予防・治療法の開発に繋がる基礎的知見の取得
結果と考察
エボラ出血熱、マールブルグ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、リフトバレー熱、南米出血熱、ニパウイルス脳炎、ハンタウイルス感染症、サル痘、重症急性呼吸器症候群、チクングニア熱等は、近年大流行の頻発や感染地域の拡大・新型ウイルスの新興等が見られ、我国への侵入が危惧される。チクングニア熱等では実験室診断により輸入症例患者の診断を実施した。これらの多くは、BSL4病原体で日本ではウイルスを取り扱えないため、組換えウイルス蛋白等を用いた診断法を複数整備・改良し、対象感染症の診断法を整備した。新型ウイルスに対応可能なプライマー作製支援ソフトが開発された。また、発症モデル系による発症メカニズムの解明やウイルス増殖機構と宿主因子の解明等も一部の対象感染症で明らかになった。これらの研究成果は、対象感染症疑い患者等の発生時の実験室診断に有用であり、厚生労働行政に貢献すると考えられる。
結論
防疫上緊急を要するウイルス性出血熱等に対する病原体診断法の確立のため、対象ウイルスの遺伝子検出法、抗原検出法、抗体検出法の整備を進め、これまで未整備の診断法を整備した。新型ウイルスや新興ウイルスに対応可能な遺伝子検出法でも著しい進展が見られた。また、いくつかのウイルスで予防法・治療法につながる成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2010-07-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200931003B
報告書区分
総合
研究課題名
防疫上緊急を要するウイルス性出血熱等に対する病原体診断法の確立及び予防・治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 甲斐 知惠子(東京大学医科学研究所実験動物研究施設)
  • 高田 礼人(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 安田 二朗(科学警察研究所法科学第一部)
  • 有川 二郎(北海道大学大学院医学研究科病原微生物学)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 水谷 哲也(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 田口 文広(国立感染症研究所ウイルス第三部)
  • 遠藤大二(酪農学園大学獣医放射線学教室)
  • 福士 秀悦(国立感染症研究所ウイルス第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス性出血熱等の診断法の改良・充実及び新感染症発生時や新種ウイルス出現時の迅速なウイルス同定と診断法を確立するために以下の項目を目的として研究した。(1)日本では扱えないBSL4のウイルスでは代替え法で診断・治療法・予防法の開発 (2)南米出血熱・ニパウイルス脳炎・ハンタウイルス肺症候群・リフトバレー熱等の診断法の整備 (3)エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱等の診断系の改良と充実 (4)新興ウイルス感染症発生時や新種エボラウイルス出現時等に対応可能な遺伝子検出同定法の開発 (5)予防・治療に繋がる基礎的研究の充実
研究方法
本研究では、以下の項目に関して研究を行った。(1)診断体制未整備の対象ウイルス感染症の診断法の確立 (2)エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱等の診断系の改良・充実(3)新興感染症発生時や新種ウイルス出現時のウイルス検出・同定法の開発 (4)上記の成果に基づく疑い患者の迅速・正確な診断の確立 (5)予防・治療法の開発に繋がる基礎的知見の取得
結果と考察
エボラ出血熱、マールブルグ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、リフトバレー熱、南米出血熱、ニパウイルス脳炎、ハンタウイルス感染症、サル痘、重症急性呼吸器症候群、チクングニア熱等は、近年大流行の頻発や感染地域の拡大・新型ウイルスの新興等が見られ、我国への侵入が危惧される。これらの多くは、BSL4病原体で日本ではウイルスを取り扱えないため、組換えウイルス蛋白等を用いた診断法を複数整備・改良し、実験室診断法が整備された。新型ウイルスに対応可能なプライマー作製支援ソフトが開発され、新興再興感染症の病原体遺伝子決定法を改善した。モデル動物系による発症メカニズムの解明やウイルス増殖機構と宿主因子の解明等も一部の対象感染症で明らかになった。これらの研究成果は、対象感染症疑い患者等の発生時や新興感染症発生時の実験室診断に有用で、厚生労働行政に貢献すると考えられる。
結論
防疫上緊急を要するウイルス性出血熱等に対する病原体診断法の確立のため、対象ウイルスの遺伝子検出法、抗原検出法、抗体検出法がほぼ整備された。新型ウイルスや新興ウイルスに対応可能な遺伝子検出法にも著しい進展が見ら、対象とする多くの出血熱ウイルス等で予防法・治療法につながる基礎的な成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2010-07-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200931003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
防疫上緊急を要するウイルス性出血熱等に対する病原体診断法の確立のため、対象ウイルスの遺伝子検出法、抗原検出法、抗体検出法がかなり整備された。新型ウイルスや新興ウイルスに対応可能な遺伝子検出法にも著しい進展が見られた。また、対象とする多くの出血熱ウイルス等で予防法・治療法につながる基礎的な成果が得られた。
臨床的観点からの成果
防疫上緊急を要するウイルス性出血熱等は、その多くが1類感染症などに指定されているが、BSL4実験室が稼働していない日本では病原体を使用した実験室診断が実施できない。本研究により、ウイルス培養を用いない実験室診断が可能となり、疑い患者発生時の診断が可能となった。チクングニア熱患者15症例の実験室診断を行った。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等は特に開発されていない。
その他行政的観点からの成果
ウイルス性出血熱の病原遺伝子診断法は、GHSAGのワークショップ(カナダ)でのEQAで評価された。チクングニア熱の診断法はEUの輸入ウイルス感染症診断ネットワークでのEQAで評価された。これらにより実験室診断法の有用性が確認された。チクングニア熱疑い患者の実験室診断により、日本での輸入症例15例が診断された。
その他のインパクト
南米出血熱の診断法の開発に関して、日経新聞(朝刊)平成22年3月22日に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
71件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
58件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Saijo M, Fukushi S, Morikawa S, et al
Development of recombinant nucleoprotein-based diagnostic systems for Lassa fever
Clin Vaccine Immunol , 14 (9) , 1182-1189  (2007)
原著論文2
Mizutani T, Endoh D, Morikawa S, et al
Rapid genome sequencing of RNA viruses
Emerg Infect Dis. , 13 (2) , 322-324  (2007)
原著論文3
Fukushi S, Mizutani T, Morikawa S, et al
Amino acid substitutions in the s2 region enhance severe acute respiratory syndrome coronavirus infectivity in rat angiotensin-converting enzyme 2-expressing cells
J Virol , 81 (19) , 10831-10834  (2007)
原著論文4
Maeda K, Endoh D, Mizutani T, et al
Isolation of novel adenovirus from fruit bat
Emerg Infect Dis. , 14 (2) , 347-349  (2008)
原著論文5
Matsuyama S, and Taguchi F.
Two step comformational changes mediated by receptor binding and proteolysis of a coronavirus envelope glycoprotein
J Virol , 83 , 11133-11141  (2009)
原著論文6
Aoyama, I, Takasaki, T, Lim, CK, et al
A Case of Chikungunya Fever Imported from India to Japan, Follow-Up of Specific IgM and IgG Antibodies over a 6-Month Period
Jpn. J. Infect. Dis. , 63 (1) , 65-66  (2010)
原著論文7
Lim, CK, Kurane, I, Takasaki, T, et al
Chikungunya virus isolated from a returnee to Japan from Sri Lanka: Isolation of two sub-strains with different characteristics
Am. J. Trop. Med. Hyg , 81 (5) , 865-868  (2010)
原著論文8
Urata, S., and Yasuda, J
Regulation of Marburg virus budding by Nedd4.1; a different WW domain of Nedd4.1 is critical for the binding to Marburg and Ebola virus VP40.
J Gen Virol , 91 , 228-234  (2010)
原著論文9
Ure AE, Morikawa S, Romanowski V, et al
Argentine hemorrhagic fever diagnostic test based on recombinant Junín virus N protein.
J Med Virol , 80 (12) , 2127-2133  (2008)
原著論文10
Saijo M, Fukushi S, Morikawa S, et al
Virulence and pathophysiology of the Congo Basin and West African strains of monkeypox virus in non-human primates.
J Gen Virol , 90 (9) , 2266-2271  (2009)
原著論文11
Nakauchi M, Fukushi S, Morikawa S, et al
Characterization of monoclonal antibodies to Junin virus nucleocapsid protein and application to the diagnosis of hemorrhagic fever caused by South American arenaviruses
Clin Vaccine Immunol , 16 (8) , 1132-1138  (2009)
原著論文12
Sakuma T, Noda T, Yasuda J, et al
Inhibition of Lassa and Marburg virus production by Tetherin
J Virol , 83 , 2382-2385  (2009)
原著論文13
Sakuma T, Sakurai A, and Yasuda J
Dimerization of tetherin is not essential for its antiviral activity against Lassa and Marburg viruses
PLoS One , 4 , 6934-6934  (2009)
原著論文14
Takada A, Ebihara H, Jones S, et al
Protective efficacy of neutralizing antibodies against Ebola virus infection
Vaccine , 25 , 993-999  (2007)
原著論文15
Yoneda M, Fujita K, Kai C, et al
Reverse genetics of Nipah virus to probe viral pathogenicity
Methods Mol Biol. , 515 , 329-337  (2009)
原著論文16
Watanabe R, Morikawa S, Taguchi F, et al
Entry from cell surface of SARS coronavirus with cleaved S protein as revealed by pseudotype virus bearing cleaved S protein
J Virol , 82 , 11985-11991  (2008)
原著論文17
Nagata N, Fukushi S, Saijo M, Taguchi F, et al
Mouse-passaged severe acute respiratory syndrome-associated coronavirus leads to lethal pulmonary edema and diffuse alveolar damage in adult but not young mice
American J. Pathol , 172 , 1625-1637  (2008)
原著論文18
Ami Y, Fukushi S, Taguchi F, et al
Co-infection of respiratory bacterium with SARS coronavirus induces an exacerbated pneumonia in mice
Microbiol. Immunol , 52 , 118-127  (2008)
原著論文19
Saijo M, Fukushi S, Morikawa S, et al
Diagnosis and assessment of monkeypox virus (MPXV) infection by quantitative PCR assay: differentiation of Congo Basin and West African MPXV strains
Jpn. J. Infect. Dis , 61 , 140-142  (2008)
原著論文20
Nakamura I, Takashima I, Arikawa J. et al
Development of a serotyping ELISA system for Thailand virus infection
Arch Virol , 153 , 1537-1542  (2008)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-