文献情報
文献番号
202306001A
報告書区分
総括
研究課題名
生活保護利用者における多剤処方の実態把握と効果的な対応策立案に向けた研究~被保護者健康管理支援事業の先進事例の効果評価~
研究課題名(英字)
-
課題番号
23CA2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
西岡 大輔(大阪医科薬科大学 医学研究支援センター医療統計室)
研究分担者(所属機関)
- 近藤 尚己(京都大学 大学院医学研究科 社会疫学分野)
- 上野 恵子(京都大学大学院 医学研究科 社会疫学分野)
- 木野 志保(東京医科歯科大学 健康推進歯学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、先進的に健康管理支援等に取り組んできた中核市Aのデータを活用し、多剤投薬等と関連する被保護者の属性情報や地域環境指標を明らかにする。また、健康管理支援の効果を量的に評価するだけでなく、ケース記録分析やケースワーカー及び保健師へのインタビュー調査を踏まえて質的な検討を重ねる。さらに既存の研究論文をレビューする。これらを踏まえ、多剤投薬への支援策立案および医療扶助の効果的かつ公正な利用の推進に向けた健康管理支援事業の方策立案に資する基礎資料を得ることを目的とした。
研究方法
<量的研究>
中核市A生活保護の基本台帳および医療扶助レセプトや介護扶助レセプトなどのデータを用い、2022年4月から2023年3月までの1年間に、同効の内服薬を90日以上継続的に処方された18歳以上の成人6,487人を分析対象者とした。
<質的研究>
中核市Aの医療扶助レセプトデータならびにケース記録をもとに分析した。
<事業実施の検討に資する先行研究・先進事例の評価>
先行研究を検索、抽出し、スコーピングレビューを行った。
中核市A生活保護の基本台帳および医療扶助レセプトや介護扶助レセプトなどのデータを用い、2022年4月から2023年3月までの1年間に、同効の内服薬を90日以上継続的に処方された18歳以上の成人6,487人を分析対象者とした。
<質的研究>
中核市Aの医療扶助レセプトデータならびにケース記録をもとに分析した。
<事業実施の検討に資する先行研究・先進事例の評価>
先行研究を検索、抽出し、スコーピングレビューを行った。
結果と考察
<量的研究>被保護者において、約7割の定期受診者が多剤投薬(6剤以上)に、約3割が過度の多剤投薬(10剤以上)に該当していたこと、また50-60歳にそのピークが存在していることがわかった。さらに、不就労、障害ありといった要因が、過度な多剤投薬が増える傾向と関連していること、受診医療機関数が増えるほど多剤投薬が発生しやすい(たとえば、5医療機関以上で過度な多剤投薬が発生しやすい)こと、市民参加が豊かな地域に住んでいる被保護者では、過度な多剤投薬が少ないことが明らかになった。
<質的研究>
被保護者の多剤投薬者は、①既往歴が多い、②精神疾患や整形外科疾患が多い、③独居者が多い、④複雑な生活背景をもつ者がいることが質的に示された。被保護者への多剤投薬指導のみで多剤投薬の改善(deprescribing)は難しいと考えられ、その背景要因へのアプローチが重要であると考えられた。将来的には、多剤投薬の状態にある被保護者(だけではなく他の被保険者でも同様だが)の情報が医療機関や調剤薬局で共有され、医師が処方の際に多剤投薬歴や薬物相互作用の通知が出される仕組みなどが有効かもしれない。このような形式を通じて、自立支援医療により投薬を受けている被保護者の、医療扶助レセプトデータだけでは把握できない課題にも着手できる可能性がある。今回の研究では多剤投薬に着目したが、多剤投薬の問題の背景には重複処方の課題が大きいことも示された。
業実施の検討に資する先行研究・先進事例の評価
<先行研究・事例の評価>
スコーピングレビューにより、被保護者では感染症、慢性疾患(糖尿病/糖尿病合併症/心臓病)の有病率が高く、手術による健康上の有害転帰の発生率が高いことが観察された。また、喫煙、頻繁な受診、入院、ポリファーマシー、ワクチン接種の少なさ、必要な医療を求める行動を控えるなど、好ましくない健康行動も被保護者に多くみられたが、へき地度が高い地域では、生活保護制度が反対に健康に保護的に働きうる実態も示唆された。被保護者の中には、好ましくない健康状態や健康行動に関連するいくつかの特徴があった。たとえば、独居や不就労といった要因が、被保護者の糖尿病罹患に関連している可能性が高く、頻回受診等の課題のある受診行動も多かった。
1自治体の事例では、被保護者の健診受診率向上を目的とした架電による健診受診勧奨は十分な効果が得られにく位ことがわかった。「50代」「就労なし」「過去の健診未受診」「定期受診医療機関なし」などの属性を持つ被保護者にターゲットを絞り、確実に架電できる方法で、年度末など期限が近い時期に実施することが効果的な可能性があった。
<質的研究>
被保護者の多剤投薬者は、①既往歴が多い、②精神疾患や整形外科疾患が多い、③独居者が多い、④複雑な生活背景をもつ者がいることが質的に示された。被保護者への多剤投薬指導のみで多剤投薬の改善(deprescribing)は難しいと考えられ、その背景要因へのアプローチが重要であると考えられた。将来的には、多剤投薬の状態にある被保護者(だけではなく他の被保険者でも同様だが)の情報が医療機関や調剤薬局で共有され、医師が処方の際に多剤投薬歴や薬物相互作用の通知が出される仕組みなどが有効かもしれない。このような形式を通じて、自立支援医療により投薬を受けている被保護者の、医療扶助レセプトデータだけでは把握できない課題にも着手できる可能性がある。今回の研究では多剤投薬に着目したが、多剤投薬の問題の背景には重複処方の課題が大きいことも示された。
業実施の検討に資する先行研究・先進事例の評価
<先行研究・事例の評価>
スコーピングレビューにより、被保護者では感染症、慢性疾患(糖尿病/糖尿病合併症/心臓病)の有病率が高く、手術による健康上の有害転帰の発生率が高いことが観察された。また、喫煙、頻繁な受診、入院、ポリファーマシー、ワクチン接種の少なさ、必要な医療を求める行動を控えるなど、好ましくない健康行動も被保護者に多くみられたが、へき地度が高い地域では、生活保護制度が反対に健康に保護的に働きうる実態も示唆された。被保護者の中には、好ましくない健康状態や健康行動に関連するいくつかの特徴があった。たとえば、独居や不就労といった要因が、被保護者の糖尿病罹患に関連している可能性が高く、頻回受診等の課題のある受診行動も多かった。
1自治体の事例では、被保護者の健診受診率向上を目的とした架電による健診受診勧奨は十分な効果が得られにく位ことがわかった。「50代」「就労なし」「過去の健診未受診」「定期受診医療機関なし」などの属性を持つ被保護者にターゲットを絞り、確実に架電できる方法で、年度末など期限が近い時期に実施することが効果的な可能性があった。
結論
被保護者の多剤投薬には、本人のみの要因だけでなく、受診医療機関や地域環境の要因が大きいことが明らかになった。多剤投薬は処方医療機関および調剤薬局によるチェック機能が働けばそのリスクを十分に抑えられるため、個人に対する指導だけでなく、地区医師会や地区薬剤師会の協力を得ながら活動することが求められる。また、社会環境の整備が多剤投薬にも効果的である可能性があり、他部署他制度との有機的な連携、重層的な取り組みが重要である。
被保護者の健康状態は一般集団と比較して好ましくない傾向があるが、健康管理支援事業によりその差が縮小するのかに関する将来的な評価が重要である。被保護者集団の中にも、健康に不利なリスクが不均一に存在していること、被保護者全体に健診受診勧奨等を実施する普遍的な取り組みでは効果が乏しいことから、リスクが集積しやすい被保護者への選択的な健康支援方策を立案するためのさらなる社会生活状況のデータ収集および研究が重要である。
被保護者の健康状態は一般集団と比較して好ましくない傾向があるが、健康管理支援事業によりその差が縮小するのかに関する将来的な評価が重要である。被保護者集団の中にも、健康に不利なリスクが不均一に存在していること、被保護者全体に健診受診勧奨等を実施する普遍的な取り組みでは効果が乏しいことから、リスクが集積しやすい被保護者への選択的な健康支援方策を立案するためのさらなる社会生活状況のデータ収集および研究が重要である。
公開日・更新日
公開日
2026-10-27
更新日
-