医療機関における感染症伝播に関する研究

文献情報

文献番号
200931001A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における感染症伝播に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
切替 照雄(国立国際医療センター 研究所 感染症制御研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 はる(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 中村 浩幸(国立成育医療センター 研究所)
  • 大久保 憲(東京医療保健大学 医療情報学科)
  • 河野 文夫(国立病院機構 熊本医療センター)
  • 西岡 みどり(国立看護大学校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,758,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
院内感染を極力防止することは、患者・国民に安全な医療を提供することであり、医療経済的にも医療費の削減に繋がる経済効果もある。本研究の目的は、医療現場で実施可能な院内感染防止のためには、どのような対策が必要であるのかを明らかにすることである。
研究方法
様々な医療機関の規模や種類の研究協力施設の感染制御チーム(ICT)の協力を得て、医療機関の規模や種類に応じた院内感染発症のハイリスク部署、医療行為などを同定するとともに、消毒・滅菌ガイドライン、クロストリディウム・ディフィシル施設内感染、行動分析、中小施設向けサーベイランス手順、分子疫学調査を実施した。
結果と考察
以下の項目の研究結果を得た。
新型インフルエンザ流行期の医療現場の対応に関する緊急検討し、医療現場に必要な情報は何かを厚生労働省インフルエンザ対策本部にいち早く医療現場の情報を報告した。 
様々な規模の医療機関による研究グループを組織し、感染対策手順例を収集した。これは出版するとともにホームページで公開する。
消毒・滅菌ガイドラインを改訂した。注射薬の衛生管理、環境消毒に対する考え方、病院給食における消毒、ランドリーでの消毒、消化器内視鏡消毒法などの項目を追加した。多剤耐性緑膿菌(MDRP)、手術に関連したクロイツフェルト・ヤコブ病プリオン、新型インフルエンザウイルスなどの微生物に関する内容を見直した。国内製造販売承認を取得をした新たな2つの滅菌法(低温ホルムアルデヒドガス滅菌法、過酸化水素蒸気滅菌法)を追加した。
クロストリディウム・ディフィシル施設内感染の分離株の細菌学的特徴の解析及び院内感染防止手順にまとめた。
行動分析によって、手指衛生行動の遵守に影響する要因を解析した。手指衛生行動の定着に向けた動機付けや価値観のサポートと共有化に関する検討を実施した。
6種類の中小施設向けサーベイランス手順書案を作成し、意見収集・改訂後に手順書案を公表した。院内感染起因菌として重要なMRSA及び多剤耐性緑膿菌の多施設での分子疫学解析を実施した。その結果、多剤耐性緑膿菌だけでなく、多剤耐性を獲得する可能性の高い2剤耐性菌についても院内感染対策が必要であることが分かった。

結論
今後、医療現場で実施可能な全職員参加の院内感染対策に必要な手法の開発、地域医療機関の間で情報を共有化できる地域感染症管理ネットワークの構築が必要であることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2010-07-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200931001B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機関における感染症伝播に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
切替 照雄(国立国際医療センター 研究所 感染症制御研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
院内感染を極力防止することは、患者・国民に安全な医療を提供することであり、医療経済的にも医療費の削減に繋がる経済効果もある。本研究の目的は、医療現場で実施可能な院内感染防止のためどのような対策が必要であるのかを明らかにすることである。
研究方法
様々な医療機関の規模や種類の研究協力施設の感染制御チーム(ICT)の協力を得て、医療機関の規模や種類に応じた院内感染発症のハイリスク部署、医療行為などを同定する。とともに、消毒・滅菌ガイドライン、クロストリディウム・ディフィシル施設内感染、行動分析、中小施設向けサーベイランス手順、分子疫学調査を実施した。
結果と考察
以下の項目の研究結果を得た。
新型インフルエンザ流行期の医療現場の対応に関する緊急検討し、医療現場に必要な情報は何かを厚生労働省インフルエンザ対策本部にいち早く医療現場の情報を報告した。 
様々な規模の医療機関による研究グループを組織し、感染対策手順例を収集した。これは出版するとともにホームページで公開する。
アンケート調査では、中規模・小規模病院で、専門の医療従事者がいなくICTを設置していない病院の割合が高かった。
消毒・滅菌ガイドラインを改訂した。注射薬の衛生管理、環境消毒に対する考え方、病院給食における消毒、ランドリーでの消毒、消化器内視鏡消毒法などの項目を追加した。多剤耐性緑膿菌、手術に関連したクロイツフェルト・ヤコブ病プリオン、新型インフルエンザウイルスなどの微生物に関する内容を見直した。国内製造販売承認を取得をした新たな2つの滅菌法(低温ホルムアルデヒドガス滅菌法、過酸化水素蒸気滅菌法)を追加した。
クロストリディウム・ディフィシル施設内感染の分離株の細菌学的特徴の解析及び院内感染防止手順にまとめた。
行動分析によって、手指衛生行動の遵守に影響する要因を解析した。手指衛生行動の定着に向けた動機付けや価値観のサポートと共有化に関する検討を実施した。
6種類の中小施設向けサーベイランス手順書案を作成し、意見収集・改訂後に手順書案を公表した。院内感染起因菌として重要なMRSA及び多剤耐性緑膿菌の多施設での分子疫学解析を実施した。その結果、多剤耐性緑膿菌だけでなく、多剤耐性を獲得する可能性の高い2剤耐性菌についても院内感染対策が必要であることが分かった。

結論
今後、医療現場で実施可能な全職員参加の院内感染対策に必要な手法の開発、地域医療機関の間で情報を共有化できる地域感染症管理ネットワークの構築が必要であることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2010-07-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200931001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小規模の医療施設での組織、人材、滅菌・消毒、サーベイランス等の感染対策の実態が明らかになった。分子疫学調査から、これまで重点的に監視対策を実施してきた多剤耐性緑膿菌に加えて、2剤耐性緑膿菌の監視及び感染防止が必要であることを明らかにした。医療施設における高病原性クロストリジウム・ディフィシルによる症例を日本で初めて同定した。新興感染症に対応した滅菌・消毒法を明らかにした。
臨床的観点からの成果
中小規模の医療施設の現場で実施可能な感染防止手順及びサーベイランス手順をまとめて、その有効性を医療現場で実証した。全国調査から、消毒・滅菌法の実施状況と問題点を明らかにした。新興感染症及び医療機器の洗浄と消毒、新たに国内販売承認を取得した滅菌法(ホルムアルデヒドガス及び過酸化水素)をまとめた。新型インフルエンザ流行初期から、医療現場で実際に必要な情報や対応をインフルエンザ対策本部等に報告した。

ガイドライン等の開発
平成19年4月2日付け厚生労働省医政局指導課事務連絡(高病原性C. difficile 菌による感染について医療施設での取組の徹底)の技術面の支援をした。院内感染対策のための中小規模の医療施設向けのサーベイランス手順書案を厚生労働省医政局指導課事務連絡として、全国に周知する予定。
新しい類型分類に基づき、該当する病原菌による感染制御のために、医療現場では具体的な対応法を徹底するための対応可能な「消毒と滅菌のガイドライン」第3版をまとめた。

その他行政的観点からの成果
新型インフルエンザ対策に関する医療現場での問題点及び改善点を纏めて厚労省に報告した。感染管理活動に関する診療報酬見直しのための資料を作成した。中小病院における院内感染対策活動及び地域支援ネットワークのあり方を提案した。中小病院におけるサーベイランス導入の方法を提示した。将来遭遇する可能性の高い鳥インフルエンザウイルスの消毒、滅菌の分野で貢献できる。

その他のインパクト
第24回日本環境感染学会総会(平成20年)で、中小規模医療施設の院内感染対策に関するシンポジウムを開催した。朝日新聞記事、院内感染どう防ぐ、2008年7月18 日。

発表件数

原著論文(和文)
45件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
院内感染対策事務連絡に関与2件、新型インフルエンザ流行時の医療現場の上級に関するインフルエンザ対策本部への報告1件
その他成果(普及・啓発活動)
20件
医療機関の相談に応じて、分子疫学調査及び病棟ラウンドを実施した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kitao T, Miyoshi-Akiyama T, Kirikae T.
AAC(6’)-Iaf, a novel aminoglycoside 6’-N-acetyltrans- ferase from multidrug- resistant Pseudomonas aeruginosa clinical isolates。
Antimicrob Agents Chemother , 53 , 2327-2334  (2009)
原著論文2
Inomata H , Takei M, Nakamura H.
Epstein-Barr-virus- infected CD15(LewisX)-positive Hodgkin-lymphoma-like B cells in patients with rheumatoid arthritis.
Open Rheumatol , 7 , 41-47  (2009)
原著論文3
Kirikae T, Mizuguchi Y, Arakawa Y.
Investigation of isolation rates of Pseudomonas aeruginosa with and without multidrug resistance in medical facilities and clinical laboratories in Japan.
J Antimicrob Chemother , 61 , 612-615  (2008)
原著論文4
Sekiguchi J, Teruya K, Horii K, et al.
Molecular epidemiology of outbreaks and containment of drug-resistant Pseudomonas aeruginosa in a Tokyo hospital.
J Infect Chemother , 13 , 418-422  (2007)
原著論文5
Sekiguchi J, Morita K, Kitao T, et al.
KHM-1, a novel plasmid- mediated metallo--lactamase from a Citro- bacter freundii clinical isolate.
Antimicrob. Agents Chemother , 52 , 4194-4197  (2008)
原著論文6
Yoshikawa T, Kidouchi K, Kimura S, et al.
Needlestick injuries to the feet of Japanese healthcare workers: a culture-specific exposure risk.
Infect Control Hosp Epidemiol , 28 , 215-218  (2007)
原著論文7
Takesue Y, Mikamo H, Arakawa S, et al.
Guidelines for implementation of clinical studies on surgical antimicrobial prophylaxis
J Infect Chemother , 14 , 172-177  (2008)
原著論文8
Okubo T, Kobayashi H.
Performance evaluation of masks for medical use –including the comparison with commercially available masks for general use.
J Healthcare- associated Infect , 1 , 57-61  (2008)
原著論文9
Kato H, Kato H, Ito Y, et al.
Typing of Clostridium difficile isolates endemic in Japan by sequencing of slpA and its application to direct typing.
J Med Microbiol , 59 , 556-562  (2010)
原著論文10
Iwashima Y, Nakamura A, Kato H, et al.
A retrospective study of the epidemiology of Clostridium difficile infection at a University Hospital in Japan: genotypic features of the isolates and clinical characteristics of the patients.
J Infect Chemother  (2010)
原著論文11
Kitao T, Miyoshi-Akiyama T, Shimada K, et al.
Development of an immunochromatographic assay for the rapid detection of AAC(6')-Iae-producing multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa.
J Antimicrob Chemother  (2010)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-