マイクロポンプシステムを用いた分子シャペロンとして働く薬物投与による遺伝性難聴の革新的治療法の創生

文献情報

文献番号
200930018A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロポンプシステムを用いた分子シャペロンとして働く薬物投与による遺伝性難聴の革新的治療法の創生
課題番号
H21-感覚・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
和田 仁(東北大学 大学院工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 俊光(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 宇佐美 真一(信州大学 医学部)
  • 池田 勝久(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 芳賀 洋一(東北大学 大学院医工学研究科)
  • 平澤 典保(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 中村 浩之(学習院大学 理学部)
  • 津本 浩平(東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
  • 石原 研治(茨城大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 日本人の遺伝性難聴の主な原因の1つは,内耳に発現する膜タンパク質pendrinが遺伝子変異によりミスフォールディングし,機能が低下するためであると考えられている.これまで我々は,pendrinと相同性が高い膜タンパク質prestinの研究を行ってきた.そして,変異prestinがサリチル酸によりリフォールディングし,その機能が回復することを発見した.そこで,本研究では,変異prestin同様,ミスフォールディングした変異pendrinをリフォールディングさせ,それらの機能を回復させる薬剤を特定するとともに,薬剤を内耳に投与するための,埋め込み型ドラッグデリバリーシステムを開発し,遺伝性難聴の革新的治療法の開発を目指す.
研究方法
 日本人で発見されているミスセンス変異pendrinをHEK293細胞に発現させ,サリチル酸およびその誘導体が,変異pendrinの局在に与える影響を,蛍光免疫染色法および共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いて解析した.また,治療薬を内耳投与する為の埋込み型ポンプを試作し送液が可能であるか検証した.
結果と考察
 pendrin変異体を発現させたHEK293細胞に,サリチル酸およびサリチル酸誘導体を投与し,変異体の細胞内局在を解析した.その結果,サリチル酸および2種類のサリチル酸誘導体(サリゲニン, 2,3-ジヒドロキシ安息香酸)が,変異体の細胞膜への移行を促進する事が分かった.サリチル酸誘導体は,サリチル酸よりも低濃度でその効果が見られ,サリチル誘導体がより効果が高い事が示された.
 難聴の治療においては,持続的に内耳に薬剤を投与することが求められる.その為には埋め込み型ドラッグデリバリーシステムが必要となる.そこで,体外から超音波を照射し,体内に埋め込んだポンプユニットから薬剤を内耳に投与可能なドラッグデリバリーシステムを設計した.そして試作したマイクロポンプを用いて送液が可能であることを実験的に確かめた.
結論
 pendrin変異体のリフォールディングにサリチル酸誘導体が有効であることが示された.また,超音波により発生する音響流を用いたマイクロポンプで送液が可能であることが示された.これらのことから,体内に埋込んだマイクロポンプを用いて蝸牛内へ薬剤を投与して遺伝性難聴を治療できる可能性が示された.

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
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