文献情報
文献番号
202304002A
報告書区分
総括
研究課題名
人を対象とする生命科学・医学系研究における患者・市民参画の推進方策に関する研究
課題番号
23AD1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 中田 はる佳(神奈川県立保健福祉大学)
- 東島 仁(千葉大学 国際学術研究院)
- 高島 響子(国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(倫理的法的社会的課題研究事業)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、諸外国での研究へのPPI(患者・市民参画)推進戦略を精査するとともに、国内のPPI事例を集約し、我が国に適した推進戦略と留意点を明らかにすることである。
研究方法
①PPI推進戦略の調査:英国、カナダ、オーストラリア各国について、人を対象とする健康・医療領域の研究開発と関わりの深い行政機関ウェブサイトに公開された情報を中核として、PPIを示す用語が含まれる政策文書等の記載をもとに検討対象の候補として精査した。
②ゲノム医療研究等に関連したPPI活動のレビュー:国内PPI事例については、文献調査や国内学会での情報収集、インターネットを通じたハンドサーチによる二次調査を行った。海外事例については特にゲノム領域について先行調査から先駆的な事例を得た他、英国のPPI5マッチング・データベース“People in Research”を使用した横断調査を行った。さらに、People in Research”がどのような仕組みかを調べた。
③PPI活動経験者への調査:国内でPPI活動を経験した患者・市民、研究者、仲介者へのインタビュー調査を実施した。対象は、既に終了した、または、安定的に運用されているPPIプロジェクトの関係者で、研究者、PPI仲介者・運営者、PPI協力者(患者・市民)とした。方法は半構造化インタビューであった。得られた音声データは文字起こしをして分析のために整理した。
④PPI活動に関する研究会の開催:デスクトップサーチ、②で得られてきた知見、個人的な紹介等により、これまでにPPI活動に関わった研究者・職員及びPPI活動に参加したことがある患者・市民の第一次リストを作成し、第1回患者・市民参画研究会の招聘対象とした。研究会の参加者には、記名での事前・事後アンケートを行った。
⑤医学研究に関する指針等での論点整理・提言:生命科学・医学系指針に反映すべき事項の素案については、文献検索と①で得られてきた知見をもとに作成した。班会議や第1回患者・市民参画研究会の参加者にも提示して意見を求めた。
②ゲノム医療研究等に関連したPPI活動のレビュー:国内PPI事例については、文献調査や国内学会での情報収集、インターネットを通じたハンドサーチによる二次調査を行った。海外事例については特にゲノム領域について先行調査から先駆的な事例を得た他、英国のPPI5マッチング・データベース“People in Research”を使用した横断調査を行った。さらに、People in Research”がどのような仕組みかを調べた。
③PPI活動経験者への調査:国内でPPI活動を経験した患者・市民、研究者、仲介者へのインタビュー調査を実施した。対象は、既に終了した、または、安定的に運用されているPPIプロジェクトの関係者で、研究者、PPI仲介者・運営者、PPI協力者(患者・市民)とした。方法は半構造化インタビューであった。得られた音声データは文字起こしをして分析のために整理した。
④PPI活動に関する研究会の開催:デスクトップサーチ、②で得られてきた知見、個人的な紹介等により、これまでにPPI活動に関わった研究者・職員及びPPI活動に参加したことがある患者・市民の第一次リストを作成し、第1回患者・市民参画研究会の招聘対象とした。研究会の参加者には、記名での事前・事後アンケートを行った。
⑤医学研究に関する指針等での論点整理・提言:生命科学・医学系指針に反映すべき事項の素案については、文献検索と①で得られてきた知見をもとに作成した。班会議や第1回患者・市民参画研究会の参加者にも提示して意見を求めた。
結果と考察
①PPI推進戦略の調査:英国とオーストラリア、カナダのPPI推進政策の次の5つの共通項を明らかにした。①目指すPPIのあり方や理念等が法令指針等の形で示され、逐次更新されている、②可能な限り研究開発のすべての段階でPPIを実施するよう求めている、③情報発信やコミュニケーション等、PPIと相補的な活動も含む包括的な枠組みが存在する、④細やかな説明やFAQ、各種ガイドラインが作成・逐次更新されている、⑤ウェブ上の資料が豊富で、かつ相談先や利用可能な資源が整備されていることである。
②ゲノム医療研究等に関連したPPI活動のレビュー:国内文献調査からは医学研究(治験含む)のPPI実践例が24件、医学研究以外のPPI実践例が6件、PPI実施の前段階の活動(前PPI活動)が12件収集された。また二次調査を通じて国内の公的助成研究、臨床研究グループ、患者・家族による団体、PPI推進を目的とする団体によるPPI活動や、資金面で患者・市民が主導した事例、PPIに繋がる学会の活動が多数収集された。
③PPI活動経験者への調査:1つのプロジェクトを選定し、当該プロジェクトに関わったPPI仲介者2名、研究者1名にインタビューを行った。本調査を通じて、PPIプロジェクトの情報が散逸していること、PPIに携わる人々が意見交換できる場がないことなどの課題が見えた。また、調査データから、PPIに関わるきっかけは、それまでの自身の研究活動から得た気づきや関心を発展させたことであることがわかった。
④PPI活動に関する研究会の開催:2024年2月26日に2名の有識者を招聘し、63名の参加者を得て「第1回患者・市民参画研究会」として実施した。事前及び事後のアンケートでは、協力者の選考方法、事例の共有、負担の軽減、事後の協力者への報告等、多数の知りたい事項や懸念が挙げられ、参加者の立場によって異なった。
⑤医学研究に関する指針等での論点整理・提言:「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を素材として、PPIに関する責務をどのように追記できるかを検討し、研究代表者、研究責任者、倫理審査委員会の責務を中心として追記を検討しうる箇所の素案を作成し、研究会で提示した。研究実施体制全体が調和しながら変更する必要があり、指針のみの問題ではないことも示唆された。今後とも幅広く意見を集めて論点を集約する必要がある。
②ゲノム医療研究等に関連したPPI活動のレビュー:国内文献調査からは医学研究(治験含む)のPPI実践例が24件、医学研究以外のPPI実践例が6件、PPI実施の前段階の活動(前PPI活動)が12件収集された。また二次調査を通じて国内の公的助成研究、臨床研究グループ、患者・家族による団体、PPI推進を目的とする団体によるPPI活動や、資金面で患者・市民が主導した事例、PPIに繋がる学会の活動が多数収集された。
③PPI活動経験者への調査:1つのプロジェクトを選定し、当該プロジェクトに関わったPPI仲介者2名、研究者1名にインタビューを行った。本調査を通じて、PPIプロジェクトの情報が散逸していること、PPIに携わる人々が意見交換できる場がないことなどの課題が見えた。また、調査データから、PPIに関わるきっかけは、それまでの自身の研究活動から得た気づきや関心を発展させたことであることがわかった。
④PPI活動に関する研究会の開催:2024年2月26日に2名の有識者を招聘し、63名の参加者を得て「第1回患者・市民参画研究会」として実施した。事前及び事後のアンケートでは、協力者の選考方法、事例の共有、負担の軽減、事後の協力者への報告等、多数の知りたい事項や懸念が挙げられ、参加者の立場によって異なった。
⑤医学研究に関する指針等での論点整理・提言:「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を素材として、PPIに関する責務をどのように追記できるかを検討し、研究代表者、研究責任者、倫理審査委員会の責務を中心として追記を検討しうる箇所の素案を作成し、研究会で提示した。研究実施体制全体が調和しながら変更する必要があり、指針のみの問題ではないことも示唆された。今後とも幅広く意見を集めて論点を集約する必要がある。
結論
本年度は、①から⑤の取り組みを通じて、国内でのPPI活動の現状を把握すること自体の課題が浮き彫りとなる一方、国内で取り組んでいる人々に必要とされるものは、先行する海外の取り組みから学んで整備できるものでもあると考えられた。引き続き次年度において、検討を深めることとしたい。
公開日・更新日
公開日
2024-07-17
更新日
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