内耳薬物投与システムを応用した感音難聴、耳鳴り治療技術の臨床応用

文献情報

文献番号
200930017A
報告書区分
総括
研究課題名
内耳薬物投与システムを応用した感音難聴、耳鳴り治療技術の臨床応用
課題番号
H21-感覚・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中川 隆之(京都大学大学院 医学研究科 耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 壽一(京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科)
  • 田畑 泰彦(京都大学再生医科学研究所 生体材料学)
  • 暁 清文(愛媛大学医学部 耳鼻咽喉科)
  • 熊川 孝三(虎の門病院 耳鼻咽喉科聴覚センター 耳鼻咽喉科)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科)
  • 宇佐美 真一(信州大学医学部 耳鼻咽喉科)
  • 欠畑 誠治(弘前大学医学部 耳鼻咽喉科)
  • 村上 信五(名古屋市立大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科)
  • 小宗 静男(九州大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科)
  • 田渕 経司(筑波大学人間総合科学研究科 耳鼻咽喉科)
  • 手良向 聡(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)
  • 坂本 達則(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)
  • 平海 晴一(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)
  • 山本 典生(京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)
  • 吉川 弥生(京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、生体吸収性材料を用いた内耳薬物投与システムを用いた感音難聴治療法の臨床応用を行い、感音難聴の治療・重症化防止に貢献することにある。本研究では、ゼラチンハイドロゲルを用いたインスリン様細胞成長因子1(IGF1)内耳投与の急性高度難聴に対する有効性の臨床研究および、内耳への薬物局所投与による感音難聴、耳鳴に対する新規治療法の開発を行う。
研究方法
ステロイド全身投与で十分な効果が得られない急性高度難聴症例を対象とし、ゼラチンハイドロゲルによるIGF1内耳投与の安全性、有効性を調べる第Ⅰ-Ⅱ相臨床試験の統計学的解析を行い、第Ⅱ相臨床試験の準備を行った。ポリグリコール乳酸パーティクルによるリドカイン内耳投与による耳鳴抑制効果について蝸牛での効果検証に関する動物実験を行い、脳磁図応用について臨床研究を行った。また、プロスタグランディンE受容体特異的作動薬内耳局所投与の音響外傷に対する治療効果について調べた。

結果と考察
ゼラチンハイドロゲルを用いたIGF1内耳投与第Ⅰ-Ⅱ相臨床試験では、投与12週後で48%、投与24週後で56%の症例で聴力回復が認められ、問題となる有害事象は認められなかった。第Ⅱ相臨床試験の準備として、ゼラチンハイドロゲル供給体制の確立を行い、臨床的検討からデキサメサゾン鼓室内投与を対照群とすることが妥当と考えられた。また、リドカイン内耳徐放効果として蝸牛遠心性神経系の修飾効果が主な作用機序であることが示唆され、健常成人を用いた脳磁図による耳鳴評価法の基礎データを集積した。さらに、プロスタグランディンE受容体特異的作動薬内耳局所投与により、音響外傷防御効果、血管内皮増殖因子のパラクライン効果の関与が示された。また、既存薬であるプロスタグランディンE1よりも優れた効果を示すことが分かった。
結論
ゼラチンハイドロゲルを用いたIGF1内耳投与第Ⅰ-Ⅱ相臨床試験結果では、第Ⅱ相臨床試験を行う妥当性が示され、第Ⅱ相臨床試験施行に関する準備を完了した。リドカイン局所投与による耳鳴り抑制について、蝸牛局所での作用機序および他覚的評価方法の基盤が形成された。また、プロスタグランディンE受容体特異的作動薬が、既存のプロスタグランディン製剤よりも高い感音難聴治療効果をもつことが示された。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
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