保健医療分野におけるデジタルデータのAI研究開発等への利活用に係る倫理的・法的・社会的課題の抽出及び対応策の提言のための研究

文献情報

文献番号
202304001A
報告書区分
総括
研究課題名
保健医療分野におけるデジタルデータのAI研究開発等への利活用に係る倫理的・法的・社会的課題の抽出及び対応策の提言のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22AD1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
中野 壮陛(公益財団法人医療機器センター 医療機器産業研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 浜本 隆二(国立がん研究センター研究所)
  • 中田 はる佳(神奈川県立保健福祉大学)
  • 石川 俊平(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(倫理的法的社会的課題研究事業)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,188,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、令和5年度末までに保健医療分野におけるデジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るELSI の抽出、国内外のELSI の議論の動向も踏まえた対応策の提言、研究者等が活用できるガイドライン案や事例集等の作成を行うことを目的として実施した。
研究方法
当該年度においては、研究者等が活用できる保険医療分野におけるデジタルデータのAI研究開発等への利活用に係る倫理的・法的・社会的課題、市民の意識調査結果を踏まえた社会実装を見据えたガイドライン案並びに機関事務担当の利用を念頭にした仮名加工情報を共同利用するための体制整備ブックと具体的ひな形集の案を策定した。また、ゲノムデータの用語に含まれる情報を整理し、情報の状態に応じた個人識別性の明確化を図った。
本研究においては実施体制として統括研究班および3つの分担研究班を組織して遂行した。統括研究班の代表を中野が務め、①デジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るガイドライン作成班(分担研究者;浜本隆二)、②デジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るELSI研究班(分担研究者;中田はる佳)、③ゲノムデータの持つ個人識別性に関する研究班(分担研究者;石川俊平)を組成して取り組んだ。
結果と考察
研究遂行においては、広範におよぶ検討分野であるため議論の焦点を絞るために、医療機関からのデータ提供の目線であるが、製造販売承認申請に向けた医療機器企業へのデータの導出を念頭にしたモデルを想定し、学術研究・探求ではなく社会実装のためのソリューション提供であり、実学・プラクティカルであるという検討の基礎となる考え方のもと、①デジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るガイドライン作成班においては、諸外国の状況を調査するとともに、国内の様々な専門家(法律の専門家、製薬協、次世代医療基盤法認定事業者など)への調査研究を行った。調査研究の成果と諸外国の状況に関する調査結果、及び国内における最新の法制度・ガイドライン・倫理指針などを調査した結果し、「医療デジタルデータのAI研究開発等への利活用に係るガイドライン(案)」を作成した。②デジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るELSI研究班においては、デジタルデータの利活用、すなわち、AI医療機器開発を念頭したELSIを調査研究すると共に、医療情報を医療機器開発に利活用することに対する市民の意識調査を行った。当該調査を通して、本邦におけるデジタルデータのAI研究開発等への利活用を促進するためには、二次利用の信頼を醸成するための透明性を示すための取り組みとそれを浸透させるための市民参画が重要であり、市民への医療情報の二次利用に関する意識をより高める理解促進のための取り組みを継続して実施していくことが不可欠であると考えられた。③ゲノムデータの持つ個人識別性に関する研究班においては、個人識別性や社会受容性の考え方が変化していることや、全ゲノム解析等実行計画の進展、遺伝子パネル検査の保険収載ともなって包括的なゲノムデータが国内で蓄積されてきたことなど、ゲノムデータの利活用に関する背景が変化していることを念頭に調査に取り組んだ。
また、仮名加工情報の共同利用を行うための体制を整備するうえでの考え方を事務方向けの文書を「[事務書類の整備に向けた例文と解説集]医療機器開発に仮名加工情報を共同利用する医療機関と企業の体制整備ブック(案)」として取りまとめた。
結論
医療機関からのデータ提供の目線であるが、製造販売承認申請に向けた医療機器企業へのデータの導出を念頭にしたモデルを想定し、学術研究・探求ではなく社会実装のためのソリューション提供であり、実学・プラクティカルであるという検討の基礎となる考え方のもと、倫理的・法的・社会的課題を踏まえた仮名加工情報の利活用にかかるガイドライン案を作成した。また、ゲノムデータの個人識別性に関しては国内外の利活用状況、個人識別性の範囲に関する調査を行い、科学的観点や個人識別性等の解釈や利活用における論点を総合的に整理し、現行の科学的、社会的解釈によって解決策が見出すことが可能なものについては具体的なQ&A案並びにガイドライン修正案を提示した。

公開日・更新日

公開日
2025-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202304001B
報告書区分
総合
研究課題名
保健医療分野におけるデジタルデータのAI研究開発等への利活用に係る倫理的・法的・社会的課題の抽出及び対応策の提言のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22AD1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
中野 壮陛(公益財団法人医療機器センター 医療機器産業研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 浜本 隆二(国立がん研究センター研究所)
  • 中田 はる佳(神奈川県立保健福祉大学)
  • 石川 俊平(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(倫理的法的社会的課題研究事業)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、令和5年度末までに、保健医療分野におけるデジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るELSI の抽出、国内外のELSI の議論の動向も踏まえた対応策の提言、研究者等が活用できるガイドライン案や事例集等の作成を行うことを目的とした。
研究方法
研究遂行においては、広範におよぶ検討分野であるため議論の焦点を絞るために、医療機関からのデータ提供の目線であるが、製造販売承認申請に向けた医療機器企業へのデータの導出を念頭にしたモデルを想定し、学術研究・探求ではなく社会実装のためのソリューション提供であり、実学・プラクティカルな取りまとめを行う方向性を設定した。本研究においては実施体制として統括研究班および3つの分担研究班を組織して遂行した。統括研究班の代表を中野が務め、①デジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るガイドライン作成班(分担研究者;浜本隆二)、②デジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るELSI研究班(分担研究者;中田はる佳)、③ゲノムデータの持つ個人識別性に関する研究班(分担研究者;石川俊平)を組成して取り組んだ。
本研究班は2022年10月24日から2024年3月31日までの期間にて実施し、およそ1年5か月の研究期間となった。評価結果通知を2022年10月24日、交付申請を2022年11月9日、交付決定を2023年1月18日に受けた。研究開始に際しては、各分担研究代表者と個別に打合せの場を設けて研究の背景および目的の共有を行ったうえで開始した。研究開始にあたっては上記のような研究班体制を構築した。令和4年度(1年目)においては、統括研究班会議を3回(キックオフ、中間報告、年次報告)実施した。令和5年度(2年目)においては、統括研究班会議を4回(キックオフ、中間報告(2回)、年次報告)実施した。
結果と考察
①デジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るガイドライン作成班(分担研究者;浜本隆二)においては、諸外国の状況を調査するとともに、幅広い分野の有識者(法律・生命倫理・医用画像・AI・ 医療機器開発・創薬・医療における人権など)と議論しながら調査を継続して実施しながら、ガイドライン案の草稿に取り組んだ。その成果は個人情報保護委員会との意識合わせを行った後、「医療デジタルデータのAI研究開発等への利活用に係るガイドライン(案)」としてまとめた。②デジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係るELSI研究班(分担研究者;中田はる佳)においては、保健医療分野におけるデジタルデータをAI研究開発に利活用する際のELSIとその対応策を検討し、浜本班で作成するガイドライン案をはじめ本研究班の議論の基盤となる知見を得ることを目的として実施した。日米英等における現状の議論を学術的側面や政策的側面から整理し、論点と議論の限界、解消に向けた動向等についてまとめた。加えて、民対象の意識調査を通して医療機器メーカーの医療情報の二次利用に対しては、製薬企業の活動と同様に公衆衛生の向上に資すると考える回答者が多く、世の中の役に立つと評価されていることを明らかにした。また、本邦におけるデジタルデータのAI研究開発等への利活用を促進するためには、市民への医療情報の二次利用に関する意識をより高める理解促進のための取り組みを継続して実施していくことが不可欠であることを明確化した。③ゲノムデータの持つ個人識別性に関する研究班(分担研究者;石川俊平)においては、ゲノムデータの利活用に関する背景として、個人識別性や社会受容性の考え方が変化していることや全ゲノム解析計画の進展があげられる。本研究では、国内外の利活用事例や個人識別性の範囲に関する調査を行い、科学的観点や海外動向を考慮して個人識別性等の解釈や利活用における論点を総合的に整理した。これらの調査結果をもとに個人情報保護を考慮しつつゲノムデータの利活用に向けた課題とその解決に向けた運用面からのアプローチを提案する基礎となる論点整理を行なった。
統括研究班としては、仮名加工情報の共同利用を行うための体制を整備するうえでの考え方を事務方向けの文書を「[事務書類の整備に向けた例文と解説集]医療機器開発に仮名加工情報を共同利用する医療機関と企業の体制整備ブック(案)」として取りまとめた。
結論
当該研究班を通して、倫理的・法的・社会的課題を踏まえた仮名加工情報の利活用にかかるガイドライン案を作成した。また、ゲノムデータの個人識別性に関しては国内外の利活用状況、個人識別性の範囲に関する調査を行い、科学的観点や個人識別性等の解釈や利活用における論点を総合的に整理し、現行の科学的、社会的解釈によって解決策が見出すことが可能なものについては具体的なQ&A案並びにガイドライン修正案を提示した。

公開日・更新日

公開日
2025-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202304001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
保健医療分野におけるデジタルデータのAI研究開発等への利活用に係る倫理的・法的・社会的課題の調査結果を踏まえたガイドライン(案)等を作成した。また、ゲノムデータの個人識別性に関する本邦および国際的な議論を踏まえ個人情報保護法に関するQA案およびガイドラインの修正案を提示した。成果は、本邦におけるデータ利活用の推進への活用に期待される。
臨床的観点からの成果
大量の医療情報を使用する医療AI研究開発は患者の権利利益を侵害しないための保護措置を担保しながら、我が国の医療AI研究開発の活性化、国際競争力を高め、引いては国民の医療の質の向上に資する基盤となる研究である。
ガイドライン等の開発
実務者向けの「医療デジタルデータのAI研究開発等への利活用に係るガイドライン(案)」、事務方向けの「[事務書類の整備に向けた例文と解説集]医療機器開発に仮名加工情報を共同利用する医療機関と企業の体制整備ブック(案)」を作成した。また、ゲノムデータの個人識別性に関する本邦および国際的な議論を踏まえ個人情報保護法に関するQA案およびガイドラインの修正案を提示した。
その他行政的観点からの成果
当該研究の最終成果物は、今後の本邦における医療データの安全な利活用の推進のための施策立案に資すると考えられる。
その他のインパクト
当該研究成果は、厚生労働省・経済産業省・AMED主催の第2回SaMDフォーラムにて総合討論(2022年12月1日)、厚生労働省・経済産業省主催のSaMD産学官サブフォーラム2023- プログラム医療機器における産学官連携 -[総合討論]第二部:プログラム医療機器における医療データの利活用について(2023年2月6日)などにて普及活動を実施した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
ガイドライン1件、体制整備ブック1件、ガイドライン案並びにQ&A改定案1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-04-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
202304001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,252,000円
(2)補助金確定額
12,252,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 404,446円
人件費・謝金 1,373,388円
旅費 0円
その他 8,404,700円
間接経費 2,064,000円
合計 12,246,534円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」に差異がある理由としては、当該研究の遂行においては、個人情報保護法を念頭にしながら、医療機器の研究開発から薬事承認申請までのプロセスを踏まえた検討を行った。その過程では、薬事規制上の動きへの対応や次世代医療基盤法の動きの把握したうえでの検討が求められるため適宜、対応しながら実施した結果である。具体的には、ヒアリング対象の見直しの伴う謝金額の変動、海外動向を把握するための文献の選定に伴う物品費の変動や、研究班会議における議論の取りまとめを精緻に行うためのその他の経費の変動である。

公開日・更新日

公開日
2025-04-30
更新日
-