難治性眼炎症性疾患に対する網羅的迅速診断システムの開発

文献情報

文献番号
200930016A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性眼炎症性疾患に対する網羅的迅速診断システムの開発
課題番号
H21-感覚・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
望月 學(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 細胞治療センター)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 ウイルス治療学)
  • 杉田 直(東京医科歯科大学 眼科)
  • 大黒 伸行(大阪大学 眼科)
  • 臼井 嘉彦(東京医科大学 眼科)
  • 園田 康平(九州大学 眼科)
  • 丸山 和一(京都府立医科大学 眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
感染性眼内炎と眼内リンパ腫は失明あるいは生命予後に直結する重篤な疾患である。これらの診断は培養や病理細胞診などにより行われているが、迅速性と検体量に問題がある。即ち、眼内検体は極微量であり、多項目を網羅的に検査することが出来ない。本研究は、眼内の微量検体からPolymerase chain reaction (PCR) 法を用いて眼内感染症病原体と眼内リンパ腫を網羅的かつ迅速に診断もしくは除外できるシステムを開発し、臨床的有用性を検討することを目的とする。



研究方法
臨床症状から眼内感染症あるいは眼内リンパ腫が疑われた患者から前房水、または硝子体を採取し以下のPCRを全症例で行った。①ウイルス診断セット: HHV1?HHV8、②ぶどう膜炎診断セット:結核菌、梅毒、Bartonellahenselae、犬回虫幼虫、トキソプラズマ原虫、クラミジア、③細菌診断セット(細菌16S rRNA領域)、④真菌診断セット:カンジダ属、 アスペルギルス属の18SrRNA領域、⑤アクネ菌診断セット (Propionibacterium acnes)、⑥その他:アカント・アメーバ、風疹ウイルス、HTLV-1ウイルス、⑦眼内リンパ腫診断セット:B細胞重鎖遺伝子再構成、T細胞受容体遺伝子再構成である。感染症診断のGold standardが現状では存在しないため、PCRの結果と、臨床所見(培養などのほかの検査、治療に対する反応、臨床症状)を比較しシステムの有効性を検討した。
結果と考察
眼感染症が疑われた患者84例、ならびに眼内リンパ腫が疑われた患者18例の検体を本診断システムで検査した。眼感染症疑い患者群84例中PCR陽性症例は39例でそのうち偽陽性は1症例であった。PCR陰性症例は45例で、そのうち36例は他の検査、治療効果からも感染症が除外された。PCR結果が感染症の確定診断、あるいは除外診断に有効だった症例はPCR陽性症例で38例、PCR陰性症例で36例となり、有効率は74/84(88%)となった。眼内リンパ腫では18例中10例でIgHもしくはTCRの遺伝子再構成のモノクローナリティがみられ診断に至った。PCR陰性の8例の最終的な診断はサルコイドーシス5例、特発性ぶどう膜炎3例となった。眼内リンパ腫においては全例で有効であった。
結論
 臨床所見から眼内感染症あるいは眼内リンパ腫が疑われる症例に対してこの網羅的迅速PCR診断システムは有効性であった。今後症例を集めてさらなる有効性を検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
200930016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本診断システムの利点として、(1)定性PCRはDNA抽出から結果報告まで24時間以内に行えた事、(2)定量結果も48時間以内に行えた事、(3)前房水0.1ml、硝子体0.5mlという極微量の検体でも、全症例で多くのPCRが行えた事、(4)眼局所での抗原DNA量(コピー数)が把握でき治療法の決定に有効であった事などが挙げられる。
臨床的観点からの成果
感染性眼内炎と眼内リンパ腫は失明あるいは生命予後に直結する重篤な疾患である。これらの診断は培養や病理細胞診などにより行われているが、迅速性と検体量に問題がある。即ち、眼内検体は極微量であり、多項目を網羅的に検査することが出来ない。当システムは眼内の微量検体からPolymerase chain reaction (PCR) 法を用いて眼内感染症病原体と眼内リンパ腫を網羅的かつ迅速に診断もしくは除外できる。
ガイドライン等の開発
臨床症状から眼内感染症あるいは眼内リンパ腫が疑われた患者から前房水、または硝子体を採取しPCRを全症例で行った。細胞受容体遺伝子再構成である3つの項目に分けてシステムの有効性を検討した。即ち、(1) 確定診断例:PCRの結果が陽性となり臨床所見と一致し確定診断に至ったもの、(2) 感染症除外診断例:PCRの全項目陰性で臨床所見、他の検査と一致し眼感染症、眼内リンパ腫が除外できたもの、(3) 無効例:PCRの結果が臨床所見、他の検査と一致しないものである。
その他行政的観点からの成果
感染性眼内炎と眼内リンパ腫は失明あるいは生命予後に直結する重篤な疾患である。これらの早期診断により、視力予後や生命予後が改善される可能性がある。
その他のインパクト
眼科学会での発表。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-