未熟児網膜症の新規手術法開発後の治療プロトコールの標準化

文献情報

文献番号
200930015A
報告書区分
総括
研究課題名
未熟児網膜症の新規手術法開発後の治療プロトコールの標準化
課題番号
H21-感覚・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
東 範行(国立成育医療センター 第二専門診療部 眼科)
研究分担者(所属機関)
  • 不二門 尚(大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学分野)
  • 石橋 達朗(九州大学大学院機能制御医学部門構造機能学講座眼科学部門)
  • 佐藤 美保(浜松医科大学眼科学教室)
  • 近藤 峰生(名古屋大学大学院医学系研究科頭頸部・感覚器外科学講座)
  • 坂本 泰二(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻感覚器病学講座眼科学分野)
  • 白神 史雄(香川大学医学部眼科学教室)
  • 飯田 知弘(福島県立医科大学眼科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
未熟児網膜症(ROP)は小児失明原因の第一位を占め、体重が少ない超低出生体重児が生存可能になって急速に増加している。我々は重症ROPに対し失明を回避する画期的な手術方法を開発した。本研究では、早期手術の治療プロトコールを改善するとともに標準化し、全国への普及を目指す。
研究方法
1)重症ROPに早期硝子体手術前後に、蛍光眼底造影で増殖組織の活動性を検討した。2)大阪大学で硝子体手術を行った重症ROP76例124眼の成績を検討した。3)過去2年の福島県の新生児医療を調査した。4)硝子体術後フィブリン消去のため、超音波照射法を検討した。5)2波長分光画像を用いた眼底酸素飽和度の計測計を試作した。6)アカゲザルで黄斑部局所ERGを記録した。7)小児眼圧測定でのアイケア手持ち眼圧計を検討した。8)暗室で瞳孔反応撮影し視反応を早期評価した。
結果と考察
1)術後1-2週で新生血管の活動性が低下した。牽引除去、血管新生因子洗浄が効用と考えられる。2)Stage 4Aの復位率は98%、stage 5は52.5%であった。早期手術の有用性の啓蒙が適切になされつつある。3)福島県9施設NICUで7施設に眼科医が常勤し、全て光凝固装置が配備された。光凝固は過去2年で32件、硝子体手術は3例4眼行われた。拠点病院創設と医療ネットワークシステムの確立が必要である。4)超音波照射で、ヒトフィブリンはただちに溶解し、ラットでも有効であった。ROPは術後フィブリン形成が問題で、本法は苦痛なく施行可能ある。5)眼底血中のヘモグロビン酸素結合状態を、干渉フィルタと眼底カメラを用いて2波長同時撮影する装置を開発した。得られた画像から分光分析による動静脈の分離が可能となった。6)サルで黄斑局所ERGのすべての波を記録できた。ROP患児に行うことができる。7)6歳以下はアイケア測定が可能で術後検査に有用である。8)瞳孔撮影は鎮静が不要で簡便な評価であった。重篤な視力障害の早期発見に利用できる。
結論
早期硝子体手術で新生血管の活動性を早期から抑制できる。硝子体手術はstage 4Aに行うべきである。ROP拠点病院の整備、医療ネットワーク構築に当たって、診断の精度向上、搬送システムの整備が必要である。超音波照射による眼内フィブリン消去法は有効である。無侵襲の網膜酸素飽和度測定装置を開発した。全身麻酔で小児から黄斑部局所ERGを記録できる。眼圧測定はアイケア手持ち眼圧計が優れていた。小児視力評価では対光反射の撮影が有効である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
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