文献情報
文献番号
202303008A
報告書区分
総括
研究課題名
ナショナルデータベースや介護保険総合データベース等を活用した医療・介護特性を総合的に捉えたAIプロトタイプの開発と分析結果を根拠とした医療介護特性別の最適介入
課題番号
22AC1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
福井 小紀子(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 廣岡 佳代(東京医科歯科大学・大学院保健衛生学研究科)
- 岡田 就将(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 浜野 淳(国立大学法人 筑波大学 医学医療系)
- 高橋 邦彦(東京医科歯科大学 M&Dデータ科学センター)
- 佐藤 一樹(名古屋大学 大学院医学系研究科総合保健学専攻)
- 菅野 雄介(東京医科歯科大学 保健衛生学研究科 在宅・緩和ケア看護学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究課題は、病院・施設・在宅という場を超えたケアの質の担保、及び、医療経済的観点を統合した住民個々への医療介護資源の効率的な再分配、健康・医療分野における行政政策に資する科学的根拠の創出を目指し、医療と介護特性を総合的に考慮したAI(artifical intelligence)のプロトタイプを活用した国等が保有する公的データの有用性の検証と課題を明確化することである。今年度は、以下3点、①レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下、NDB)と介護保険総合データベース(以下、介護DB)の利用申出書を作成し、審査に向けた利用申請、②予測モデルの予測精度向上に向けた統計解析研究計画の精緻化、③静岡県の国保データベース(KDB)を用いたフィージビリティスタディを目的とした。
研究方法
本年度は、令和4年度に医療や介護現場で臨床や研究を専門とする分担研究者と協議を重ね立案した研究疑問18個をもとに、NDBと介護DBの利用申出書を作成し、審査に向けた利用申請を行った。通常、審査から納品までの期間が300日程度を要するため、待機期間には立案した研究疑問を研究者間で再協議し、また新たな研究疑問を立案し、統計解析計画書の精緻化を進めた。さらに、AIプロトタイプ開発に向け解析手法や予測精度を検討するため、作成した統計解析計画書にもとに、静岡県の国保データベース(KDB)を用いたフィージビリティスタディを実施した。
結果と考察
本研究では、以下の2つの研究疑問について、静岡KDBを基にフィージビリティスタディを実施した。
(1)要介護度3以上の認知症を有するがん外科手術を受けた患者における手術月の翌月から12か月時点の要介護度2段階以上の悪化を予測する
(2)新規に要介護認定を受けた要介護2以下の利用者における認定月の翌々月から12か月時点の要介護度の悪化を予測する
(1)の解析対象集団は、221名であった。要介護度、性別、年齢、医薬品、傷病名、訪問看護等の診療行為、介護サービスの利用状況を予測変数として、ロジスティック回帰モデルと4つの機械学習のモデル(random forest、neural network、eXtreme Gradient Boosting、Stochastic Gradient Boosting)を構築した。C統計量の値は、0.683~0.780に分布しており、良好な予測精度(識別能)であった。
(2)の解析対象集団は、20,154名であった。上記と同様の予測変数と統計モデルにより予測モデルを構築した。C統計量の値は、0.721~0.738に分布しており、良好な予測精度(識別能)であった。1県のデータの場合、特に研究課題(1)では対象数が十分でなく、その予測精度が低下することから、今後、NDB・介護DBでの解析が求められることが明らかになった。
これらの結果について多角的な視点から、さらに分担研究者間で協議を重ね、データ提供後の解析準備に向けて進める予定である。
(1)要介護度3以上の認知症を有するがん外科手術を受けた患者における手術月の翌月から12か月時点の要介護度2段階以上の悪化を予測する
(2)新規に要介護認定を受けた要介護2以下の利用者における認定月の翌々月から12か月時点の要介護度の悪化を予測する
(1)の解析対象集団は、221名であった。要介護度、性別、年齢、医薬品、傷病名、訪問看護等の診療行為、介護サービスの利用状況を予測変数として、ロジスティック回帰モデルと4つの機械学習のモデル(random forest、neural network、eXtreme Gradient Boosting、Stochastic Gradient Boosting)を構築した。C統計量の値は、0.683~0.780に分布しており、良好な予測精度(識別能)であった。
(2)の解析対象集団は、20,154名であった。上記と同様の予測変数と統計モデルにより予測モデルを構築した。C統計量の値は、0.721~0.738に分布しており、良好な予測精度(識別能)であった。1県のデータの場合、特に研究課題(1)では対象数が十分でなく、その予測精度が低下することから、今後、NDB・介護DBでの解析が求められることが明らかになった。
これらの結果について多角的な視点から、さらに分担研究者間で協議を重ね、データ提供後の解析準備に向けて進める予定である。
結論
本年度は、医療と介護特性を総合的に考慮したAIのプロトタイプを開発するために、医療や介護現場で臨床や研究を専門とする分担研究者と協議を重ね、立案した研究疑問の測精度向上に向けた統計解析研究計画の精緻化に加え、静岡県KDBを用いたフィージビリティスタディを実施した。 今後は、NDBが提供され次第、すでに提供されている介護DBとの連結を行い、AI分析用データセットを作成する。生存率や再入院等をアウトカム指標とした予後予測等のAI分析をすることで、予後予測精度の検証や、公的データの横断的な活用可能性や有用性を検証する。データ利用が可能となる期間はAIプロトタイプ開発に向けた統計解析計画書の精緻化を進める予定である。
公開日・更新日
公開日
2024-07-17
更新日
-