文献情報
文献番号
200930014A
報告書区分
総括
研究課題名
小児Auditory Neuropathyの診療指針の確立
課題番号
H21-感覚・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松永 達雄(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 聴覚・平衡覚研究部 聴覚障害研究室)
研究分担者(所属機関)
- 泰地 秀信(国立成育医療研究センター 耳鼻咽喉科)
- 守本 倫子(国立成育医療研究センター 耳鼻咽喉科)
- 坂田 英明(目白大学 言語聴覚学科、埼玉県立小児医療センター 耳鼻咽喉科)
- 浅沼 聡(埼玉県立小児医療センター 耳鼻咽喉科)
- 安達 のどか(埼玉県立小児医療センター 耳鼻咽喉科)
- 仲野 敦子(千葉県こども病院 耳鼻咽喉科)
- 城間 将江(国際医療福祉大学 言語聴覚学科)
- 小渕 千絵(国際医療福祉大学 言語聴覚学科)
- 新正 由紀子(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
- 尾藤 誠司(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター政策医療企画研究部 臨床疫学室)
- 加我 君孝(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
Auditory Neuropathy(以下AN)は、他の感音難聴と比べて著しく言語聴取力が低く、小児では補聴器を装用しても言語獲得が困難な難聴である。通常の感音難聴とは異なる多様な組み合わせの聴覚検査所見を呈するために診断が困難である。当初ANでは聴神経が障害されるために人工内耳の効果を期待できないと考えられたが、一部の小児ANでは人工内耳が有効であることも近年明らかとなった。本研究の目的は、小児ANをサブタイプに分類し、それぞれに適した診療指針を確立することである。
研究方法
2009年11月までに本研究に症例登録された小児AN診断例21人および小児AN疑い診断例6人の臨床像(患者背景、臨床経過、画像検査、聴覚検査、言語聴覚リハビリテーション効果)を検討した。診断例では、難聴以外の症状も伴う症候群性ANが7人であり、難聴のみの非症候群性ANが14人であった。さらに一部の症候群性ANおよび非症候群性ANでは遺伝的要因の検討を行い、同定された遺伝子の一部に対しては、AN診断されていない小児難聴における頻度を検討し、効率的なスクリーニング法の開発を試みた。
結果と考察
わが国において難聴以外の症状を伴わない先天性Auditory Neuropathy患者の半数以上は人工内耳の効果が高い特定の遺伝子変異が原因であった。同定された病的変異アレルの約67%が同一の変異であり、家系メンバーのSNP解析は創始者効果を支持した。一方、原因を問診や従来の各種診断、検査で鑑別することは困難であった。ANの有無の検討をされていない先天性難聴児でも、本遺伝子変異が認められたが、頻度は低かった。米国Transgenomic社SURVEYOR遺伝子変異解析法による本遺伝子変異の効率的スクリーニング法を開発した。
結論
難聴以外の症状を伴わない先天性Auditory Neuropathyの半数以上は特定の遺伝子変異が原因であり、その場合は人工内耳による言語聴覚リハビリテーション効果が高い。このため、これまで効果的な診療指針が乏しかった言語発達が難しい小児難聴患者の一部では、本遺伝子検査により早期診断と言語発達の促進が可能となる。
公開日・更新日
公開日
2010-09-22
更新日
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