中・高齢層中途視覚障害者の自立・学習・就労を支援する文字入力システムの開発と有効性の実証に関する研究

文献情報

文献番号
200930013A
報告書区分
総括
研究課題名
中・高齢層中途視覚障害者の自立・学習・就労を支援する文字入力システムの開発と有効性の実証に関する研究
課題番号
H21-感覚・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 和之(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局 理療教育・就労支援部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 弥生(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 障害福祉研究部)
  • 清田 公保(熊本高等専門学校 人間情報システム工学科)
  • 江崎 修央(鳥羽商船高等専門学校 制御情報工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,375,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、点字や普通文字、PCでの文字入力に困難を有し、ノート・テイキングに苦慮する中・高齢層中途視覚障害者の自立訓練、学習、就労を支援する文字入力システムの開発と、その有効性の実証を目的とする。
研究方法
(1)点字タイプライター式並びに手書き式文字入力システムを開発し、中途視覚障害者の自立訓練施設並びに就労移行支援(養成施設)に在籍し、普段筆記行動をとらない利用者を対象として、長期試用と福祉機器満足度スケールQUEST2.0による調査を実施する。(2)デジタルペンを活用した鍼灸等臨床実習用予診票・施術録作成システムを開発する。(3)地域の視覚障害者並びに上記就労移行支援利用者を対象として、文字入力手段に関する実態把握とニーズの抽出を図る質問紙による対面調査を実施する。(4)システムの普及を目的として、学会でのワークショップ及び広報を実施する。
結果と考察
(1)地域の71歳女性と、施設入所の44歳男性が2ヶ月間点字タイプライター式システムを試用した結果、満足度スコアの平均は、2名とも4.4点(max=5.0点)であった。環境設定を円滑にするボタン配置が求められている。53歳女性が手書き式システムを試用した結果、満足度スコアは4.7点であった。(2)予診票作成システムの試用を開始した。1ヶ月間の臨床実習の新規患者 10名のうち7名の手書き文字認識が成功し、データベース化した。その情報を臨床実習生(56歳男性)が画面読み上げソフトを用いて把握して、手書きによる電子カルテ作成を試行した。施術録作成システムの円滑な動作が確認された。(3)地域の視覚障害者は家庭での筆記を諦めている一方、銀行等での署名など生活上必要な場面での筆記行動に困難を抱えていた。理療教育在籍者64名のPCの活用と学業成績に相関関係はなかった。23名は授業時、自習時とも筆記具を用いず、そのうち4名は録音機器のみの学習を余儀なくされていた。様々な場面に携帯できる筆記支援ツールの必要性が再確認された。(4)4名×4グループのワークショップを実施後、6府県の視覚障害者団体及び視覚障害を持つ医療従事者から研究協力の申し出を得た。また、全国向けの広報の結果、特別支援学校、病院、ハローワークから関心が高いことが、事後の調査から分かった。
結論
提案する4種の文字入力システムは、自立訓練、学習、就労場面の各場面において、中途視覚障害者の筆記行動に関する満足度を高め、有効に機能し得るという仮説を得た。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200930013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究では中途視覚障害者のニーズから、4種類の文字入力システム、すなわち、点字タイプライター式、手書き入力式の文字入力システムと、鍼灸等外来予診票入力システム、鍼灸等施術録入力システムを開発している。これらの完成によって、視覚障害リハビリテーション研究における書字の領域において、ノーテク、ローテク、ハイテクを結ぶ、いわゆる支援技術(AT)に系統的な道筋ができると考えられる。たとえば、点字盤、点字タイプライター、点字タイプライター式文字入力システム、PCという系統が形成される。
臨床的観点からの成果
 本研究では4種類の文字入力システムを開発している。中・高齢層中途視覚障害者を対象として、2種類の文字入力システムの長期試用と評価を実施した。その結果、自立訓練や専門的知識の習得を要する学習場面での筆記行動を促進するツールとして有効であるとのデータを得た。次に、鍼灸外来患者の予診票並びに施術録の文字認識と音声化に成功し、就労場面における2種類の文字入力システムの有効性が示唆された。これにより、上記4システムが文字入力に困難を有する中途視覚障害者に適合するとの仮説を得た。
ガイドライン等の開発
 特記事項なし
その他行政的観点からの成果
 本研究は、ICFにおける個人因子と環境因子の調整による中途視覚障害者の「活動」の向上、「社会参加」の促進を企図している。本研究で開発される4種類の文字入力システムによって、従来の方法では訓練効果の見込めないケースに対する具体的な支援の手段と方法が提案されるため、中途視覚障害者個々のニーズに見合う細やかな訓練プログラムが提供可能となる。したがって、訓練効果の底上げと訓練コストの引き下げへの貢献が期待される。
その他のインパクト
 2009年9月26日に開催された第18回視覚障害リハビリテーション研究発表大会でワークショップを開催したところ、2010年3月13日に徳島市で開催された視覚障害リハビリテーションセミナー'10に招待された。ここでのワークショップの様子とインタビューが翌日の徳島新聞に紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
伊藤和之他
中途視覚障害者の文字入力を支援する手書き式文字入力システム"Pen-Talker"の開発と評価
ヒューマンインタフェース学会論文誌 , 11 (4) , 391-400  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-