歯学教育及び歯科医師臨床研修において一貫して利用できるオンライン評価システムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
202303005A
報告書区分
総括
研究課題名
歯学教育及び歯科医師臨床研修において一貫して利用できるオンライン評価システムの開発に関する研究
課題番号
22AC1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
長島 正(大阪大学 歯学部附属歯学教育開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田口 則宏(鹿児島大学 学術研究院医歯学域歯学系 大学院医歯学総合研究科)
  • 長澤 敏行(北海道医療大学 歯学部)
  • 新田 浩(東京医科歯科大学 歯学部附属病院)
  • 大澤 銀子(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 秋葉 奈美(新潟大学 医歯学総合研究科生体歯科補綴学分野)
  • 和田 尚久(九州大学 歯学研究院)
  • 木内 貴弘(東京大学 医学部附属病院)
  • 野崎 剛徳(大阪大学 歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
11,277,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、初年度に開発したオンライン臨床研修評価システムを実際の臨床研修にて試用し、その機能および操作性を改善し、歯科医師臨床研修における標準的な評価システムとして使用できるようにすることを目的として実施した。
研究方法
前年度に開発された新評価システムを、研究代表者が所属している大阪大学歯学部附属病院の歯科医師臨床研修にて試用し、その評価を行った。さらに、システムを利用した研修歯科医および指導歯科医からの報告を合わせてシステム改修計画を立案し、評価システムを完成させた。
結果と考察
本システムを試用した結果、システム開発時には想定できなかった複数の不具合が報告された。それらは大きく、① 研修歯科医による操作上の間違いによるもの、② 臨床研修現場での運用をシステム開発時に反映できていないことに起因するものの2つに分類することができた。①に関しては、当該研修歯科医に操作方法・手順を改めて説明し、入力内容の修正を指示することで解決できた。一方②に関しては評価システムに登載しているマスタファイルの見直しによって改善すると思われたことから、その作業を実施した。
本システムの使用感について、研修歯科医および指導歯科医の双方への聞き取り調査を行った結果、研修歯科医からは、
•卒前に臨床実習にて使用してきた経験があったのでスムーズに利用を開始できた。
•スマートフォンにて操作できることから、自らの学習履歴が管理しやすく、紛失の心配がないのは有り難い。
など肯定的な意見が聞かれた一方、
•毎回、DEBUTにログインし、e-logbookに移動するのは面倒
•e-logbookで自分が経験した内容がなかなか見つからない
•一連の操作を一度に実施した場合、多くの項目を入力せねばならず、入力が煩わしく感じる
など、システム改善の要望も得ることができた。一方指導歯科医からは、
•複合型研修において、当該研修歯科医の研修状況がほぼリアルタイムに確認できるのは便利だと思う。
•DEBUTの到達目標毎にその項目に相当する研修実績が数字として表示されるので、客観的な評価が行いやすくなった。
•DEBUT側に当該研修歯科医の経験症例数が表示あれるのは良いが、画面構成がやや複雑で、特にスマートフォンでは見にくく感じることがある。
などの意見が出された。
本システムの試用によって生じた不具合の1つに「e-logbookに登録した研修実績が、DEBTUに正しく反映されない」という報告があった。本システムの根幹を揺るがす大きな不具合であると思われたが、調査をした結果、研修歯科医の操作ミスによるものである事が判明した。すなわち、DEBUT側では1年間の研修期間を複数のブロックに分け、ブロック毎に研修目標への到達を評価する仕様としており、e-logbookに記録された研修実績についてもブロックの期間毎に集計してDEBUTに表示される仕様となっている。しかし、今回相談のあったケースでは、研修歯科医が研修実績を登録する際、研修当日ではなく後日まとめて登録していたことから、実際の研修日と登録された研修日に齟齬が生じており、それがDEBUTに正しく研修実績が反映されない原因となっていた。研修日の修正を指示することで不具合は解消されたことから、研修歯科医に対して入力時に研修日が正しいことを改めて確認するよう周知することで対応した。
一方、研修歯科医、指導歯科医への聞き取りによって寄せられた要望のうち、「研修内容がなかなかみつからない」、「一連の操作を一度に実施した場合、多くの項目を入力せねばならず、入力が煩わしく感じる」については、前年度に検討した臨床実習と臨床研修で使用できる共通評価項目を一部見直すことで対応した。
本システムでは、個々の研修歯科医の臨床実習における学習効果を踏まえた臨床研修の評価が行えるようになったことに加え、指導歯科医からその有用性の高さが報告されている事から、今後、歯科医師臨床研修の標準的な評価システムとしての地位を確立できる可能性が高いと思われる。引き続き、研修歯科医および指導歯科医の側に立ったシステム改善を実施していきたいと考える。
結論
前年度に開発したオンライン臨床研修評価システムを臨床研修の現場にて試用し、研修歯科医および指導歯科医からの評価をもとに機能改善を行うことによって、今後、標準的な評価システムとなりうるシステムを開発することができた。

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202303005B
報告書区分
総合
研究課題名
歯学教育及び歯科医師臨床研修において一貫して利用できるオンライン評価システムの開発に関する研究
課題番号
22AC1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
長島 正(大阪大学 歯学部附属歯学教育開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田口 則宏(鹿児島大学 学術研究院医歯学域歯学系 大学院医歯学総合研究科)
  • 長澤 敏行(北海道医療大学 歯学部)
  • 新田 浩(東京医科歯科大学 歯学部附属病院)
  • 大澤 銀子(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 秋葉 奈美(新潟大学 医歯学総合研究科生体歯科補綴学分野)
  • 和田 尚久(九州大学 歯学研究院)
  • 木内 貴弘(東京大学 医学部附属病院)
  • 野崎 剛徳(大阪大学 歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和3年3月に歯科医師臨床研修制度が改正され、到達目標が大幅に見直されたことを受け、厚生労働科学研究費補助金事業の研究課題「シームレスな歯科医師養成に向けた歯科医師臨床研修の評価についての研究」(令和2~3年度)において、令和4年度から実施される新しい到達目標に対応した具体的な評価内容や評価方法が提示された。しかし、従来から用いられてきた歯科臨床研修評価システム(DEBUT)をはじめとする既存の評価システムでは新しい評価方法に対応できないことから、新システムの開発が求められている。そこで本研究では、前述の厚生労働科学研究費補助金事業の研究成果を反映しながら、ICTを活用した卒前・卒後で一貫した評価システムの開発を目的として実施した。
研究方法
全国の歯科大学、歯学部のシラバスによる臨床実習の実体調査および臨床実習担当者への照会によって臨床実習との連携を意識した臨床研修の学習項目を策定するとともに、これらの項目と臨床研修到達目標のC領域との関連性にを検討した。さらに、これらの結果にもとづきオンライン評価システムの開発した。
 次に、開発したオンライン評価システムを、令和5年度に実施されている臨床研修の現場にて試用し、研修歯科医、指導歯科医から使用した感想および改善点などを聴取した。それに基づいて、評価項目の見直し、システムの改善などを行い、臨床実習から臨床研修に一貫して活用できるオンライン評価システムを完成させた。
結果と考察
まず、各大学のシラバスから抽出した評価項目を診療内容ごとに分類し、さらに先行研究である「シームレスな歯科医師養成に向けた歯科医師臨床研修の評価についての研究」において評価の視点・観点として例示されている評価項目と照合することによって、153項目からなる共通項目を作成した。これら153項目を策定するにあたり、項目間の粒度の差が可能な限り小さくなるよう努めたが、様々な条件下にある多くの施設にて利用可能であることを優先させた結果、それらの差を埋めることは非常に困難であった。次に、これらの学習項目と歯科医師臨床研修の研修目標のC領域との関連付けを検討し、各々の研修目標に対して1〜26個の学習項目が関連付けられた一覧表を作成した。
 さらに、新しく開発する評価システムの要件について検討し、研修歯科医が日々経験する症例を記録する学習履歴管理システムと、研修目標への到達度を評価する臨床研修評価システムの2つのシステムとして開発することとした。引き続き、これらの要件を満たすために必要なシステムの仕様について検討し、それに従ったシステム開発を委託業者に依頼した。
 その後、令和5年6月から12月の7か月間、大阪大学歯学部附属病院にて実施されている歯科医師臨床研修にて本システムを試用し、研修歯科医および指導歯科医に聞き取り調査を行うことで要改善事項を抽出した。抽出された事項にしたがって、① 前年度策定した153項目からなる共通評価項目を見直して175項目に整理、②学習履歴管理システムと臨床研修評価システムの連携がさらに緊密かつ確実に行われるよう機能追加、の各項目について作業を行った。
 評価項目の見直しについては、本システムを利用した研修歯科医から「一連の治療操作を同日に実施した際に、同じ入力操作を何度も繰り返さねばならなく、操作が煩雑に感じる」との意見に対応するため、新しく項目を追加することで対応することとした。一方、本評価システムでは臨床研修評価システムが研修歯科医および指導歯科医のIDおよびパスワードなどを管理しているが、複合型研修にて研修歯科医の所属施設が変更となった場合にも問題なくデータが管理できるようマスタファイルの参照手順などを見直した。
本システムを利用した指導歯科医からその有用性の高さが報告されている事から、今後、歯科医師臨床研修の標準的な評価システムとしての地位を確立できる可能性が高いと思われる。
結論
29大学のシラバスによる臨床実習の実体調査および臨床実習担当者への照会によって臨床実習との連携を意識した臨床研修の学習項目を策定するとともに、これらの項目を採用した学習履歴管理システムを開発した。さらに学習履歴管理システムと連携して動作する臨床研修評価システムを開発することで、臨床実習から臨床研修に一貫して活用できるオンライン評価システムを開発した。さらに、本システムを臨床研修の現場にて試用し、研修歯科医および指導歯科医からの評価をもとに機能改善を行うことによって、今後、標準的な評価システムとなりうるシステムを開発することができた。

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202303005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
令和3年3月に見直された歯科医師臨床研修の到達目標に沿って評価が可能なオンライン評価システムを開発した。
これによって、全国の臨床研修施設にて統一された基準で歯科医師臨床研修における評価を、簡便かつ正確に行うための環境が構築できた。
臨床的観点からの成果
歯科医師臨床研修において、標準的に使用可能なオンライン評価システムを開発した。
これによって、研修歯科医の評価を効率良く正確に行えるようになり、優秀な歯科医師を養成する上で指導歯科医の負担軽減に大きく寄与することができた。
ガイドライン等の開発
先行研究である「シームレスな歯科医師養成に向けた歯科医師臨床研修の評価についての研究」で示されたガイドラインのに基づいた評価が可能なオンラインシステムをに構築した。
その他行政的観点からの成果
本システムの完成により、全国レベルでの歯科研修医の研修の状況を把握できるようになるだけでなく、歯科臨床研修制度の在り方、制度設計のために不可欠の重要な資料を得ることが可能であり、円滑な厚生労働行政実施のために非常に有効であると考えられる。
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
202303005Z