サブタイプ分類に基づく小児難聴診断、療育システムの構築

文献情報

文献番号
200930011A
報告書区分
総括
研究課題名
サブタイプ分類に基づく小児難聴診断、療育システムの構築
課題番号
H20-感覚・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 工 穣(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座 )
  • 橋本 繁成(国立大学法人信州大学 医学部附属病院先端予防医療センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、新生児聴覚スクリーニングの普及により、早期に難聴が発見されるようになってきたが、難聴の原因に関しては多くの場合不明であり、予後の推測や随伴症状の予測などは不可能であった。当研究室では全国33施設との共同研究により「All Japan」の研究体制で難聴の遺伝子解析を行っており、多くの難聴原因遺伝子を見出し報告するとともに、原因遺伝子変異の種類により、臨床像が異なることを明らかにしてきた。本研究では、従来の聴力検査に遺伝子診断を組み合わせることで、より正確に、より早期に聴力の程度を予測することおよび、サブタイプごとに適切なフォローアップや適切な介入法などの手法の確立を目的としている。
研究方法
昨年度までの全国33施設との共同研究から有用性が確かめられ、先進医療として実施している「先天性難聴の遺伝子診断」の結果のとりまとめを行うとともに、新規難聴原因の探索として、CDH23遺伝子変異の大規模解析および先天CMV感染症の解析を行った。また、高音急墜型の聴力を呈する難聴患者の臨床像のとりまとめを行うとともに、遺伝的背景に関する調査を行った。
結果と考察
高音急墜型の聴力を呈する難聴患者の臨床像および遺伝的背景に関する調査を行った結果、高音急墜型の聴力像を呈する難聴患者の割合は、難聴患者全体の約10%であることが明らかとなった。また、遺伝的背景としてはSLC26A4、CDH23遺伝子変異、ミトコンドリア1555A>G変異の患者が多いことが明らかとなった。また、新規難聴原因遺伝子候補としてCDH23遺伝子の大規模解析を行った。また、乾燥臍帯を用いた先天CMV感染症の検査を、難聴患者100例規模で行い頻度や臨床像のまとめを行った。また、先進医療として実施している「先天性難聴の遺伝子診断」に関して、とりまとめを行い、85例の実施で45%の診断率があり検査として有用であることが明らかになった。
結論
先進医療の実施においても共同研究時とほぼ同程度の有効性が認められた。また、先進医療と、本研究の成果である遺伝学的検査とCMV検査を組み合わせることで小児感音難聴の50?60%難聴の診断が可能になった。今後、難聴の遺伝子診断を従来の聴力検査と組み合わせて実施することで、難聴をサブタイプに分類することが可能となり、適切なフォローアップや適切な介入法などのオーダーメイド医療の実現につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-