人工内耳を装用した先天性高度感音難聴小児例の聴覚・言語能力の発達に関するエビデンスの確立

文献情報

文献番号
200930009A
報告書区分
総括
研究課題名
人工内耳を装用した先天性高度感音難聴小児例の聴覚・言語能力の発達に関するエビデンスの確立
課題番号
H20-感覚・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山岨 達也(東京大学医学部外科学専攻感覚・運動機能医学講座耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 土井勝美(大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学耳鼻咽喉科)
  • 熊川孝三(虎の門病院耳鼻咽喉科・聴覚センター)
  • 坂田英明(目白大学保健医療学部)
  • 伊藤 健(帝京大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 安達のどか(埼玉県立小児医療センター耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性高度感音難聴に対して人工内耳を施行した小児例の聴覚・言語能力の発達に影響する要因に関して本邦では未だ不明な点が多く、エビデンスの確立には至っていない。本研究では小児の人工内耳手術を多数行っている複数施設が参加して症例を多数集積し、本邦でのエビデンスの確立を目指す。
研究方法
対象は研究参加施設で人工内耳手術を受けた先天性高度感音難聴小児例である。難聴の原因、内耳奇形の有無、自閉的傾向・学習障害・多動傾向の有無、補聴器装用開始年齢、術前の言語・社会DQ、人工内耳装用開始年齢、語音聴取能、療育方法などと聴覚・言語能力の発達の相関を検討した。両側人工内耳については海外の先行研究を参考に小児での適応基準の提案を行い、術後の聴取能・言語能力の発達を検討すべく、症例集積を開始した。比較のため、対側補聴器装用時の聴取能に与える効果も検討した。
結果と考察
就学までに獲得する言語能力に影響を与える要因として、人工内耳装用開始年齢が早期ほ
ど成績が良く、遅くとも3歳までに施行することが推奨された。症例数は少ないが、コネ
キシン26遺伝子異常およびサイトメガロウイルス感染例の成績は良好であった。療育に
ついては口話法など聴覚入力を重視した教育が手話などの視覚入力併用教育に優る傾向が見られた。ただし2歳6カ月までに人工内耳を装用開始した場合は療育方法の影響は低下した。内耳奇形ではモンディニ奇形、前庭水管拡大症、蝸牛回転不全分離では良好な成績が得られたが、common cavityでは聴取能に限界があり、内耳道狭窄では成績不良との結果が得られた。重複障害例では聴取成績に個人差があったが、言語発達は全体に厳しい結果であった。両側人工内耳については倫理員会の承認得て施行を開始した。海外の報告を渉猟したところ、方向感、騒音下聴取能の改善が報告されていたが、成人や2回目の手術が1回目術後から数年遅れた場合には有効性に欠くとの報告も出ており、4歳未満の症例に初回手術半年以内に対側の手術を行う基準を提唱した。対側補聴併用は静寂下、騒音下のいずれにおいても人工内耳単独の聴取能を向上させなかった。
結論
良好な聴取・言語の発達のためには、年齢、難聴の原因、内耳奇形の程度、重複障害の有無、療育方法が影響することが明らかとなった。人工内耳対側での補聴器装用による聴取能改善効果はあまりなく、両側人工内耳装用での結果が待たれる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-