文献情報
文献番号
                      200930007A
                  報告書区分
                      総括
                  研究課題名
                      正常眼圧緑内障の病態解明と治療薬の開発
                  研究課題名(英字)
                      -
                  課題番号
                      H20-感覚・一般-003
                  研究年度
                      平成21(2009)年度
                  研究代表者(所属機関)
                      田中 光一(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院疾患生命科学研究部)
                  研究分担者(所属機関)
                      - 原田 高幸(東京都神経科学総合研究所)
 - 布施 昇男(東北大学大学院医学研究科)
 
研究区分
                      厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
                  研究開始年度
                      平成20(2008)年度
                  研究終了予定年度
                      平成22(2010)年度
                  研究費
                      14,000,000円
                  研究者交替、所属機関変更
                      -
                  研究報告書(概要版)
研究目的
            緑内障は40歳以上では約5%が潜在的に罹患し、その約70%は正常眼圧緑内障であるが、病態は不明である。我々は、グルタミン酸トランスポーター GLAST, EAAC1欠損マウスが、ヒト正常眼圧緑内障のモデル動物であることを報告した。本研究では、正常眼圧緑内障患者のグルタミン酸トランスポーター遺伝子の詳細な解析を行い新しい診断法を確立するとともに、モデル動物を用いて正常眼圧緑内障の病態解明と新規治療薬の開発を行なう。
      研究方法
            患者DNAを用い、GLAST, EAAC1の全てのエクソンをPCRで増幅し、塩基配列を決定し、患者特異的遺伝子変異の有無を検討した。また、神経保護薬の候補を、モデル動物に投与し、網膜神経節細胞の細胞数を定量することにより、神経保護効果を検討した。さらに、ヒトGLASTを安定に発現した細胞株を作成し、グルタミン酸取り込み活性を測定することにより、GLASTの活性促進化合物を検索した。
      結果と考察
            患者標本439例、正常対照298例について、GLASTの全てのエクソンの塩基配列の解析を行い、緑内障患者のみに見られる変異を4個見つけた。この4個の変異は、緑内障患者の約3%に見られ、診断に応用可能である。GLAST欠損マウスにおける網膜神経節細胞の変性にASK1が関与することを明らかにした。さらに、作用機序の異なる4種類の化合物が、GLAST欠損マウスにおける網膜神経節細胞の変性を抑制することを発見した。これらの化合物は、神経保護作用を持つ新しい緑内障の治療薬のリード化合物になる。また、ヒトGLASTを安定に発現している細胞株を用い、high throughput screeningが可能なアッセイ系を確立し、1万種の化合物のスクリーニングを行った。
      結論
            緑内障患者にのみ見られるGLASTの変異を4個見つけた。4個の変異は、緑内障の診断に用いることが可能である。今後、これら変異のGLAST活性に与える影響を解析し、緑内障の病態解明を行う。抗酸化ストレス、抗興奮毒性、GLAST活性化など、作用機序の異なる4つの化合物が、モデル動物の網膜神経節細胞死を抑制することを見つけた。水素水に関しては、臨床試験への移行を検討する。GLASTの活性を促進する化合物は新しい神経保護薬になるので、その化合物を検索中である。
      公開日・更新日
公開日
          2010-05-25
        更新日
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