出産育児一時金の見直しを踏まえた出産費用の分析並びに産科医療機関等の適切な選択に資する情報提供の実施及び効果検証のための研究

文献情報

文献番号
202301023A
報告書区分
総括
研究課題名
出産育児一時金の見直しを踏まえた出産費用の分析並びに産科医療機関等の適切な選択に資する情報提供の実施及び効果検証のための研究
課題番号
23AA2007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田倉 智之(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 社会保障審議会医療保険部会における議論の整理や全世代型社会保障構築会議の報告書に基づき、出産育児一時金の増額とともに詳細な出産費用の分析や「見える化」の効果検証を行う必要性が謳われていた。以上を踏まえ、出産関連の見える化の在り方とその方法の検討を行い、出産育児一時金の制度や少子化対策等の周辺政策の将来の議論に資することを目的とした。
研究方法
研究(1):見える化の内容・方法の検討
 出産に関わる「見える化」については、令和5年度前半に6回程の班会議を開催して、内容および方法、要件について検討を行った。その結果は、令和5年7月に中間報告として取りまとめを行った。その成果は、厚生労働省のサイトの構築における基本仕様となった。

研究(2):妊産婦を対象とした意識調査
 出産関連の情報収集の動向について、妊産婦を対象に意識調査を実施した。本調査は、先行研究の調査項目(添付資料1)に基づき、令和5年末から準備を始め、令和6年3月にWEB方式で調査を行った。目標サンプル数は、妊婦および出産経験者(1年未満)で2千件とした。

研究(3):分娩施設の情報提供に関わる調査
 出産関連の情報提供の動向について、分娩施設を対象に意識調査を実施した。本調査は、施設機能、出産実績、情報提供の実態と予定、運営上の課題等の調査項目(添付資料2)から構成された。令和5年中ごろから準備を始め、令和6年3月に郵送方式で調査を行った。調査サンプル数は、分娩実績のある2百件とした。

研究(4):出産費用の新たな算定方法の検討
 出産費用の分析に向けた事前研究として、既存の公表統計データ等を活用した分析可能性について検討を進めた。検討にあたり、各種統計資料をサーベイした。この議論の結果、マクロの医療経済学的な視点と平準的な医療資源配分の概念から、1件の出産費用を算出する基礎的な分析アプローチを構成した。
結果と考察
研究(1):見える化の内容・方法の検討
 「見える化」の項目は、「分娩施設の概要」「助産ケア」「付帯サービス」「直接支払制度の請求書データからの費用等の概要」「その他」から構成された。なお、新たに設ける「見える化」のホームページ(厚生労働省のHP)に載せる項目やその内容の検討にあたり、各分娩施設が自施設のHP(各医療機関のHP)に載せる項目との棲み分けと機能連携を念頭に置くことにし、その在り方についても議論も進めた。その研究成果を踏まえ、厚生労働省の「出産なび」サイトが立ち上がった。今後は、妊婦に対する適切かつ効果的な情報提供の在り方、および分娩施設の情報提供における課題の整理とともに、サイトのさらなる発展的な運用について議論を進める予定である。

研究(2)および(3):妊産婦を対象とした意識調査と分娩施設の情報提供に関わる調査
 本研究は、見える化サイトの評価検証の手法の検討の一環で、妊婦と分娩施設に対する調査を行った。妊産婦に対する調査の結果、出産育児一時金の増額前の時期と比べて、出産費用関連の情報への関心や重要度がやや低下する傾向にあった。さらに出産の県外流出は、低減する傾向が認められた。しかし出産費用を重要と考える妊婦は、低年収帯を中心に多く存在した。また心理的ケアは、それを重要と考える妊婦の県外流出のオッズ比(0.63,95%CI:0.45-0.86)は小さかった。自然分娩等が減少し無痛分娩等が増加する中、分娩施設の情報提供の媒体は、インターネットが中心の中、ネット環境の拡大等の社会の変遷を背景に、SNS(37%)等を含め多様化していた。分娩の料金情報の提供が6割、その解説が約4割であったが、今後、見える化サイトの開始でどのように変化をしていくのかが注目された。また、提供コスト/体制(26%)等の施設経営上の課題も散見していることが明らかとなった。次年度は、このような点も配慮しつつ、評価手法についてさらに検討を行う予定である。

研究(4):出産費用の新たな算定方法の検討
 出産費用の新たな算定方法の検討の結果、我が国の分娩関連の医療資源の総枠(全体費用)について最初に整理を行い、その全体の医療資源を正常分娩1件あたりの資源消費(費用単価)に分解(配賦・按分)する方式を整理した。このアプローチは、従来のボトムアップ方式のデータ集約による算定が困難な場合における次策に位置づけられるが、異なるアプローチによる短所の相互補完や検証力の向上も期待される。なお、結果の不確実性への対応は、データサイエンスやシミュレーション(モンテカルロ法、確率感度分析)で対応する方針とする。
結論
 本研究の成果を踏まえ、厚生労働省の「出産なび」サイトが立ち上がった。その見える化サイトの評価検証に応用予定の一部の調査方法の具現性を確認した。出産費用の新たな算定方法の整理を行い、利用情報の検討とともに基本的デザインを設定した。

公開日・更新日

公開日
2024-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202301023Z