ポストコロナ時代における人口動態と社会変化の見通しに資する研究

文献情報

文献番号
202301021A
報告書区分
総括
研究課題名
ポストコロナ時代における人口動態と社会変化の見通しに資する研究
課題番号
23AA2005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2020年から顕在化した新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワークの急速に浸透など、人々の生活様式はコロナ前から大きく変化するとともに、人口動態にも顕著な影響が表れている。日本において、出生率の一段の低下、平均寿命の意図しない変化、外国人住民数の増加の停滞、東京圏一極集中の鈍化という、いずれもこれまでの趨勢からは予測不能な変化が観察されており、将来の全国および地域別の人口動向はいっそう不透明性を増している。こうした状況下において精度の高い将来人口・世帯推計を実施するためには、コロナ禍がもたらした短期的な人口動態の変化について、その背後にある社会的要因を含めて的確に把握することが不可欠である。同時に、当初は短期的と考えられた人口動態の変化が長期化することも想定され、ポストコロナ期に移行したとしても、コロナ禍に定着した「新しい生活様式」のもとで不可逆的な傾向となる可能性も否定できない。本研究では、コロナ禍が人口動態にもたらした影響を的確に把握するとともに、ポストコロナ時代における社会変化を見据えた将来人口・世帯数の推計へと還元させていくことを主たる目的とする。
研究方法
本研究は以下の3領域に分けて進めた。
①新型コロナウイルスの人口動態への影響に関する研究
②コロナ禍およびコロナ後を見据えた将来人口・世帯推計モデルの開発
③コロナの影響を踏まえた将来推計の政策的シミュレーションへの応用に関する研究
結果と考察
(1) 令和5年地域推計と平成30年地域推計の2045年の都道府県別推計結果の差について要因分解を行った。分析の結果、都道府県ごとの推計値の差の分布に最も大きく影響しているのは人口移動仮定の差であった一方、出生仮定の差と死亡仮定の差による変化の都道府県間較差は小さいこと、推計値と実績値が異なるほど基準人口の差による変化も大きくなりやすいことが明らかになった。
(2) コロナ禍が雇用および結婚・出産に与えた影響とその方法論に関する検討を行った。推計によって、新型コロナの影響による2020〜2022年の初婚数・出生数の落ち込みは後続する出生数に影響し、2040年頃までそのインパクトが残ることを明らかにした。また、雇用・労働をめぐる不平等について、その測定単位を個人・組織のどちらに置くかによって、不平等の原因・趨勢についての結論が変わりうることを示した。
(3) 妻30歳台の核家族夫婦を対象に、夫婦の働き方と子ども数について国勢調査を用いた集計を全国および都道府県レベルで実施し、特に岐阜県に焦点を当てて考察した。岐阜県において最も平均子ども数が多かったのは夫正規・妻家族従業者・家庭内職者であったほか、夫が役員や自営業主だと平均子ども数が多い傾向が見られた一方、夫正規・妻正規の平均子ども数は相対的に少なかった。
(4) 政府統計データから多地域レスリー行列を構築し、都道府県間の移動を含む生存率と都道府県別出生率の年齢別の人口減少への影響と移民の人口規模への定量的評価を行った。分析の結果、都市部から出生率の高い地域への移動が人口増加に影響し、特に30歳未満で顕著である一方、都市部の出生率は30歳以上で高い感度を示した。また、外国人の流入に関しては沖縄県に20〜24歳の女性が移住することが最も効果的であった一方、都市部は外国人の流入による人口規模への影響は小さい傾向にあった。
(5) 堀口(2022)による死亡率モデルは、女性の20〜39歳で対数死亡率の推計誤差が大きいなどの課題があったため、新たなモデルを提案した。
結論
(1) 地域推計の都道府県別推計結果の差の要因が明らかになったことで、社人研にとっては次回の推計における各仮定設定のための参考材料となり、地方自治体にとっては「地方人口ビジョン」等における推計値の改訂のための基礎的情報になる。
(2) 新型コロナウイルス感染症の拡大は、その社会的なインパクトの大きさゆえ、社会科学で従来用いられてきた分析手法ではカバーできない領域があることが明らかになった。
(3) 岐阜県の分析結果は、労働時間を自らコントロールする余地などの柔軟性が子どもを持ちやすい環境を生んでいることを示唆しており、ホワイトカラー以外においても柔軟な働き方を支援する必要があるといえる。
(4) 少子化対策は地域と年齢によって移住と出生率の増加の重点を変える事がより効果を発揮する一方、移民政策については出生率の高い年齢と地域に同年代の人材を移住させることが効果的である。少子化対策は移民政策と切り離すことが出来ない。
(5) 新たな死亡率モデルは、将来の高齢者の人口数の推計など、自治体の政策立案に有用なモデルである。また、日本と同様に高齢死亡率改善が進展している他国にも応用可能であり、さらなるモデルの発展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2024-07-01
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収支報告書

文献番号
202301021Z