市町村における包括的支援体制の体制整備の評価枠組みの構築のための研究

文献情報

文献番号
202301018A
報告書区分
総括
研究課題名
市町村における包括的支援体制の体制整備の評価枠組みの構築のための研究
課題番号
23AA2002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
永田 祐(学校法人同志社 同志社大学 社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 潤子(武蔵野大学 人間科学部社会福祉学科)
  • 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 黒川 文子(愛知淑徳大学 福祉貢献学部)
  • 榊原 美樹(明治学院大学 社会学部)
  • 川村 岳人(立教大学 コミュニティ福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,142,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域住民の複雑化・複合化する支援ニーズに対応するため、平成29年の社会福祉法改正においては、市町村が地域生活課題に対して地域住民等及び支援関係機関が連携して対応する「包括的な支援体制の整備」に努めることとされ、令和2年の同法改正においては、包括的な支援体制の整備に向けて「重層的支援体制整備事業」が実施できることとなっている。こうした体制の整備に向けて、研究代表者は、包括的な支援体制の構築においては一定の決まった形は存在せず、地域の多様な主体が協議や対話を通じて、考え方等を共有するプロセスを重ね、それぞれの状況に応じた体制を構築していくことが必要であることを明らかにしてきた(永田祐「包括的な支援体制のガバナンス 実践と政策をつなぐ市町村福祉行政の展開」有斐閣、2021年.)。
しかしながら、市町村によっては、包括的な支援体制の必要性や、体制整備に取り組む目標や成果に関する認識の共有が関係者間で十分に行われず、体制整備に向けた取組が進んでいない場合も少なくない。各市町村において、包括的な支援体制の整備が進むためには、連携体制を構築するプロセスと、各分野の支援機関等が連携して支援にあたることによる効果、支援機関等と地域住民等が連携した取組を行うことによる効果について見える化し、各市町村が自ら体制整備に向けた取組の評価及び改善に取り組めるようにすることが求められている。
 以上のことを踏まえ、本研究は、多様な主体の連携体制構築のプロセスとその効果に着目し、下記の内容について明らかにすることを目的として実施する。
(1) 複数の自治体における包括的な支援体制構築に向けた活動や事業等に伴走し、①連携体制の構築にむけて必要な取組みとそのプロセス及び②人と地域の変化の実態を明らかにすること。
(2) (1)を踏まえ、包括的な支援体制の体制整備の内容と効果に関する評価の指標及び自治体における活用プログラムを開発すること。
研究方法
 指標班では、学識経験者7名、実践者・政策担当者8名によるデルファイ変法により評価指標を開発した。まず、包括的支援体制や重層的体制支援整備事業に係る要綱等に基づいて評価指標候補を作成した。次に、2回の有識者グループインタビュー及び研究会でのエキスパートレビューを経て、58項目からなる評価指標を抽出した。さらに、項目適切性評価調査を実施して指標の内容妥当性を調査した。
 自治体伴走班では、アクションリサーチの方法を採用し、対象自治体の実情に応じた評価チームを組成し、①滋賀県高島市、②福井県坂井市、③茨城県東海村、④愛知県豊田市、⑤東京都国分寺市の5自治体で、評価活動を実施した。①と②においては、プログラム評価の考え方を基軸とし、評価可能性アセスメントを行い、参加型評価ワークショップを展開する中で、アウトカムの言語化と現行の事業との紐付けを行った。③においては、庁内関係課と関係機関から構成される重層的支援体制整備事業推進ワーキング委員会という場を活用し、2回の評価ワークショップを行い、共通目標案を集約した。④においては、重層事業の支援関係機関に対してインタビュー調査を行い、包括的な相談支援の体制が想定通りに機能しているかを検証した。⑤については、評価プロジェクトチームを組成し、評価の枠組みづくりに着手するとともに、指標班で作成した評価指標案を活用して、重層的支援体制整備事業の現状についての自己評価を実施した。
結果と考察
 指標班では、41項目(重層評価25、包括評価10、連携評価6)からなる評価指標案を作成した。伴走班では、各対象地域において、評価活動を実施した。高島市、坂井市と東海村では、それぞれの自治体の状況に応じてアウトカム、行動基準の言語化や事業目標の設定と共有化を行った。豊田市では、調査の結果、①福祉総合相談課の設置、②福祉の相談窓口の開設、③コミュニティソーシャルワーカーの配置という新たな施策の運用上の課題が示唆され、今後質問紙調査でさらにその点を検証し、改善に向けた取り組みを検討することになった。国分寺市では、指標班で開発された評価指標案を用いて評価活動における指標の活用方法を検討した。以上の通り、伴走班では各自治体の実情に合わせて評価伴走を行うことで、多様な課題に応じた評価活動の活用を試行した。
結論
 指標班で開発した評価指標については、全国の重層的支援体制整備事業実施自治体を対象に調査を実施、その妥当性の検証を行うとともに、その活用方法を検討していく必要がある。伴走班のうち、評価設問が明確になっている高島市と坂井市、東海村および豊田市では評価枠組みに基づいたデータの収集を通じて評価を継続する。国分寺市では、指標班で開発した評価指標を評価活動で活用することの有効性が示唆されており、評価指標の活用方法を指標班と連携して実施していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202301018Z