脈絡膜上経網膜電気刺激(STS)法による人工視覚システムの臨床応用

文献情報

文献番号
200930001A
報告書区分
総括
研究課題名
脈絡膜上経網膜電気刺激(STS)法による人工視覚システムの臨床応用
課題番号
H19-感覚・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
不二門 尚(大阪大学大学院 医学系研究科 病態制御医学 感覚機能形成学)
研究分担者(所属機関)
  • 澤井 元(大阪大学大学院 医学系研究科 生理学)
  • 太田 淳(奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学)
  • 大路 正人(滋賀医科大学医学部 眼科学)
  • 平形 明人(杏林大学医学部 眼科学)
  • 近藤 峰生(名古屋大学大学院 医学系研究科 眼科学)
  • 八木 哲也(大阪大学大学院 工学研究科 電子工学)
  • 小澤 素生(株式会社 NIDEK )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有効な治療法のない網膜変性疾患に対して、我々は本邦独自の(STS方式)人工網膜を開発し、その臨床応用を目指している。当該年度の目標は、現在開発中の2次試作機の長期の安全性・有効性の確認、実用機の完成、刺激パラメータの最適化、中期臨床試験の前臨床試験、および、高解像度の刺激システムの継続開発である。
研究方法
1)術式開発:献体を用いて人工網膜トータルシステムの埋め込み手技を検討した。
2)電極埋設の長期安全性試験: 弾丸型電極の長期埋植における安全性を評価するため、有色家兎9眼に対して3ヶ月間 週1回6時間の連続通電を行い、網膜組織の評価を行った。
3) STS人工視覚の実用機の開発:実用化を目指したSTS方式の人工視覚システムの亜急性臨床試験モデルを開発した。
4)Optical Imagingによる網膜電気刺激の機能評価:2次試作機で用いるSTS電極2極(電極間距離1400um)を用いて、網膜が興奮する範囲を検討した。
5)人工網膜トータルシステムの安全性・有効性確認:ビーグル犬3匹に対して人工網膜トータルシステムを埋め込み、3ヶ月間経過を観察し安全性、有効性を確認した。
結果と考察
1)デバイスの埋め込み位置、導線の長さが決定された。また電極を安全にカバーする保護装置、電極および導線を導出するトロッカーおよびリード線を開発した。
2)残存強膜厚が薄い電極で網膜の変性が観察されたが、残存強膜厚が80um以上であれば、電流値0.7mA,パルス幅1.0secで長期刺激に対しても網膜に対する安全性が示された。
3)亜急性臨床試験モデルに関して、体外から機能チェックできるシステムを確立した。
4)STSによる2極電極で刺激される網膜部位が、機能画像で明確に分離できることが示され、ノイズの多い環境でも、電極の機能評価に用いることができる可能性が示された。
5) 犬に3ヶ月間トータルシステムは安全に埋め込まれ、各電極は3月後にも機能することが示された。

結論
STS方式による人工網膜の体内装置が完成し、犬実験で中期的な安全性、有効性が示された。献体を用いた検討で、デバイスを埋め込む位置および導線の長さなどが確立し、中期の臨床試験を行う準備ができた。

公開日・更新日

公開日
2010-09-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200930001B
報告書区分
総合
研究課題名
脈絡膜上経網膜電気刺激(STS)法による人工視覚システムの臨床応用
課題番号
H19-感覚・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
不二門 尚(大阪大学大学院 医学系研究科 病態制御医学 感覚機能形成学)
研究分担者(所属機関)
  • 澤井 元(大阪大学大学院 医学系研究科 生理学)
  • 太田 淳(奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学)
  • 大路 正人(滋賀医科大学医学部 眼科学)
  • 平形 明人(杏林大学医学部 眼科学)
  • 近藤 峰生(名古屋大学大学院 医学系研究科 眼科学)
  • 八木 哲也(大阪大学大学院 工学研究科 電子工学)
  • 小澤 素生(株式会社 NIDEK )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有効な治療法のない網膜変性疾患に対して、我々は本邦独自の脈絡膜上ー経網膜刺激方式(STS方式)による人工網膜を開発し、その臨床応用を目指している。目標は、完全埋植型STSシステムの長期の安全性・有効性の確認、実用機の完成、刺激パラメータの最適化、中期臨床試験の前臨床試験、および、高解像度の刺激システムの継続開発である。
研究方法
1) 術式開発:献体を用いて最適の術式を検討した。
2) 電極埋設の長期安全性試験: 弾丸型電極の長期埋植における安全性を評価するため、有色家兎9眼に 対して3ヶ月間 週1回6時間の連続通電を行い、網膜組織の評価を行った。
3) STS人工視覚の実用機の開発 、実用化を目指したSTS方式の人工視覚システムの亜急性臨床試験モデルを開発した。
4)Optical Imagingによる網膜電気刺激の機能評価 2次試作機で用いるSTS電極2極(電極間距離1400um)を用いて、網膜が興奮する範囲を検討した。
5)人工網膜トータルシステムの安全性・有効性確認:ビーグル犬3匹に対して人工網膜トータルシステムを埋め込み、3ヶ月間経過を観察し安全性、有効性を確認した。
結果と考察
1)デバイスの埋め込み位置、導線の長さが決定された。また電極を安全にカバーする保護装置、電極および導線を導出するトロッカーおよびリード線を開発した。
2)残存強膜厚が薄い電極で網膜の変性が観察されたが、残存強膜厚が80um以上であれば、電流値0.7mA,パルス幅1.0secで長期刺激に対しても網膜に対する安全性が示された。
3)亜急性臨床試験モデルに関して、対外から機能チェックできるシステムを確立した。
4)STSによる2極電極で刺激される網膜部位が、機能画像で明確に分離できることが示され、ノイズの多い環境でも、電極の機能評価に用いることができる可能性が示された。
5) 犬に3ヶ月間トータルシステムは安全に埋め込まれ、各電極は3月後にも機能することが示された。
結論
本邦独自のSTS方式による人工網膜の体内装置が完成し、犬実験で中期的な安全性、有効性が示された。献体を用いた検討で、デバイスを埋め込む位置および導線の長さなどが確立し、中期の臨床試験を行う準備ができた。

公開日・更新日

公開日
2010-09-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200930001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
視細胞変性の中型モデル動物として、光障害モデルと遺伝子改変モデルの2種類の家兎モデルを世界で初めて作成し、広範囲に視細胞が障害された部位にSTS法の刺激電極を埋植すると、大脳皮質で電気的誘発電位(EEP)が測定できることが示された。これは今後再生医療の評価などにも使える有益なモデルである。網膜における機能イメージング法を確立し、電極の2点弁別能の評価法を確立した。これは、ハムノイズの多い条件でも測定できる点で、人工網膜の機能評価に有効と考えられる。
臨床的観点からの成果
人工網膜トータルシステムの安全性・有効性確認のため、ビーグル犬3匹に対して人工網膜トータルシステムを埋め込み、3ヶ月間経過を観察し安全性、有効性を確認した。これは、中期の臨床試験を行うために重要なステップである。また、献体を用いた術式の確認を行った。この2点をクリアすることにより、臨床試験を行う準備が整った。
ガイドライン等の開発
日本発のBMI開発において、貴重な第一歩となった。
その他行政的観点からの成果
他に治療法のない網膜色素変性症の患者に対して、希望を持たせる結果になった。
その他のインパクト
わが国独自の人工網膜の臨床試験にあと一歩というニュースが、2009年12月23日のNHKのNews 7で取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujikado T, Morimoto T, Kanda H,et al
Evaluation of Phosphenes Elicited by Extraocular Stimulation in Normals and by Suprachoroidal-Transretinal Stimulation in Patients with Retinitis Pigmentosa
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol , 245 , 1411-1419  (2007)
原著論文2
Nakauchi K, Fujikado T, Kanda H,et al
Threshold suprachoroidal–transretinal stimulation current resulting in retinal damage in rabbits
J. Neural Eng. , 4 , 50-57  (2007)
原著論文3
Kitaguchi Y, Bessho K, Yamaguchi T, et al
In Vivo Measurements of Cone Photoreceptor Spacing in Myopic Eyes from Images Obtained by Adaptive Optics Fundus Camera.
Jpn J Ophthalmol , 51 , 456-461  (2007)
原著論文4
Morimoto T, Fujikado T, Choi JS, et al
Transcorneal Electrical Stimulation Promotes the Survival of Photoreceptors and Preserves Retinal Function in Royal College of Surgeons Rats.
Invest Ophthalmol Vis Sci , 48 , 4725-4732  (2007)
原著論文5
Tokuda T, Asano R, Sugitani S, et al
In vivo Stimulation on Rabbit Retina using CMOS LSI-based Multi-Chip Flexible Stimulator for Retinal Prosthesis.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. , 1 , 5790-5793  (2007)
原著論文6
Kitaguchi Y, Fujikado T, Bessho K, et al
Adaptive Optics Fundus Camera to Examine Localized Changes in Photoreceptor Layer of Fovea
Ophthalmology , 115 , 1771-1777  (2008)
原著論文7
Sato T, Fujikado T, Lee TS, et al
Direct Effect of Electrical Stimulation on Induction of Brain-derived Neurotrophic Factor from Cultured Retinal Mueller Cells.
Invest Ophthalmol Vis Sci , 49 , 4641-4646  (2008)
原著論文8
Sato T, Fujikado T, Morimoto T,et al
Effect of electrical stimulation on IGF-1 transcription by L-type calcium channels in cultured retinal Müller cells.
Jpn J Ophthalmol , 52 , 217-223  (2008)
原著論文9
Sato T, Lee TS, Fujikado T,et al
Induction of fibroblast growth factor-2 by electrical stimulation in cultured retinal Mueller cells.
Neuroreport. , 19 , 1617-1621  (2008)
原著論文10
Tokuda T, Asano R, Hiyama K, et al
 Multi-finger structure and pulsed-powering operation scheme for CMOS LSI-based flexible stimulator for retinal prosthesis.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. , 1 , 4212-4215  (2008)
原著論文11
Kitaguchi Y, Fujikado T, Kusaka S,et al
Imaging of Titanium:Sapphire Laser Retinal Injury by Adaptive Optics Fundus Imaging and Fourier-Domain Optical Coherence Tomography.
Am J Ophthalmol , 148 , 97-104  (2008)
原著論文12
Kondo M, Sakai T, Komeima K,et al
Generation of a transgenic rabbit model of retinal degeneration.
Invest Ophthalmol Vis Sci , 50 , 1371-1377  (2009)
原著論文13
Tokuda T, Takeuchi Y, Noda T,et al
Light-controlled retinal stimulation on rabbit using CMOS-based flexible multi-chip stimulator.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc , 1 , 646-649  (2009)
原著論文14
Nishida K, Kamei M, Kondo M,et al
Efficacy of suprachoroidal-transretinal stimulation in a rabbit model of retinal degeneration.
Invest Ophthalmol Vis Sci. , 51 , 2263-2268  (2010)
原著論文15
Morimoto T, Miyoshi T, Sawai H,et al
Optimal parameters of transcorneal electrical stimulation (TES) to be neuroprotective of axotomized RGCs in adult rats.
Exp Eye Res , 90 , 285-291  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-05-23