保険収載されている医療技術の再評価方法を策定するための研究

文献情報

文献番号
202301014A
報告書区分
総括
研究課題名
保険収載されている医療技術の再評価方法を策定するための研究
課題番号
22AA2005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 小野 孝二(東京医療保健大学 看護学部 大学院看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,206,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、既存の保険収載医療技術の再評価方法を策定することである。現在、日本では2年ごとに診療報酬改定が行われ、新規医療技術の評価と既存医療技術の再評価が実施されるが、既存技術の再評価は十分に行われていない。この問題に対処するため、本研究では再評価のための具体的かつ中立的な方法を検討した。
研究方法
① 海外ヒアリング
フランスや韓国等の関係者にヒアリングを行い、各国の医療技術再評価の現状と課題を把握した。
② NDBオープンデータの分析
厚生労働省が公開しているNDBオープンデータを用いて、日本における診療行為の実施状況を分析し、算定回数が極めて少ない医療技術を抽出した。
③ ヒアリング
日本臨床衛生検査技師会などの職能団体にヒアリングを行い、臨床現場での技術の利用状況やその有用性について意見を集めた。
④ NDBの第三者提供
NDBオープンデータの限界を補完するため、特別抽出データの分析を行い、より精緻な診療行為の実態を把握した。
結果と考察
① 海外ヒアリング
フランスでは、医療材料の保険償還期間が3〜5年に定められており、企業はデータを提出して再評価を受ける必要がある。しかし、包括的な医療技術の再評価制度は確立されておらず、新技術導入時に既存技術の削除や保険給付範囲の縮小が行われることがあるのみであることがわかった。これは、日本の状況と類似しており、定期的かつ体系的な再評価の仕組みが不足していることが共通の課題となっている。また、再評価に使用するエビデンスの蓄積が課題となっている点も確認された。
韓国では、RBRVS(Resource Based Relative Value Scale)を用いた詳細な技術評価が2001年から行われている。RBRVSは、医療資源消費を定量化し、技術提供に伴うコストを評価するものである。新しい医療技術が保険適用を受ける際にはNECA(National Evidence-based Healthcare Collaborating Agency)による厳格な審査が行われ、既存技術との比較が行われる。しかし、新技術の採用に伴う既存技術の廃止は進んでおらず、医師団体の反対がその要因の1つとなっているとのことであった。

② NDBオープンデータの分析
NDBオープンデータの分析では、診療行為マスターに存在するが実際には算定されていない技術が抽出できた。例えば、第8回NDBオープンデータ(令和2年4月~令和3年3月診療分)では区分番号B(医学管理等)の293件中22項目が算定されておらず、区分番号D(検査)の1556件中12項目が算定されていないことが明らかになった。これらの技術は、現場での利用が少ないことを示していると考えられた。

③ ヒアリング
関係団体へのヒアリングでは、日本臨床衛生検査技師会などから、当該医療技術の使用が減少している理由として、新しい検査法の開発や、製造販売終了が挙げられた。また、技術の利用状況や有用性に関する詳細なデータの収集が重要であることも確認された。

④ NDBの第三者提供
NDB特別抽出データの分析により、NDBオープンデータより精緻な医療技術の算定状況が明らかになった。例えば、区分番号K(手術)では2839件中153項目が算定されておらず、区分番号E(画像診断)では248件中35項目が算定されていないことが確認された。これらのデータは、技術の再評価における重要な指標となり得るものであり、今後の評価基準の策定に役立つものであると考えられた。
結論
本研究を通じて、海外の医療技術再評価の動向と日本における算定回数が極めて少ない項目の抽出を行った。次回改定以降に、十分な検討の上、削除される医療技術項目があることに期待したい。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202301014B
報告書区分
総合
研究課題名
保険収載されている医療技術の再評価方法を策定するための研究
課題番号
22AA2005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
隔年の診療報酬改定では、医療技術評価分科会にて新規医療技術の評価及び既存医療技術の再評価が行われるが、既存技術の再評価は十分に実施されていない。本研究の目的は、既存医療技術の再評価手法を中立的かつ専門的な観点から検討することである。
研究方法
本研究では下記4点から医療技術の再評価にかかる分析・情報収集・検証を行った。
① 分科会での再評価
過去の医療技術評価分科会で行った医療技術の再評価について検証を行った。 

② NDBデータの分析
厚生労働省は、平成26年度診療分以降の診療行為等の情報をNDBオープンデータとして公開している。NDBには紙レセプト算定件数は含まれず、NDBオープンデータには全額公費の情報が除外されている。本研究では第1回から第8回までのNDBオープンデータと診療行為マスターを用いて、算定されなかった医科診療行為を検索した。
さらに、NDBオープンデータではDPCレセプトの包括が含まれる一方、全額公費レセプトの算定回数は含まれておらず、過剰・過小評価になっている可能性がある。そこで、NDB特別抽出データの提供申請を行い、平成30年度から令和3年度診療分の入院・外来合わせて年度ごとに10件未満の診療行為を改めて抽出した。また、NDBオープンデータとの差分も明らかにした。

③ ヒアリング
②の結果をもとに、職能団体である日本診療放射線技師会や日本臨床衛生検査技師会にヒアリングを行った。

④ 海外ヒアリング
フランス、韓国等の関係者にヒアリングを行い、各国の医療技術再評価の現状と課題を把握した。
結果と考察
① 分科会での再評価
平成16年度改定から平成26年度改定までの間に医療技術評価分科会で議論された内容を整理し、再評価の実施状況を確認した。

②  NDBデータの分析
診療行為マスターに存在する診療行為がNDBオープンデータでは算定されなかったのが多数確認された。たとえば、第8回オープンデータ(令和3年度診療分)の区分番号Bでは293件中22項目、区分番号Cでは403件中7項目、区分番号Dでは1556件中12項目などであった。
またNDB特別抽出データのうち令和3年度診療分では算定されなかった/算定件数が1件以上10件未満ものがそれぞれ、区分番号Bでは293件中23項目/15項目、区分番号Cでは403件中7項目/8項目、区分番号Dでは1556件中19項目/55項目確認された。
NDBオープンデータには算定されたのにNDB特別抽出データでは算定されなかった行為に、区分番号Bの薬剤適正使用連携加算(認知症地域包括診療料)や、区分番号Eの新生児加算(心臓及び冠動脈造影(右心))などがあった。一方、NDB特別抽出データでは算定されたのにNDBオープンデータでは算定されなかった行為は、区分番号Iの「精神科複数回訪問加算(日2回・同一建物内3人~)」や「精訪看(3)(作業療法士・日2人・週4日目以降30分未満)」などがあった。

③ ヒアリング
日本診療放射線技師会に対するヒアリングでは、画像検査についてはアナログからデジタル化に移行し、現在臨床現場で使用されていない技術があることが確認された。また、医療メーカーとの連携が必要であるとの認識に至った。日本臨床衛生検査技師会に対するヒアリングでは、特定の診療行為が臨床的意義を失っていることや、新たな技術に取って代わられていることが確認された。

④ 海外ヒアリング
フランスでは、医療材料の保険償還期間が3〜5年に定められており、企業はデータを提出して再評価を受ける必要がある。しかし、包括的な医療技術の再評価制度は確立されておらず、新技術導入時に既存技術の削除や保険給付範囲の縮小が行われることがあるのみであることがわかった。これは日本の状況と類似しており、定期的かつ体系的な再評価の仕組みが不足していることが共通の課題である。また、再評価に使用するエビデンスの蓄積が課題となっている点も確認された。
また、韓国では、RBRVS(Resource Based Relative Value Scale)を用いた詳細な技術評価が2001年から行われている。新しい医療技術が保険適用を受ける際にはNECA(National Evidence-based Healthcare Collaborating Agency)による厳格な審査が行われ、既存技術との比較が行われる。しかし、新技術の採用に伴う既存技術の廃止は進んでおらず、医師団体の反対がその要因の1つとなっているとのことであった。
結論
本研究は、海外の医療技術再評価の実態を調査するとともに、既存医療技術の再評価手法を検討することで、算定回数が極めて少ない技術を特定し、関連団体の協力を得て再評価の基準を策定する必要性を確認した。これにより、将来の診療報酬改定において、適切な医療技術の再評価が期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202301014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
なし
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
NDBオープンデータから算定されていない医療技術(診療行為)を抽出した。この成果は令和5年12月27日に開催された第576回中央社会保険医療協議会総会の資料として活用され、医療技術の削除の検討に関して諮問され、了承された。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
202301014Z