急性期、回復期、慢性期の入院患者における医療ニーズ及び必要な医療資源投入量の評価体系の検討・導入に資する研究

文献情報

文献番号
202301013A
報告書区分
総括
研究課題名
急性期、回復期、慢性期の入院患者における医療ニーズ及び必要な医療資源投入量の評価体系の検討・導入に資する研究
課題番号
22AA2004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、先行研究において提案した新たな評価体系の試行的導入を進め、検証を行うことを目的に、中・長期的な入院に係る患者の日々の活動状態(ADL等を含む)および実施された医療行為を含めた患者像の把握を行う。
研究方法
福岡県を中心とした九州地域および岡山県を中心とした中国地方の急性期以後の医療介護施設(地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病床、介護医療院、老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問看護)を対象として「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)」評価票のA項目、B項目(患者状態部分)を用いて、2023年1月23日から1月29日の1週間入院患者及びサービス利用者の情報を収集した。
また、回復期リハビリテーション病棟で利用している日常生活機能評価票と今回の調査票のB項目(患者状態部分)との比較を行った。日常生活機能評価票においてB項目(患者状態部分)と共通である7項目の合計点とB項目(患者状態部分)の合計点の比較と、共通である項目ごとの比較を実施した。ならびに療養病棟で利用している医療区分・ADL区分に係る評価票のADL部分の合計点と患者状態部分の合計B得点との比較、両指標で共通の2項目の比較を実施した。
結果と考察
地域包括ケア病棟(37施設、1,042名)、回復期リハビリテーション病棟(30施設、882名)、療養病棟(30施設、832名)、介護医療院(9施設、240名)、老人保健施設(66施設、648名)、老人福祉施設(66施設、1,901名)、訪問看護ステーション(179施設、4,901名)の状態を収集した。
各機能の看護必要度平均合計A得点と患者状態部分の平均合計B得点は、それぞれ地域包括ケア病棟(0.33、4.99)、回復期リハビリテーション病棟(0.55、4.66)、療養病棟(1.60、8.07)、介護医療院(1.05、8.42)、老人保健施設(0.52、6.89)、老人福祉施設(0.81、6.50)、訪問看護ステーション(0.85、4.12)であった。また、各機能の合計A得点及び患者状態部分の合計B得点の点数分布を100%帯グラフで表したところ、医療内容に関連する看護ケアを表すA得点での分布、また、介護的な必要性を示すB得点(患者状態部分)での分布がそれぞれの医療介護施設において、各々が有する機能に特徴的な患者像、利用者像として確認でき、各医療・介護施設において提供している機能における患者像の違いが前回調査と同様に同一の指標で表現できることが示唆された。
B項目(患者状態部分)と日常生活機能評価票ならびにADL評価を比較した結果、日常生活機能評価は看護必要度のB項目の拡張型であることもありほぼ同様の傾向が見られた。また、ADL区分の評価項目と看護必要度のB項目(患者状態部分)は一部重複するが各項目の点数における重み付けが異なるため合計点数に違いは生じたものの、ほぼ同様の傾向が見られた。これらの結果から、現在回復期リハビリテーション病棟や療養病棟で独自に利用している患者像把握のための評価指標は他の機能でも使用している評価指標(看護必要度評価票)でも代替可能であることが示唆された。
結論
本研究では、回復期、慢性期、介護施設、在宅の機能別に患者像や利用者像について看護必要度評価票を用いて収集した結果、それぞれの医療介護施設において、各々が有する機能に特徴的な患者像、利用者像が確認できた。また、回復期リハビリテーション病棟や療養病棟において患者像把握のための指標として利用している評価票(日常生活機能評価票、医療区分・ADL区分に係る評価票)と看護必要度の評価票(B項目の患者状態部分)が代替可能であることが示された。このことより統一の評価指標による患者像の把握可能性がより強まった。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202301013B
報告書区分
総合
研究課題名
急性期、回復期、慢性期の入院患者における医療ニーズ及び必要な医療資源投入量の評価体系の検討・導入に資する研究
課題番号
22AA2004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性期から慢性期、在宅に至るまでの全医療機能を対象とした、中・長期的な入院に係る患者像の把握を通して急性期医療の患者像の具体的な評価指標を開発するために、(1) DPC対象病院に入院した高齢患者の重症度、医療看護必要度(以下、看護必要度)が医療資源の利用状況に関する検討及び(2)急性期以後の医療介護サービス施設におけるサービス利用者の状態像の把握を行った。
研究方法
本研究では以下の2種類のデータを用いて、分析を行った。
(1) 令和2(2020)年度の福岡県分DPCデータ: 一般社団法人診断群分類研究支援機構を介して調査対象施設から提供されたデータ(様式1、EFファイル、Hファイル)から75歳以上の入院患者を抽出し、入退院経路、入院中に最も医療資源を必要とした傷病(医療資源病名 DPC6桁で記述)、入退院時のB項目の得点、Charlson Comorbidity Index (CCI) を求め、入退院時のB項目の得点と入退院の経路との関係について、入院契機病名別に分析した。また、上記分析を傷病別に行った
(2) 福岡県を中心とした九州地域および岡山県を中心とした中国地方の急性期以後の医療介護施設(地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病床、介護医療院、老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問看護)を対象として「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のA項目、B項目(患者状態部分)を用いて、2023年1月23日から1月29日の1週間入院患者及びサービス利用者の情報を収集した。このデータを用いて、看護必要度の各項目と各施設の受け入れている利用者の主たる傷病の有病率との関係を検討するとともに、これらの情報を用いてサービス機能の分類を行うことの可能性を検討した。
結果と考察
(1) 入退院時のB項目の得点を退院先別にみると、いずれの得点も退院先で有意の差が観察されてた。具体的には院内の他病棟への転棟、他の病院・診療所への転院、介護老人保健施設に入所、介護老人福祉施設に入所、社会福祉施設、有料老人ホーム等に入所、終了(死亡等)という転帰の群は家庭への退院に比較して、入退院時のB項目の得点が有意に高くなっていた。
(2)上記分析を傷病別に行った結果でも、入退院時のB項目のスコアが、退院先の選択に影響していることが明らかとなった。ただし、脳梗塞や股関節骨折のように回復期リハビリテーション病棟の対象疾患となっている傷病では、B項目のスコアによらず他院転院の割合が高くなっていた。心不全と肺炎に関してはB項目のスコアが高い群で、入院経路に依らず他院入院が多くなっていた。ここで興味ある点は介護施設等から入院した高齢者の多くが、老健施設や特別養護老人ホームではなく有料老人ホーム等に退院していることである。この点についてはデータの正確性も含めて検討が必要である。
(3)各機能の看護必要度平均合計A得点と患者状態部分の平均合計B得点は、それぞれ地域包括ケア病棟(0.33、4.99)、回復期リハビリテーション病棟(0.55、4.66)、療養病棟(1.60、8.07)、介護医療院(1.05、8.42)、老人保健施設(0.52、6.89)、老人福祉施設(0.81、6.50)、訪問看護ステーション(0.85、4.12)であった。また、各機能の合計A得点及び患者状態部分の合計B得点の点数分布を100%帯グラフで表したところ、医療内容に関連する看護ケアを表すA得点での分布、また、介護的な必要性を示すB得点(患者状態部分)での分布がそれぞれの医療介護施設において、各々が有する機能に特徴的な患者像、利用者像として確認でき、各医療・介護施設において提供している機能における患者像の違いが前回調査と同様に同一の指標で表現できることが示唆された。
B項目(患者状態部分)と日常生活機能評価票ならびにADL評価を比較した結果、日常生活機能評価は看護必要度のB項目の拡張型であることもありほぼ同様の傾向が見られた。また、ADL区分の評価項目と看護必要度のB項目(患者状態部分)は一部重複するが各項目の点数における重み付けが異なるため合計点数に違いは生じたものの、ほぼ同様の傾向が見られた。これらの結果から、現在回復期リハビリテーション病棟や療養病棟で独自に利用している患者像把握のための評価指標は他の機能でも使用している評価指標(看護必要度評価票)でも代替可能であることが示唆された。
結論
本分析の結果、急性期病院に入院した高齢患者について、病気別にみてもB得点の状況が退院先の決定に関係している可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202301013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
重症度、医療看護必要度を用いて、急性期のみならず回復期、慢性期の入院および要介護高齢者のケアニーズが一体的に評価できること、またこれらの施設及びサービス間の機能や受け入れている患者像の違いを明確にできることが明らかとなった。研究成果については、今後国内外の学術雑誌で発表する予定である。
臨床的観点からの成果
重症度、医療看護必要度で把握されるケアニーズをもとに、医療介護サービスの各機能における質評価指標を作成できる可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
重症度、医療看護必要度を用いた、看護機能の適正評価のための方法論の開発が可能であることが示された。今後、今回の分析結果をもとに、診療報酬、介護報酬で検討すべき課題の整理が可能になると考える。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-07-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202301013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,600,000円
(2)補助金確定額
8,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,257,840円
人件費・謝金 0円
旅費 149,660円
その他 5,208,500円
間接経費 1,984,000円
合計 8,600,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-09-12
更新日
-