臨床疫学に活用可能なNDB等データセットの作成に関する研究

文献情報

文献番号
202301009A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床疫学に活用可能なNDB等データセットの作成に関する研究
課題番号
21AA2006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
森 由希子(国立大学法人 京都大学 医学部附属病院 医療情報企画部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 源太(京都大学医学部附属病院 病床運営管理部)
  • 黒田 知宏(国立大学法人 京都大学 医学研究科)
  • 植嶋 大晃(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
  • 大寺 祥佑(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
  • 杉山 雄大(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 研究所糖尿病情報センター)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
13,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、社会情勢や人口構造の変化に伴い。健康・医療・介護分野のビッグデータ解析の必要性が高まっている。匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)及び介護保険総合データベース(介護DB)のデータについても利活用が期待されているが、データの容量が膨大であること、データの構造が複雑であること等から、データの構造や操作を知悉した研究者でなければ解析を行うのは容易ではない。NDBや介護DB等の大規模データを簡便に分析できるようになれば、健康・医療・介護ビッグデータの利活用推進に貢献することが期待される。本研究では「健康・医療・介護分野の大規模データの利活用を推進する」ことを目的に、NDB、および介護DB、さらに令和2年から提供が開始されている医療・介護の連結情報から、より利用者にとって使いやすいデータセットを開発する。また、医療・介護データ等の解析基盤(HIC)の試行利用を行い、安全性、操作性の検証を行う。
研究方法
本研究では、利用者によるデータセット設計を補助するために「①既存の大規模データベース(NDB・介護DB)のデータ構造の評価」を実施する。また、利用者にとって使いやすいデータセットの設計のために「②長期追跡性に優れた個人名寄せIDの検討」および「③臨床系研究者でも利用可能なデータセットの開発」について検討を行う。②および③については、研究の一部をHIC上で実施し、④HICの安全性と操作性について検討を行う。2023年度において
① については、介護DBのデータ項目、データの格納状況について集計を実施し、結果を公表した。
② については、NDBに含まれる個人単位被保険者番号に基づく個人名寄せID(id5)が付与されたデータの長期追跡性について検討及び評価を行った。さらに、id5が付与される前のデータについても、既存のidとのより精緻なデータ連結の可能性について検討を行った。
③ については、今年度はNDBと介護DBの連結データの分析練習に使用可能なサンプルデータセットの仕様検討を行った。
④ については、実際のHICの利用を実施し、オンサイトリサーチセンターでのNDBデータ利用との比較検討を行った。
結果と考察
介護DBに格納されているデータに関する基礎データを集計し、コードブックを作成した。NDBデータと同様に介護DBデータについても、コードブックを作成、公開することにより、今後介護DBデータに関する利用者の理解が深まり、データ利活用の一助となることが期待される。
長期追跡可能なIDの検討においては、NDBデータにおいてはすでにid0を用いた1患者1データ化の手法が開発されており、NDBデータ内における追跡調査・コホート調査が可能となっている(2021年度報告書にて報告)。今年度はid5の設定状況を把握したとともに、id0およびid5の長期追跡の妥当性評価を行い、id0とid5を組み合わせた新たなid0nの開発に踏み込んだ。この取り組みにより、すでに蓄積されている膨大な過去データとの連結解析が可能になり、様々な課題に対するデータの有効利用が期待される。
データセットの検討においては、研究者のニーズに対応できるデータセット作成に必要な条件を同定するために、2021年度、2022年度において実際にいくつかのリサーチクエスチョンについてNDBデータおよび自治体医療介護データを用いた分析を実施した(報告済み)。その結果、学術研究に資するようなデータセットの作成には、研究内容に即したデータセットの設計が必要であり、レディメイドのデータセットでは研究内容に制限がある可能性が示唆された。一方で、データセットの基本構造(エンティティ定義)等については共有できる可能性が改めて示唆された。今年度はいままでの検討結果をふまえて、NDB・介護DB連結データの分析練習ができるデータセットの開発を行った。簡便に使用可能なサンプルデータセットにより、連結データ利用に対するハードルが下がり、利用推進が期待される。
HICの試行利用においては、実際のデータを用いて、HIC上に分析用データベース構築を行い、HIC利用における課題検討を行った。また、HICとオンサイトリサーチセンターとの比較検討を行い、その特性の違いを説明した。

結論
NDBにおける長期追跡可能なidに関する評価を行った。またNDB・介護DB連結データの練習用データセットを開発した。さらにHICにおけるデータ分析に関する課題抽出および解決法の検討を行った。これらの成果は今後利用者支援の一環となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202301009B
報告書区分
総合
研究課題名
臨床疫学に活用可能なNDB等データセットの作成に関する研究
課題番号
21AA2006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
森 由希子(国立大学法人 京都大学 医学部附属病院 医療情報企画部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 源太(京都大学医学部附属病院 病床運営管理部)
  • 黒田 知宏(国立大学法人 京都大学 医学研究科)
  • 植嶋 大晃(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
  • 大寺 祥佑(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
  • 杉山 雄大(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 研究所糖尿病情報センター)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、社会情勢や人口構造の変化に伴い。健康・医療・介護分野のビッグデータ解析の必要性が高まっている。匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)及び介護保険総合データベース(介護DB)のデータについても利活用が期待されているが、データの容量が膨大であること、データの構造が複雑であること等から、データの構造や操作を知悉した研究者でなければ解析を行うのは容易ではない。NDBや介護DB等の大規模データを簡便に分析できるようになれば、健康・医療・介護ビッグデータの利活用推進に貢献することが期待される。本研究では「健康・医療・介護分野の大規模データの利活用を推進する」ことを目的に、
①既存の大規模データベースの(NDB・介護DB)のデータ構造の評価
②長期追跡性に優れた個人名寄せIDの検討
③臨床系研究者でも利用可能なデータセットの開発」
を実施した。また研究の一部を医療・介護データ等の解析基盤(HIC)上で実施し、
④HICの安全性と操作性について検討を行った。
研究方法
①については、すでに公表されているNDBコードブックを参考に、介護DBのデータについて網羅的な調査を行い、介護DBのデータ項目・データの格納状況について集計を実施し、介護DBコードブックとして公表した。②についてはまずNDBにおける入院データと外来データを結合し、1患者の入院・外来の情報を追跡できる「1患者1データ化」を行った。次に医療レセプトと介護レセプトの連結可能性と連結時の課題を整理する基礎として、KDBデータを用い、サンプル抽出を行って課題を整理した。さらにNDBに含まれる個人単位被保険者番号に基づく個人名寄せID(id5)が付与されたデータの長期追跡性について検討及び評価を行い、id5が付与される前のデータについても、既存のidとのより精緻なデータ連結の可能性について検討を行った。③についてはまず学術研究に対応可能なデータセットの仕様について検証するためにNDBおよび自治体医療介護データを用いて学術研究領域の複数のリサーチクエスチョンに対する分析を実施した。その後、上記検討結果を踏まえてNDBと介護DBの連結データの分析練習に使用可能なNDB・介護DB連結データのダミーデータセットを作成した。④については研究の一部をHICの試行利用として実施し、HIC利用における課題について、オンサイトリサーチセンター利用との比較およびHICにおいて比較的大規模な特別抽出データを取り扱う際の課題についての検討を行った。
結果と考察
①については、2021年から2022年度に介護DBコードブックを作成、2023年度に公開した。NDB・介護DBデータの基本構造、データ項目、データ格納状況に関する情報を公開することにより、利用者は利用するデータの内容を理解したうえで研究計画の立案・分析が可能となり、効率的なデータ利用の一助となることが期待される。②については、2021年度に1患者1ID化に関する検討を実施した。2023年度にid0およびid5, id0nにおける長期追跡性の評価を実施した。この結果は異なるデータベース間の連結や長期追跡を要するデータ分析の支援になることが期待される。③については、2021年度~2022年度に学術研究に資する汎用性のあるデータセットの仕様について検討を実施した。2023年度にNDB・介護DB連結データのダミーデータセットを作成した。また④については、2022年度から2023年度において、実際のデータを用いて、HIC上に分析用データベース構築を行い、HIC利用における課題検討を行った。また、HICとオンサイトリサーチセンターとの比較検討を行い、その特性の違いを説明した。これらの結果は今後、利用者支援の一環となることが期待される。
結論
本研究において
①介護DBコードブックを作成、2023年度に公開した。
②個人単位被保険者番号由来のIDであるid5のNDBにおける設定状況や長期追跡性を把握するとともにすでに開発されているid0とid5を組み合わせた新たなid0nの開発を行った。
③「汎用性のあるデータセット」の検討をすすめ、その一つとして、NDB・介護DB連結データの練習用データセットを作成した。
④HICにおけるデータ利用の課題と対応策について検討を行った。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202301009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では既存の大規模データベースの(NDB・介護DB)のデータ構造の評価を行い、介護DBコードブックを作成した。またNDB・介護DB連結データにおける長期追跡性に優れた個人名寄せIDの検討を行った。この成果により、医療・介護連結データ分析における課題である両DBの保有するデータの内容及び構造および連結解析に有効なIDに関する知見を得ることができた。今後連結データ解析の一助となることが期待される。
臨床的観点からの成果
本研究では、介護DBのデータを用いて研究を行う際に有用となる介DBコードブックを作成した。また、NDBを用いて臨床研究を行う際のモデルケースとなるような複数の分析を実際に行い、結果を公表した。これらの成果は、臨床家がNDBや介護DBを用いた研究を立案し、分析をする際のハードルとなっているデータ項目の選定や研究手法の選択における重要なサポートとなることが期待される。
ガイドライン等の開発
本研究班で作成したNDB・介護DBダミーデータセットについて、第16回匿名医療・介護情報等の提供に関する委員会(2024年3月21日)において報告した。
その他行政的観点からの成果
近年、公的データベースの利活用の推進、特に各データベースが保有するデータの連結解析に対する期待が高まっている。本研究では、NDBおよび介護DBのデータを分析する際に問題となるデータ構造や項目、ID等に関する検討を行った。また、連結データ分析を行う際の練習用データセットを作成した。これらの成果により公的データベースの連結データの利活用推進に貢献したと考える。
その他のインパクト
介護DBコードブックをホームページ上に公開した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
専門委員会での議論
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ishimaru M, Matsui H, Yasunaga H, et al.
Prevalence, incidence rate and risk factors of medication-related osteonecrosis of the jaw (MRONJ) in patients with osteoporosis and cancer: a nationwide population-based study in Japan.
J Oral Maxillofac Surg. , 80 (4) , 714-727  (2022)
10.1016/j.joms.2021.12.007
原著論文2
Mori T, Tamiya N, Sugiyama T, et al.
Medical expenditures for fragility hip fracture in Japan: a study using the nationwide health insurance claims database. Arch Osteoporos.
Arch Osteoporos , 17 (1) , 61-61  (2022)
10.1007/s11657-022-01096-8.
原著論文3
Hashimoto Y, Matsui H, Yasunaga H, et al.
Incidence of sympathetic ophthalmia after inciting events: a national database study in Japan.
Ophthalmology , 129 (3) , 344-352  (2022)
10.1016/j.ophtha.2021.09.011
原著論文4
Ohbe H, Matsui H, Yasunaga H, et al.
One-year functional outcomes after cardiopulmonary resuscitation for older adults with pre-existing long-term care needs.
Age and Aging , 52 (5)  (2023)
10.1093/ageing/afad072
原著論文5
Sun Y, Iwagami M, Komiyama J, et al.
The Effect of Home Care Support Clinics on Hospital Readmission in Heart Failure Patients in Japan.
J Gen Intern Med. , 38 (9) , 2156-2163  (2023)
10.1007/s11606-023-08030-9
原著論文6
Sun Y, Iwagami M, Komiyama J, et al.
Association between types of home healthcare and emergency house calls, hospitalization, and end-of-life care in Japan.
J Am Geriatr Soc , 71 (6) , 1795-1805  (2023)
10.1111/jgs.18268.
原著論文7
Komiyama J, Sugiyama T, Iwagami M, et al.
Hospital-Level Variation in Cardiac Rehabilitation After Myocardial Infarction in Japan During Fiscal Years 2014–2015 Using the National Database
Circulation Reports , 5 (5) , 177-186  (2023)
10.1253/circrep.CR-22-0113

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
202301009Z