医師の勤務環境把握に関する研究

文献情報

文献番号
202301007A
報告書区分
総括
研究課題名
医師の勤務環境把握に関する研究
課題番号
21AA2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
研究分担者(所属機関)
  • 谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
  • 和田 裕雄(順天堂大学 大学院医学研究科公衆衛生学講座)
  • 福井 次矢(東京医科大学 茨城医療センター)
  • 片岡 仁美(臼井 仁美)(京都大学医学教育・国際化推進センター)
  • 吉村 健佑(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
  • 佐藤 香織(明治大学 商学部)
  • 井出 博生(東京大学 医学部附属病院)
  • 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師の働き方改革を進めてゆく上では、医師の勤務実態を把握することは不可欠である。本研究班では、2022年に実施した医師の勤務実態に関する調査の詳細な分析を通じ、専門医取得者の勤務時間に関する分析、大学病院本院に着目した勤務時間の現状把握、大学病院常勤医師の診療科別勤務時間の内訳、都市部・地方部における勤務時時間分析、兼業の状況、勤務時間の短縮のための対策とその効果等に関する分析を行った。
研究方法
医師の勤務環境把握に関する調査は、医師が勤務する施設が回答する施設調査と、医師本人が回答する医師調査から構成される。施設調査の対象は、全病院および10%抽出した診療所、老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院である。医師調査は、施設調査の対象となった施設のうち1/2の病院及びその他の施設に勤務する全医師(常勤・非常勤)である。調査依頼及び調査票は、調査事務局から各施設に配布、回答は、施設票については各施設から調査事務局に対して郵送で、医師票は各医師から調査事務局に郵送または専用のWebサイト経由で行うよう依頼した。医師調査では1週間(2022年7月11~17日)の勤務状況について、30分単位の記録(自計式タイムスタディ)を依頼した。調査実施は、合同会社PwCコンサルティング合同会社に委託して実施した。
大学病院常勤医師の診療科別の勤務時間の内訳、都市部・地方部における勤務時間分析、兼業の状況については、第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会、大学病院本院とそれ以外との比較については、厚生労働省が実施している「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」が、大学病院本院に着目した分析を行っており、比較可能性を担保するため、集計区分を同一とした。都市部・非都市部に関する分析については、「都市部」を医療機関の所在市区町村が東京特別区、政令指定都市、県庁所在地である場合、「地方」はそれ以外である場合とした。
結果と考察
医師の勤務時間は詳細な分野別にみても全体としては短縮傾向にあり、医師の働き方改革が進んでいることが改めて確認された。また、1年前と比較した役割分担の進み方ごとに主な勤務先における勤務時間を求めると、く分担が進んでいない~以前から分担が進んでいたと役割分担が進むほど勤務時間が短い傾向にあること、役割分担の進み具合と、年休取得のしやすさについては、おおむね、役割分担が進めば進むほど、休みやすくなるとの結果が得られた。


結論
昨年度に実施した医師の勤務実態調査について詳細な分析を行った。その結果、他職種との役割分担が進むことが勤務時間の短縮や、医師の休暇の取りやすさにもつながる可能性が示唆される所見が得られた。これらの研究成果により、今後の医師の働き方改革に向けた有益な所見が得られたと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202301007B
報告書区分
総合
研究課題名
医師の勤務環境把握に関する研究
課題番号
21AA2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター地域医療政策部門)
研究分担者(所属機関)
  • 谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
  • 和田 裕雄(順天堂大学 大学院医学研究科公衆衛生学講座)
  • 福井 次矢(東京医科大学 茨城医療センター)
  • 片岡 仁美(臼井 仁美)(京都大学医学教育・国際化推進センター)
  • 吉村 健佑(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
  • 佐藤 香織(明治大学 商学部)
  • 井出 博生(東京大学 医学部附属病院)
  • 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師の働き方改革の議論にあたっては、医師の労働時間を把握することが極めて重要となる。これまでわが国では、2016 年度、2019 年度に厚生労働科学研究班による大規模な医師の勤務実態に関する調査が行われている。本研究の目的は、2024 年に医師の時間外労働の上限規制が適用される前のタイミングおける医師の勤務実態把握を行い、今後の医師の働き方改革に向けた基礎資料を得るとともに、今後の医師の働き方改革の推進に向けた課題について検討することにある。
研究方法
本研究は2021年度から2023年度までの3年間実施された。1年目となる令和3年度には、本調査に向けて調査票の設計のための予備調査を実施し、病院種別・病床規模・地域分布を考慮し、計10 病院を対象に、医師の勤務状況を、4種類、それぞれ粒度の異なる調査票を用いて勤務時間の記録を求める自計式タイムスタディ調査を実施するとともに、同一医療機関の看護師等が交代でその医師を観察、1分単位で業務内容を記録し、集計する他計式タイムスタディ調査を実施した。また、一部の医師にスマートフォン上のアプリを用いた、勤務時間の記録を依頼し、勤務時間把握におけるスマートフォンアプリの導入可能性と、その課題についての調査も合わせて行った。
2年目となる令和4年度に大規模調査を実施した。2022 年7月に2016 年度及び2019 年度に行われた医師の勤務実態に関する調査とほぼ同規模の医師の勤務環境把握に関する調査を行った。3年目となる令和5年度に、詳細分析を行った。
結果と考察
本研究により、2024 年4 月の医師の時間外労働の上限規制の適用に向けて、医師の働き方改革が一定程度進んでいる実態を明らかにすることが出来た。診療科を問わず、勤務時間全体の短縮傾向が認めれられること、診療時間とともに、研究・教育が減り研鑽・その他時間が増加していることが特徴的であった。
この結果は、実際の労働時間の減少とともに、労働時間の管理が進み、労働時間に関する定義や、自己研鑽の範囲の明確化が進むことで、より労働時間が明確に把握できるようになった可能性がある。医師の時間外労働規制における暫定特例水準は2035年度末を目標に解消される他、集中的技能向上水準についても将来に向けて削減方向になる中、引き続き医師の勤務時間の減少に向けた取組が求められており、医療機関の状況に応じて、着実に役割分担を進めてゆくことが重要であることを示しているものと考えられた。
本調査は、自計式調査であり、医師自身が勤務時間を回答している点や、2024 年の医師の時間外労働の上限規制に適用に向け、医療機関も、医師も、勤務時間に関する意識や関心も高まっており、特に、自己研鑽や主たる勤務先以外での勤務の扱いがより厳密に管理されるようになっているという指摘もある。また、2022 年7 月の特定の1週間の勤務状況の調査であること等も、結果を解釈する上では留意する必要があると考えられる。
結論
本研究では2022 年7 月に実施した医師の勤務実態調査から、2024 年4 月の医師の時間外労働の上限規制の適用に向けて、医師の働き方改革が一定程度進んでいる実態を明らかにすることが出来た。他職種との役割分担が進むことが勤務時間の短縮や、医師の休暇の取りやすさにもつながる可能性が示唆される等の所見が得られた。
さまざまな留意点や一定の限界があるものの、2016 年度、2019 年度に引きつづき、全国規模の医師の勤務実態調査を実施、医師の勤務実態の一端を明らかに出来た意義は大きく、今後、2024 年の医師の時間外労働の上限規制の適用や、2035 年末の暫定特例水準の解消に向けた方策の検討を進めて行く上でも、貴重なデータが得られたものと考えられた。今後の医師の勤務環境把握における基礎資料を得ることが出来たと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202301007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我が国における医師の勤務実態を大規模調査により明らかにしたことは、学術的にも意義が大きい。本研究結果は、 BMC Public Health 誌にも掲載された。
臨床的観点からの成果
本研究は臨床研究ではない。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
令和5年10月12日の医師の働き方改革の推進に関する検討会、令和6年1月19日医師等医療機関職員の働き方推進本部において医師の勤務実態に関するデータとして紹介された。また、令和6年1月20日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会において、大学病院病院及び救急病院における医師の働き方に関する本研究の調査結果が資料として活用された。
その他のインパクト
本研究結果は、時事メディカル(令和5年8月26日)、NHK時事公論(令和5年9月29日)、NHKニュース(令和5年10月12日)でも取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
審議会等での議論3件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Soichi Koike, Hiroo Wada, Sachiko Ohde et al.
Working hours of full-time hospital physicians in Japan: a cross-sectional nationwide survey
BMC Public Health , 24 (1) , 164-  (2024)
https://doi.org/10.1186/s12889-023-17531-5
原著論文2
井出博生,福原正和,土井俊祐他
医療現場における電子的な方法による労働時間等の把握に伴う諸問題の検討
社会保険旬報 , 2917 , 10-17  (2024)

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
202301007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,600,000円
(2)補助金確定額
10,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 345,045円
人件費・謝金 3,036,582円
旅費 218,890円
その他 4,553,483円
間接経費 2,446,000円
合計 10,600,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-09-24
更新日
-