卒前教育から生涯教育に至るシームレスな総合診療医の養成・確保に関する研究

文献情報

文献番号
202301006A
報告書区分
総括
研究課題名
卒前教育から生涯教育に至るシームレスな総合診療医の養成・確保に関する研究
課題番号
21AA2002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
前野 哲博(筑波大学 医学医療系)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 仁志(秋田大学大学院 医学系研究科 医学教育学講座)
  • 高村 昭輝(富山大学 医学教育学)
  • 吉本 尚(筑波大学 医学医療系)
  • 稲葉 崇(筑波大学 医学医療系)
  • 久野 遥加(筑波大学 医学医療系)
  • 佐藤 幹也(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,993,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、総合診療医を養成する必要性が高まっている。地域で活躍する総合診療医を増やすためには、その必要数を算出したうえで、卒前教育~生涯教育の各フェーズにおける切れ目のない教育プログラムの提供が求められる。
このような背景を踏まえ、我々は1)今後の医療需要の変化を反映した地域別の総合診療医の必要数を算出するシステムの開発、2)現在国内で実施されている総合診療医を養成するための研修制度の比較検討、3)卒前教育~生涯教育を通して活用できる研修目標及びマイルストーンの作成とその評価ツールの開発、4)能動学習を可能にする教育効果の高いオンライン研修プログラムの開発と教育効果の検証を目的とする研究を行った。
研究方法
1)総合診療医の必要数については、前年度までに構築したアルゴリズムを改良するとともに、Tableau Publicを用いたウェブサイトを構築した。
2)主な制度の担当者や受講者にインタビューを行うとともに、比較的医師が多い九州地区の大学の地域医療教育担当者から情報収集を行った。
3)研修目標の設定に関しては、各コンピテンシーを分解し教育項目を策定した。さらにはその教育項目を分かりやすいキーワードレベルにまで細項目として策定した。
4)研修プログラムのオンライン化を進めるとともに、オンライン研修を実現するためのアプリケーションや、自宅で実習できる安価な模型の開発も合わせて行った。研修が実際の診療に与えた影響を評価するために、研修前/中/直後、修了から6か月~1年後にWebアンケート調査を実施した。
結果と考察
1)1日あたり外来患者数、重症度別にみた入院患者のうち総合診療医が担当する患者の割合、推計を行う地域の属性などを任意に設定すると、二次医療圏単位で総合診療医の必要数を算出できるツールと、各疾患分類の患者における総合診療医が診療することのできる/診療すべき患者の割合を概念化した総合診療スコープ(scope of general practice)と、ユーザーが入力した疾患分類別患者数を用いて、総合診療医指数を算出するためのウェブサイトを構築した。
このツールを活用することで、医師の適正配置に関する議論に有用なデータを得ることができると考えられた。また、地域医療に従事する総合診療医が今後さらに診療範囲を広げるべき領域を把握したり、総合診療専攻医の研修の到達度の評価などに用いたりすることもできると考えらえる。
2)インタビューの結果より、総合診療医の養成について、情報共有や相互乗り入れについても団体の意向が得られれば前向きな方向性がうかがえた。また、総合診療の講座を40年前から開設している佐賀大学においては、既に講座中心のネットワークが県内に構築しており、今後の国内多くの地域の参考になることがわかった。
3)日本の総合診療医の共通のコンピテンシーおよびマイルストーンについて内容を吟味するとともに、教育項目(シラバス)に関しては、上記で定めたコンピテンシーごとに合計71の項目を設定し、さらに、下位項目として約400のchapterを設けて概要を記述した。
これを活用することにより、総合診療医を育成している各種団体が統一して使用できる項目設定やスケールの開発が実施できる可能性が示唆された。また、e-learningを含む教育コンテンツを分類して現状把握をしやすくし、施設間の比較検討や補完、今後の教育コンテンツ開発にも役立つと考えられる。
4)診療実践コース、ノンテクニカル研修コースともに、すべてのコースにおいてオンライン化を行った。受講者の反応もおおむね良好で、実践的な学びにつながっていることが確認できた。教育効果の検証に関しては、受講開始後1年以上経過したプログレス評価において、設定したすべての評価項目に対して、「実行している度合い」「自信度」ともに向上しており、実際の診療において、受講者が自信をもって診療範囲を拡大し、レベルの向上を図ることに役立っていることが検証できた。本研究により、地域で活躍する総合診療医の養成には、本研修プログラムの範囲を拡大し、受講者数をさらに増やすことが有用であると考えられた。
結論
本研究の成果として、任意の入力値に応じた総合診療医の必要数の算出が可能となった。現行の総合診療医養成に関する研修制度を比較検討して、共通化・標準化に資する方策に関する検討を実施できた。教育プログラムの標準化・体系化のための研修目標、マイルストーン、教育項目(シラバス)が設定され、教育のすべてのフェーズにおいて、体系的・網羅的な研修プログラムの開発が可能になった。研修のオンライン化を進め、効果的な研修プログラムを開発し、その教育効果も検証できた。本研究を通して、我が国における総合診療医の増加および資質向上に寄与する知見を得ることができたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202301006B
報告書区分
総合
研究課題名
卒前教育から生涯教育に至るシームレスな総合診療医の養成・確保に関する研究
課題番号
21AA2002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
前野 哲博(筑波大学 医学医療系)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 仁志(秋田大学大学院 医学系研究科 医学教育学講座)
  • 高村 昭輝(富山大学 医学教育学)
  • 吉本 尚(筑波大学 医学医療系)
  • 稲葉 崇(筑波大学 医学医療系)
  • 久野 遥加(筑波大学 医学医療系)
  • 佐藤 幹也(筑波大学 ヘルスサービス開発研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、総合診療医を養成する必要性が高まっている。地域で活躍する総合診療医を増やすためには、その必要数を算出したうえで、卒前教育~生涯教育の各フェーズにおける切れ目のない教育プログラムの提供が求められる。
このような背景を踏まえ、我々は1)今後の医療需要の変化を反映した地域別の総合診療医の必要数を算出するシステムの開発、2)現在国内で実施されている総合診療医を養成するための研修制度の比較検討、3)卒前教育~生涯教育を通して活用できる研修目標及びマイルストーンの作成とその評価ツールの開発、4)能動学習を可能にする教育効果の高いオンライン研修プログラムの開発と教育効果の検証を目的とする研究を行った。
研究方法
1)総合診療医の必要数については、患者調査および市区町村別性年齢階級別推計人口などのデータを基礎情報として、任意の入力値に応じた総合診療医の必要数を外来診療、入院診療、訪問診療に分けて推計する手法を開発した。
2)総合診療医を養成するための研修制度については、制度の比較検討及び担当者へのインタビューを行った。
3)総合診療能力の修得に関しては、シームレスな教育を実現するための研修目標とマイルストーンを作成するとともに、e-learningを含む教育コンテンツの開発を視野に入れた教育項目(シラバス)を作成した。
4)研修プログラムのオンライン化を進めるとともに、能動学修の要素を取り入れた研修プログラムの開発およびアプリケーションや模型の開発を行った。研修が実際の診療に与えた影響を評価するために、研修前/中/直後、修了から6か月~1年後にWebアンケート調査を実施した。
結果と考察
1)総合診療医の必要数については、総合診療医の診療範囲や担当する患者数などのパラメータを投入すれば、任意の入力値に応じて年別・地域別に算出できるシステムを構築した。また、総合診療医の診療範囲を総合診療スコープとして概念化し、自らの診療と地域のニーズとの一致度を見る指標(総合診療医指数)を算出する機能を有する、Tableau Publicを用いたウェブサイトを構築した。
このツールを活用することで、医師の適正配置に関する議論に有用なデータを得ることができると考えられた。また、地域医療に従事する総合診療医が今後さらに診療範囲を広げるべき領域を把握したり、総合診療専攻医の研修の到達度の評価などにも利用可能と考えらえる。
2)総合診療医を養成するための研修制度については、制度の比較検討及び担当者へのインタビューを通して、目指す方向性は共通しているものの、研修方略や評価は団体によりかなり異なることが明らかになった。その一方で、コンテンツの共有や相互乗り入れについては前向きであることが明らかになった。
3)総合診療能力の修得に関しては、シームレスな教育を実現するための研修目標とマイルストーンを作成するとともに、教育項目(シラバス)に関しては、上記で定めたコンピテンシーごとに合計71の項目を設定し、さらに、下位項目として約400のchapterを設けて概要を記述した。
これを活用することにより、総合診療医を育成している各種団体が統一して使用できる項目設定やスケールの開発が実施できる可能性が示唆された。また、教育コンテンツを分類して現状把握をしやすくし、施設間の比較検討や補完、今後の教育コンテンツ開発にも役立つと考えられる。
4)研修のオンライン化については、診療実践コース、ノンテクニカル研修コースともに、すべてのコースにおいてオンライン化を行った。教育効果の検証に関しては、受講開始後1年以上経過したプログレス評価において、設定したすべての評価項目に対して、「実行している度合い」「自信度」ともに向上しており、実際の診療において、受講者が自信をもって診療範囲を拡大し、レベルの向上を図ることに役立っていることが検証できた。本研究により、地域で活躍する総合診療医の養成には、本研修プログラムの範囲を拡大し、受講者数をさらに増やすことが有用であると考えられた。
結論
本研究の成果として、任意の入力値に応じた総合診療医の必要数の算出が可能となった。現行の総合診療医養成に関する研修制度を比較検討して、共通化・標準化に資する方策に関する検討を実施できた。教育プログラムの標準化・体系化のための研修目標、マイルストーン、教育項目(シラバス)が設定され、教育のすべてのフェーズにおいて、体系的・網羅的な研修プログラムの開発が可能になった。研修のオンライン化を進め、効果的な研修プログラムを開発し、その教育効果も検証できた。本研究を通して、我が国における総合診療医の増加および資質向上に寄与する知見を得ることができたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202301006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
総合診療医の必要数の算出ツールの実装化により、医師の適正配置や養成すべき医師数に関して、データに基づく議論を行うための基盤が整備された。本ツールは、外来、病棟、訪問診療の3領域について、患者調査、市区町村別の性年齢階級別推計人口等のデータソースに基づいて医療需要を推計するアルゴリズムに基づいており、任意の入力値に応じた推計値を算出できることから、さまざまなシミュレーションに基づく分析が可能となった。
臨床的観点からの成果
総合診療医の養成に関して、卒前教育から生涯教育に至るシームレスな教育で活用できる研修目標(コンピテンシー、マイルストーン)、教育シラバスの提供により、養成に携わる大学、学会、各種団体が、共通言語を用いて互換性のある体系的・網羅的な教育プログラムの開発および教育コンテンツの共有ができる環境が整備された。また、高い教育効果を持つことが確認されたオンライン研修プログラムが開発されたことで、全国どこからでも広く参加でき、確実に総合診療能力の向上を図ることができる環境が実現した。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
総合診療医の必要数の算出ツールは、その地域で働く総合診療医に求められる診療範囲をシミュレートすることも可能である。また、臓器専門医がカバーすべき守備範囲や、総合診療医の養成に向けた課題の抽出、達成度の評価が可能となる。
各団体が運営している、総合診療能力を養成するための制度は、現在は個別に運用されているが、目指す方向性に大きな違いはなく、制度間の情報共有や相互乗り入れについても前向きな方向性がうかがえたため、将来さらに連携を深めていける可能性が示された。
その他のインパクト
本研究で開発した総合診療医の必要数の算出ツールは、人数だけではなく、地域の特性を考慮した研修目標の設定にも利用可能である。さらに、標準化した研修目標や教育シラバスを活用することで、現状把握や今後必要な研修内容の同定ができる。研修を実践する際には、教育効果の担保されたオンライン研修プログラムを活用し、地域にいながら効率的に研修ができる。このように、各分担研究の成果を包括的に活用することにより、卒前教育から生涯教育に至るシームレスな総合診療医の養成・確保に貢献することが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
シンポジウム発表2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-07-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
202301006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,400,000円
(2)補助金確定額
10,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,182,440円
人件費・謝金 2,949,408円
旅費 986,512円
その他 3,874,640円
間接経費 1,407,000円
合計 10,400,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-09-24
更新日
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