成人期注意欠陥・多動性障害の疫学、診断、治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200929025A
報告書区分
総括
研究課題名
成人期注意欠陥・多動性障害の疫学、診断、治療法に関する研究
課題番号
H21-障害・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中村 和彦(浜松医科大学医学部精神神経医学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人期ADHDの症状・病態は十分把握されていない。発達障害者支援法が施行され、成人期ADHDの疫学、診断、治療に関する研究が急務になり、当事者のため、さらには家族を含めた国民の福祉のため必要である。我々は、地域における成人期ADHDの疫学調査を行う。
研究方法
浜松市の80万人より、18歳から49歳までの男女の中から、無作為に10,000人を抽出し調査対象者とした。内容は一般的な健康調査とAdult ADHD Self Report Scale-Screener (ASRS-Screener) を用いて大人のADHDのスクリーニングを行なった。
結果と考察
10000人のうち,協力を得られたのは3281名であった。回収率は32.8%であった。ASRS-Screenerへの通過(基準点以上:ADHDの疑い)と不通過を比較した。20歳代の比較的若い層においては通過群が多く,40歳代の比較的高年齢層においては通過群が少なかった。通過群ほどひとり暮らしや対象者(対象者夫婦)と親の家族形態である率が高く,子ども(と夫婦)と暮らしている家族形態である率が低い。通過群ほど未婚者である率が高く,既婚者である率が低い。通過群であるほど無職である率が高く,パート・アルバイトとして働いていたり,あるいは結婚して主婦や主夫として家庭に入っていたりする率が低い。通過群に低所得者層が多く,比較的高い所得の層には通過群が少ない。現在の健康状態は通過群ほどより不健康な状態にある。通過群ほど通院している率が高い。通過群ほど悩み事やストレスを多く抱えている傾向がある。これらの特徴は,欧米の先行研究において指摘されてきた特徴と多くが一致すると考えられる。例えば,結婚歴において未婚者が多いことは,ADHDを抱える成人が対人面でトラブルを起こしやすく,パートナーと親密な関係を築くことが難しいという指摘と符合する。また,職業において,無職が多いことは,同じく対人面でのトラブルや,不注意傾向や多動性・衝動性のために労働遂行能力が低くなってしまうという指摘と符合するものである。
結論
我々は一般市民の中から潜在的にADHDの疑いのある方が存在し、問題を抱えていることを明らかにした。彼らに対して行政的な支援、医療的支援が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-