経済学的手法による補装具の価格構成に関する研究

文献情報

文献番号
200929010A
報告書区分
総括
研究課題名
経済学的手法による補装具の価格構成に関する研究
課題番号
H20-障害・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 伸也(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 補装具製作部)
  • 我澤 賢之(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
補装具価格の構成を明らかにし、補装具費支給水準の基礎となる新しい価格算定式を提示するとともに、その算定式の要素である利益の水準について、経済学的観点から分析をおこない、政策立案に資する基礎情報を提供する。
研究方法
1 昨年度の義肢、装具、座位保持装置(以下、義肢等)製作事業者等への調査を踏まえ、追加調査を義肢等製作事業者、義肢等材料販売事業者などを対象に調査(アンケート、電話聞き取り)をおこない、現況を把握する。
2 得られたデータのうち産出物別売上データと営業費用データを用いて、DEA(包絡線分析、経営効率分析)を応用した限界費用(生産物1単位の増産に要する追加的費用)推定の手法を用いて、義肢等生産における限界費用の推定をし、利益水準妥当性などの分析をおこなう。またその結果と諸調査の結果を踏まえて、価格算定式の推定をおこなう。
3 カナダ、北米およびヨーロッパにおける外国の義肢等・福祉機器制度の調査をおこなう。
結果と考察
主要な結果・考察内容はつぎの通りである。
1 総じて、義肢等生産国おける人件費単価、素材費の想定水準を引き上げることが妥当である結果が得られた。
2 義肢、座位保持装置については現行公定価格が限界費用以下の水準にあるという結果が示されたが、これは平成20年度の聞き取り調査において義肢・装具双方を扱う事業者からしばしば聞かれた「装具のもうけで、義肢の採算が厳しい分をまかなう」という状況を裏付ける結果となった。
3 外国では部分的に競争原理を利用することで、柔軟勝現状に即した価格決定がなされているケースが見られた。これは今後の補装具価格の制度を考える上で参考となるものと思われる。
結論
1 義肢等の製作費用の人件費、素材費が増加している。
2 しかし調査結果から得られた人件費単価、素材価格の上昇分を調整しても、義肢、座位保持装置についてはなお採算を取ることが厳しく、それ以上の価格引き上げの必要性が示されたと考えられる。
3 本研究の義肢等本体の人件費、素材費に関する部分は、22年度に向けての補装具価格改訂において参考とされた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200929010B
報告書区分
総合
研究課題名
経済学的手法による補装具の価格構成に関する研究
課題番号
H20-障害・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 伸也(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 補装具製作部)
  • 我澤 賢之(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
補装具価格の構成を明らかにし、補装具費支給水準の基礎となる新しい価格算定式を提示するとともに、その算定式の要素である利益の水準について、経済学的観点から分析をおこない、政策立案に資する基礎情報を提供する。
研究方法
1 義肢、装具、座位保持装置(以下、義肢等)製作事業者、同完成用部品製作事業者などを対象に調査(聞き取り・アンケート)をおこなう。
2 義肢等生産における標準的な必要経費・作業量、利益水準妥当性などの分析をおこなう。またその結果を踏まえて、価格算定式の推定をおこなう。
3 他の補装具についての現況調査(製造事業者、販売店などを対象に調査)をおこなう。
4 カナダ、北米およびヨーロッパにおける外国の義肢等・福祉機器制度の調査をおこなう。
結果と考察
主要な結果・考察内容はつぎの通りである。
1 義肢等の人件費単価、素材費所要額の想定が現状より低いことがわかった。
2 義肢、座位保持装置は現行公定価格を限界費用が上回っていることがわかった。
3 以上の分析を踏まえ義肢等の価格算定式のパラメータを推計した。
4 完成用部品について、一部の事業者では申請価格より高い価格で供給されており、それが義肢等製作事業の採算を厳しくしている可能性が示唆された。
結論
1 義肢等の製作費用の人件費、素材費が増加している。
2 しかし調査結果から得られた人件費単価、素材価格の上昇分を調整しても、義肢、座位保持装置についてはなお採算を取ることが厳しく、それ以上の価格引き上げの必要性が示されたと考えられる。
3 本研究の義肢等本体の人件費、素材費に関する部分、完成用部品に関する部分は平成21年度、22年度に向けての補装具価格改訂や、完成用部品の価格表示方法追加(付随費用を加算した従来の公示価格だけでなく、義肢等製作事業者への想定販売価格である完成用部品申請時の申請価格(付随費用抜き)を表示するようにする)において参考とされた。
4 海外調査の結果から、公的価格を定めている事例において見込み利益率を明示的に示すとともに2 年に一度という比較的短い間隔で価格の見直しが行われていることが明らかになった。また、北欧のレンタル方式により、市場原理が働くことが確認できた。このような市場原理を日本の公的供給システムに導入するかが、改めて課題として浮き彫りになった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200929010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
DEAの手法による限界費用の推定手法は、「限界費用価格形成原理」に基づき社会的にのぞましい資源配分を実現し、かつ義肢等製作事業者に妥当な水準の利益をあたえる価格設定を行ううえで有用であると考えられる。また現行公定価格における見込み利益率が詳らかでないという義肢等産業の特殊性を踏まえて、現行公定価格と限界費用を比較しどのように価格を設定するべきかについても検討をおこなった。
臨床的観点からの成果
義肢・装具・座位保持装置が今後も補装具として供給されていくために、製作事業者がつづけて補装具供給を行えるような公的価格設定に貢献したと考えられる。このことは、ひいては義肢等の利用者が今後も安心して補装具を使っていくためにも有用であったと考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究で特に2年次(平成21年度)におこなった人件費・素材費調査は、今後の義肢等の比較的間隔が短いなかで事業者への調査回答負担を抑えつつ価格改定を行ううえでのモデルになることが考えられる。
また人件費・素材費に付随させるべき費用や利益の水準を量る上で限界費用を踏まえた価格設定を検討する本研究の手法は、事業者への調査回答負担を抑えつつその目的を達するのに有用な方法を提示したと考えられる。
その他行政的観点からの成果
本研究において実施した義肢、装具、座位保持装置の事業者を対象とした調査結果は、平成21年度および22年度の補装具価格改定に向けた基礎データとして厚生労働省に提供され、補装具検討会でも報告された。本研究の結果は平成21、22年度に向けた義肢等基準価格の改定の際、人件費の想定単価(時給)や素材費の想定額の引き上げ検討の参考とされた。
また調査結果を基に完成用部品供給事業者から義肢等製作事業者への販売価格(すなわち、部品登録・変更申請時の申請価格)を平成21 年度以降公表することになった。
その他のインパクト
国立障害者リハビリテーションセンター研究所オープンハウスにおいて、研究の途中経過を展示した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
平成22年度執筆・投稿予定。
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
平成21年度、日本義肢装具学会、リハ工カンファレンス、日本経済学会秋季大会にて報告。 平成22年度、さらに1件報告予定。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
・補装具費改訂の参考に。 ・義肢等完成用部品の価格表示方法改訂の参考に。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-05-23