優良補助犬の効率的育成と普及に関する生殖工学的研究

文献情報

文献番号
200929007A
報告書区分
総括
研究課題名
優良補助犬の効率的育成と普及に関する生殖工学的研究
課題番号
H19-障害・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 宏志(国立大学法人 帯広畜産大学 原虫病研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者の社会参加の促進に資するため、補助犬の人工繁殖技術の開発と実用化および補助犬適性の遺伝子レベルでの診断系の開発を果たし、優秀な補助犬の効率的育成とその啓蒙・普及を達成することを目的に、最終年度では、(I) 盲導犬の人工授精法の普及に関する検討、(II) 盲導犬の卵巣移植法の確立、(III) イヌ胚の凍結保存技術、胚移植技術の開発および(IV) 遺伝子多型の解析による盲導犬適性検査法の開発を行った。
研究方法
1)新規保存液による凍結保存の実用化を図るため、保存液組成の改良を図る。また、他の盲導犬協会への普及を継続する。2)移植後の卵胞数減少を克服するための、より効果的な卵巣移植法を見出す。3)胚移植による産仔の獲得の効率化のため、凍結融解条件を精査する。4)解析対象遺伝子とサンプル数を拡大して、10遺伝子、600サンプルの多型解析を実施する。疾患関連遺伝子については、進行性網膜萎縮症の遺伝子スクリーニングを継続実施する。
結果と考察
1) 全国5ケ所の盲導犬事業所で継続的人工授精の試行・取り組みがなされるに至っており、これらの活動に対応した親子鑑定サービスを提供した。さらに、イヌ精子の受精能力の評価にマウス卵子を用いた顕微授精系が利用可能であることを示した。2) 移植後の卵巣組織の卵胞数減少抑制に対するアシアロ化エリスロポエチン効果は、全身投与においても局所投与と同様に発揮することを明らかにした。3) これまでに、4頭の受容雌から合計7頭の凍結胚由来の産仔を得ていることから、本研究において開発されたイヌ胚の凍結融解技術は、十分な再現性を確保しているものと考えられる。4) 盲導犬および非盲導犬(不合格犬)について、14遺伝子の26多型について解析を行った結果、合計4種類の多型について、盲導犬群と非盲導犬群の遺伝子頻度に有意な差が認められた。これら4種類の多型について、盲導犬群で有意に頻度の高い遺伝子型すべてを持つイヌの合格率は100%であった。以上の成績は、性格関連遺伝子の遺伝子多型が、盲導犬適性の指標と成り得ることを示していると思われる。また、進行性網膜委縮症(PRA)摘発のための遺伝子検査サービスを盲導犬事業所に対して継続的に実施した。
結論
研究計画に沿った活動によって、新規のイヌ凍結精子保存液の開発を果たすとともに、人工授精の実用化、普及を進展させた。また、ブルセラ症、進行性網膜委縮症の診断・検査系を確立し、診断サービスを継続的に提供した。加えて、世界で初めて、凍結胚由来の産仔を、しかも非外科的移植によって得たことは、特筆すべき成果であると考える。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200929007B
報告書区分
総合
研究課題名
優良補助犬の効率的育成と普及に関する生殖工学的研究
課題番号
H19-障害・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 宏志(国立大学法人 帯広畜産大学 原虫病研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者の社会参加の促進に資するため、補助犬の人工繁殖技術の開発と実用化および補助犬適性の遺伝子レベルでの診断系の開発を果たし、優秀な補助犬の効率的育成とその啓蒙・普及を達成する基礎・応用研究を計画した。
研究方法
研究目的を達成するため、(I) イヌ精子の超急速凍結保存法の開発、(II) 盲導犬の人工授精法の普及に関する研究、(III) 盲導犬の卵巣移植法の確立、(IV) イヌ胚の凍結保存技術、胚移植技術の開発、(V) 遺伝子多型の解析による盲導犬適性検査法の開発を行った。
結果と考察
(I)スキムミルクとグルコースを基礎とする新規のイヌ精子の凍結保存液を開発した。卵黄を用いないイヌ凍結精子の利用により、イヌ遺伝子資源の流通が、一層、容易になる。(II)人工授精の実用化を果たした。全国5ケ所の盲導犬事業所で人工授精の試行・取り組みがなされるに至っており、北海道盲導犬協会では、半数以上が凍結精子由来の産仔で占められている。また、ブルセラ症の迅速、的確な摘発のための検査系を確立し、全国の盲導犬協会8施設の繁殖犬、育成犬についての検査サービスを継続的に提供した。(III)卵巣移植術においては、移植後の卵巣組織の卵胞の多くが失われるが、この抑制にはアシアロ化エリスロポエチンの投与が有効であることを示した。(IV)エチレングリコールとシュークロースから成るガラス化保存液で胚の凍結保存を行い、これを非外科的に移植した結果、世界で初めて、イヌ凍結胚由来の産仔を得ることに成功した。これまでに、4頭の受容雌から合計7頭の凍結胚由来の産仔を得ていることから、十分な再現性を確保しているものと考えられる。(V)盲導犬および非盲導犬(不合格犬)について、14遺伝子の26多型について解析を行った結果、合計4種類の多型について、盲導犬群と非盲導犬群の遺伝子頻度に有意な差が認められた。これら4種類の多型について、盲導犬群で有意に頻度の高い遺伝子型すべてを持つイヌの合格率は100%であった。以上の成績は、性格関連遺伝子の遺伝子多型が、盲導犬適性の指標と成り得ることを示していると思われる。また、進行性網膜委縮症摘発のための遺伝子検査系を開発し、盲導犬事業所に対して検査サービスを継続的に実施した。
結論
研究計画に沿った活動によって、新規のイヌ凍結精子保存液の開発を果たすとともに、人工授精の実用化、普及を進展させた。また、ブルセラ症、進行性網膜委縮症の診断・検査系を確立し、診断サービスを継続的に提供した。加えて、世界で初めて、凍結胚由来の産仔を、しかも非外科的移植によって得たことは、特筆すべき成果であると考える。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200929007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
性格関連遺伝子の遺伝子多型が、盲導犬適性の指標と成り得ることを示したこと、世界で初めて凍結胚由来の産仔を、しかも非外科的移植によって得たことは、特筆すべき成果であると考える。
臨床的観点からの成果
本研究の成果は、盲導犬、介助犬等の補助犬のみならず、麻薬探知犬や検疫犬等の他の使役犬の普及や質の向上にも貢献し得ることから、我が国の安全・安心で快適な社会の構築ばかりではなく、国際貢献にも利用し得るものと考える。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
本事業を通じて、各盲導犬事業所における公衆衛生に関する意識の向上が図られた。このことは、補助犬として能力が優れているだけでなく、人獣共通感染症の蔓延を防ぐために微生物学的にも清浄な補助犬を障害者に提供しなければならないという社会的意義が理解されたものと考える。
その他のインパクト
07/2/25朝日新聞(東京)優秀な盲導犬増やせ 適した性格DNA解析 07/3/10朝日新聞(英語版)07/4/15日本経済新聞盲導犬適した犬遺伝子情報特定 精巣・卵巣を冷凍保存 08/9/20読売新聞(夕刊)凍結受精卵で子犬誕生 08/9/26毎日新聞 凍結受精卵で成功 適性高い盲導犬を繁殖 07/9/14NHKお元気ですか日本列島-優れた盲導犬を残したい- 08/9/13NHKニュース7 盲導犬の繁殖に光

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
14件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Abe Y, Suwa Y, Ueta YY, et al.
Preimplantation development of embryos in laborador retrievers.
J. Reprod. Dev. , 54 , 135-137  (2008)
原著論文2
Abe Y, Lee DS, Kim SK, et al.
Vitrification of canine oocytes.
J. Mamm. Ova Res. , 25 , 32-36  (2008)
原著論文3
Abe Y, Lee DS, Sano H, et al.
Artificial insemination with canine spermatozoa frozen in a skim milk/glucose-based extender.
J. Reprod. Dev. , 54 , 290-294  (2008)
原著論文4
Suzuki H, Ishijima T, Maruyama S, et al.
Beneficial effect of desialylated erythropoietin adminiatration on the frozen-thawed canine ovarian xenotransplantation.
J. Assist. Reprod. Genet.J. , 25 , 571-575  (2008)
原著論文5
Ishijimja T, Abe Y, Suzuki H.
Follicular loss of the cryopreserved canine ovary after xenotransplantation.
J. Mamm. Ova Res. , 26 , 61-65  (2009)
原著論文6
Suwa Y, Abe Y, Lee DS, et al.
Individual fertility differences in the frozen-thawed spermatozoa among semen donors in the Labrador Retriever.
Reprod. Med. Biol. , 8 , 125-129  (2009)
原著論文7
Abe Y, Asano T, Ali M, et al.
Vitrification of canine cumulus-oocyte complexes in DAP213 with a cryotop holder.
Reprod. Med. Biol. , 9 , 115-120  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-