発達障害児に対する有効な家族支援サービスの開発と普及の研究

文献情報

文献番号
200929006A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害児に対する有効な家族支援サービスの開発と普及の研究
課題番号
H19-障害・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 雅彦(鳥取大学大学院 医学系研究科)
  • 野邑 健二(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)
  • 宮地 泰士(浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター)
  • 永田 雅子(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,発達障害児に対する有効な家族支援サービスモデルを開発し,全国的な普及を可能にすることであった。最終年度にあたる今年度は,人材育成に関連した効果研究を重ねるとともに,全国での普及モデルを作成し,全国的に市町村の子育て支援や療育支援の現場での実施が可能になるパッケージの提供を目指すことにある。
研究方法
1.地方自治体においてペアレント・トレーニングを実施し,その効果の検討を行う。2.発達障害児を持つ親を対象にしたペアレント・トレーニングを実施している29機関に対してプログラムの内容や実施・運用にかかわる課題について調査を実施した。3.子育て期の親と密接にかかわることのできる保育士を支援者として育成することを目的として,ペアレントトレーニングの支援者育成プログラムを実施して、その効果と課題の検討を行った。4.発達障害児を持つ母親の精神的健康(抑うつ,睡眠障害)について把握するための研究を行った。5.全国の発達障害児臨床を行う医師を対象に,親への診断説明に関する状況とそれぞれの意識調査ならびに広汎性発達障害児本人への診断説明に関する状況とそれぞれの意識調査を行った。
結果と考察
1.ペアレント・トレーニングを通して、母親の認知的枠組みの変容が起こることが明らかになり、普及のためのプログラムの効果が明らかになった。2.発達障害児を持つ親を対象にしたペアレントトレーニングを実施機関の調査から、実施のうえでの運営上の課題としてスタッフの確保や養成,他の業務とのバランスに課題を持つことが示唆された。3.ペアレント・トレーニングを実施する支援者育成プログラムの効果と課題を検証し、保育士が支援者として十分に貢献できることを示した。4.発達障害児を持つ母親の精神的健康調査の結果、抑うつや睡眠障害者の重症者割合の多さを示し,家族支援の重要性をが確認された。5.全国の発達障害児臨床を行う医師を対象にした調査から,現状では診断説明後の療育や支援が十分展開できない実態が明らかになった。
結論
 発達障害の子どもを持つ家族の家族支援において、実際に、発達障害の子どもを持つ親たちの精神的健康さの問題の深刻さを考えると、子どもの支援のためにと言うスタンスよりも、まずは、母親自身の子育てのうまくいかなさに関連する認知の歪みを、現実を明確に把握できるようにすることで修正していくような、認知行動療法的な取り組みを行うことが有効であることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200929006B
報告書区分
総合
研究課題名
発達障害児に対する有効な家族支援サービスの開発と普及の研究
課題番号
H19-障害・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 雅彦(鳥取大学大学院 医学系研究科)
  • 野邑 健二(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)
  • 宮地 泰士(浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター)
  • 永田 雅子(名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発達障害児に対するサービスにおいて,年代を通じた途切れのない支援体制を作るためには何よりも家族の理解が重要であり,家族支援を充実することによって実効性のある支援を実現することが可能になる。本研究の目的は発達障害児の支援につながる家族支援サービス・モデルを構築し,実際に活用できる支援技法を開発し,人材養成と普及の方法を検討していくことである。
研究方法
1.家族の支援準備態勢づくりのモデルの開発:発達障害児を持つ母親の精神的健康度を改善するプログラム内容の検討および発達障害児の支援につながる保護者の理解の形成のための取り組みに関する研究,2.支援技法と人材育成と普及方法の開発:広汎性発達障害の両親を対象としたペアレント・トレーニングの実施,参加者に対する効果の検討および,人材育成プログラムを並行し,プログラムの普及効果についての検討,3.家族支援サービスモデルの開発:地域における診断確定前の子育て支援のなかで子育て困難度を把握し,家族支援を行うことのできるモデルの開発、の個々の研究に関して実証的な方法論で取り組んだ。
結果と考察
1.発達障害児を持つ母親の精神的健康度において多様な形での実証的な調査を行い、その精神的健康上の問題は、抑うつ状態を中心に、大きな課題であることが明らかになった。2.ペアレント・トレーニングの効果の検討を行い、効果的なプログラムであることが確認され、子どもの支援のためにと言うスタンスよりも、まずは、母親自身の子育てのうまくいかなさに関連する認知の歪みを、現実を明確に把握できるようにすることで修正していくような、認知行動療法的な取り組みを行うことが有効であることが明らかになった。3.保育園の保育士などを対象とした家族支援の人材育成プログラムを実施し、具体的なプログラムを通じた取り組みの可能性が確認できた。
結論
 発達障害の子どもを持つ家族の家族支援において、実際に、発達障害の子どもを持つ親たちの精神的健康さの問題の深刻さを考えると、子どもの支援のためにと言うスタンスよりも、まずは、母親自身の子育てのうまくいかなさに関連する認知の歪みを、現実を明確に把握できるようにすることで修正していくような、認知行動療法的な取り組みを行うことが有効であることが明らかになった。そして、そうした部分での取り組みは、汎用性が高く、支援スキルの習得も容易であり、地域での普及に役立つことが明らかになった。こうした地域支援の具体的な取り組みの方向性に関して、子育て支援からと、保健・医療ケアからの2つの道筋において、地域で人を養成しながら取り組んでいくための具体的な提言を行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2010-09-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200929006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
発達障害のある子どもを持つ家族の精神的健康に関しての実態把握を行うことができ、家族の精神的健康の問題が大きく、家族支援として家族自身への社会的なサポートの必要性が明確になった。また、実際の家族支援の技法として、ペアレント・トレーニングの効果の検討を行った結果、自己イメージの変容が起こることを明らかにした。両親の認知に焦点をあてた、認知行動療法的なペアレント・トレーニングを、子どもの行動改善の前提に位置づけることで、より効果的な家族支援を構築できる可能性を明らかにした。
臨床的観点からの成果
臨床的には、家族支援の場合に、子どもの障害に対する療育の観点の前に、家族に対する社会的サポートを構築することの重要性を明確にすることができた。また、実際の家族支援技法として、ペアレント・トレーニングに関して、普及が容易なモデルの開発を行うことができ、子どもの療育的な観点ではなく、まず両親、特に母親自身の認知を、子どもと自分の行動に焦点を当てることでより肯定的に方向付け、取り組みを可能にすることができることを明らかにした。
ガイドライン等の開発
家族支援のガイドラインについては、現在、出版準備中である。家族支援の前提としての精神的健康さの把握と対応。家族支援の実際として、子育て支援の枠組みでのペアレント・トレーニングの実施と母親の認知の修正、グループワークによる地域の子育て仲間とのつながり作りについて、さらには行動障害のある発達障害の子どもに対する家族調整や応用行動分析的な介入の仕方。支援者については、障害告知の仕方など、具体的なガイドラインを開発した。
その他行政的観点からの成果
行政的には、特に複数の自治体との共同で、実際の家族支援として、ペアレント・トレーニングの実践と、ペアレント・トレーニングを提供する支援者の養成に取り組むことができた。特別な専門性が必要な行動障害のある発達障害の子どもに対する家族支援や、成人期になった困難例に対する専門家の支援方法の前に、子育て支援の枠組みの中で保育士や保健師などが簡易に取り組めるような具体的な方法を開発し、実際に提供することができた。
その他のインパクト
財団法人日本障害者リハビリテーション協会の研究成果発表会を実施し、成果の発表を行った。また、調査に協力していただいたNPO法人アスペ・エルデの会において、調査報告を兼ねて、家族の精神的健康と家族支援の実際について公開セミナーでの報告を行った。また、国立精神神経センター発達障害早期総合支援研修における研修のなかで取り組まれるとともに、厚生労働省の研修にも取り入れられた。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
10件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
川上ちひろ、辻井正次
高機能広汎性発達障害を持つ子どもの保護者へのペアレント・トレーニングー日本文化のなかで子育てを楽しくしていく視点から
精神科治療学 , 23 (10) , 1181-1186  (2008)

公開日・更新日

公開日
2013-07-05
更新日
-