文献情報
文献番号
200928001A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病多発神経障害の臨床病期分類の確立と病期に基づいた治療ガイドラインの作成
課題番号
H20-糖尿病等・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
八木橋 操六(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 糖尿病戦略等研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、全国多施設において糖尿病多発神経障害(以下DN)の実態を経時的に把握し、いかに進行するかを捉え、DNの診断、病期判定、予防・管理・治療の指針を確立することにある。DNを積極的に診断し、対処することは、網膜症、腎症あるいは大血管障害の発症・進展さらに糖尿病患者のQOL低下をも防ぎ、医療経済学的にもその影響は計り知れない。
研究方法
前向き調査のための糖尿病症例についてDNの病態観察を行い、新規登録を行う。実施可能例については、神経生理学的検査および皮膚生検を実施する。インフォームドコンセント取得後、コード化したサンプルによって皮膚病理評価を行う。DNの病期判定と客観的指標との関連の綜合解析を行う。初年度、2年目におけるDN病態についての疫学解析、進展調査の統計学的解析方法の検討をする。DNの病態と客観的指標との関連については、統計学的に解析し、診断基準との整合性、病期進展との関連について検討する。横断面でのDN病期に与える因子解析については、横断面解析からDNに関連する一般的身体徴候、血液パラメーターを解析し、リスク分析する。病期分類客観的指標の個別の検討については、各施設で、病期分類との関係を特化して検討し、データは申請者が管理する。
結果と考察
本プロジェクトでは、DNの簡易診断基準をベースにした臨床病期分類を作成し、その妥当性の検証を試みた(初年度240例、次年度1005例)。神経生理学的検査で病期分類との対応を検討し、さらに一部で皮膚生検を実施した結果、DNが糖尿病発症早期あるいはそれ以前から進展することを証明できた。一方、多変量解析により、進展期神経障害の危険因子として糖尿病罹病期間、HbA1c、高血圧が有意な影響因子であることも判明した。この結果から、提唱されているDNの臨床病期分類が簡便で、臨床応用に適切であること、また簡易診断基準で神経障害なしとされても表皮神経の脱落があることから、さらなる早期診断が必要であることが明らかにされた。
結論
これまで「多発神経障害」の診断については、簡易診断基準を確立してきたが、「多発神経障害」の診断のあとに何をすべきかの指針が確立されていなかった。今回の研究の結果から、さらに「多発神経障害」の病期分類から、より具体的に「神経障害」の進展の予防、また危険因子排除の方向から、具体的な治療指針が可能となってきた。また、病期の進展の評価方法もより具体的に提示することが可能となってきている。
公開日・更新日
公開日
2015-10-07
更新日
-