成人に達した先天性心疾患の診療体制の確立に向けた総合的研究

文献情報

文献番号
200926060A
報告書区分
総括
研究課題名
成人に達した先天性心疾患の診療体制の確立に向けた総合的研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立循環器病研究センター 小児循環器部)
研究分担者(所属機関)
  • 友池 仁暢(国立循環器病研究センター 院長)
  • 八木原 俊克(国立循環器病研究センター 副院長)
  • 池田 智明(国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
  • 中西 敏雄(東京女子医科大学 循環器小児科)
  • 丹羽 公一郎(千葉県立循環器病センター 成人先天性心疾患診療部)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター 小児循環器科)
  • 八尾 厚史(東京大学 医学部)
  • 赤木 禎治(岡山大学 医学部)
  • 森崎 隆幸(国立循環器病研究センター 分子生物学部)
  • 市田 蕗子(富山大学医学部付属病院 小児循環器内科)
  • 松井 三枝(富山大学大学院 医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人先天性心疾患患者は、年齢面から小児専門施設で受け入れが困難な一方、複雑な血行動態から循環器内科施設でも受け入れが敬遠される傾向にある。また疾患特有の続発症(慢性心不全、不整脈)や生活習慣病(高血圧、糖代謝異常)、さらに女性では妊娠出産に関連した問題が加わるため、専門チームによる診療体制が必要である。本研究は、全国の多施設共同研究により成人先天性心疾患患者が安心して診療を受けることのできる体制を1日も早く確立し、その生命予後と生活の質の向上を図ることを目的とする。
研究方法
1. 臨床調査をもとにした成人先天性心疾患診療の現状把握および患者さんがどのような診療体制を望んでいるのかについてアンケート調査を行う。その結果を分析するとともに、既存の欧米施設のデータと比較し、日本における成人先天性心疾患診療体制の方向性を決定する。また小児循環器科、循環器内科、心臓血管外科、産婦人科、麻酔科、臨床心理など複数診療科の参加による、成人先天性心疾患診療の代表モデル施設作りに向けた具体的目標設定を行う。
2. 循環器内科および小児循環器の研修医や専攻医に向けた成人先天性心疾患の臨床研修プログラム、さらには専門スタッフ養成のためのトレーニングプログラムを作製する。


結果と考察
先天性心疾患の死亡率は減少に転じたが、その要因として、診断技術の進歩、外科治療の進歩、薬物治療の進歩などが考えられる。多施設調査では、既に大部分の循環器病診療施設で成人先天性心疾患の外来および入院診療を行われているが、専門の医療体制をとっている施設は非常に少ない。今後、成人患者の持続的な増加とともに、診療体制の確立、専門医療従事者の育成が急務である。これと同時に、数少ない専門施設、専門医師との情報共有と診断、治療方針の決定を行うために、今後、遠隔医療支援システムを有効に用いることが望まれる。今後成人循環器内科医師の専門的トレーニングが必要であるが、経験豊富な小児科や心臓外科との提携は必須と考えられた。
結論
成人先天性心疾患患者の専門施設を全国に拠点的に確立するとともに、内科循環器医ヘの啓蒙および教育活動を積極的に行う必要がある。さらに成人先天性心疾患の認定医制度を確立して、成人先天性心疾患に従事する多科にわたる医師を養成する必要がある。また同時に遠隔診断システムの確立、診療可能な病院情報の広報、患者の長期にわたる診療情報の整理などが必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
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