禁煙治療薬による喫煙関連疾患予防法の再評価と効果的な禁煙指導法の確立と普及のための多施設共同臨床試験

文献情報

文献番号
200926059A
報告書区分
総括
研究課題名
禁煙治療薬による喫煙関連疾患予防法の再評価と効果的な禁煙指導法の確立と普及のための多施設共同臨床試験
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
東 純一(学校法人兵庫医科大学 兵庫医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤尾 慈(大阪大学大学院薬学研究科)
  • 南畝 晋平(学校法人兵庫医科大学 兵庫医療大学 薬学部 )
  • 薗 はじめ(薗はじめクリニック)
  • 伊藤 継孝(薬効ゲノム情報株式会社)
  • 前田 真貴子(学校法人兵庫医科大学 兵庫医療大学 薬学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
禁煙を希望する喫煙者は多いが、喫煙習慣により形成されるニコチン依存により、禁煙には大きな困難が伴う。この問題を解決するには、禁煙補助薬の適正使用法の考案は重要である。本研究は、「個の医療」に立脚し、個々の患者における禁煙補助薬に対する反応性の個体差を大規模臨床試験により評価し、日本人における喫煙習慣・禁煙指導に関する新たなエビデンスを構築することを目的とする。
研究方法
個々の患者における禁煙補助薬に対する反応性の個体差の臨床評価を行うため、
①ニコチン製剤とアセチルコリン受容体部分的遮断薬(バレニクリン)との比較対照臨床試験を実施し、②ニコチン依存・禁煙達成に寄与する遺伝子を探索した。
結果と考察
①臨床試験:平成21年7月にキックオフミーティングを開催、臨床試験を開始し、これ迄に200名以上の喫煙者の参加を得た。被験者を追跡調査するための被験者フォローアップシステムも構築した。また、新たな被験者を募るため、各医療機関に掲示する広報用ポスターを作成した。
②遺伝子探索研究:ニコチン依存・禁煙達成に関する遺伝子について文献調査、及び喫煙者約700例のゲノムを用いたスクリーニング解析により、バレニクリンの薬理学的ターゲットであるニコチン性アセチルコリン受容体α4サブユニットを含む複数の遺伝子多型がニコチン依存、禁断症状、離脱症状に関わる可能性を見出した。

喫煙習慣を遺伝的側面から検討し、個人に最適な禁煙指導法、禁煙補助薬の適正使用法を考案することで、治療前に薬物療法の適応、禁煙補助薬選択の根拠及び副作用発現の可能性を予見でき、治療方針の決定に役立つ。また、喫煙者は、ニコチン代謝についての自らの体質を知ることで、再喫煙の誘惑に抵抗できる。一方、喫煙によるニコチン代謝活性能の誘導についてin vitro で検討し、新たにタバコ煙含有成分がニコチン代謝関連酵素を誘導することを明らかにした。この結果は、喫煙行動自体が喫煙習慣をさらに悪化させる喫煙習慣の悪循環形成を促進することを示唆する。
結論
個人情報保護とセキュリティとを確保した多施設共同大規模臨床試験を開始した。本研究によって、禁煙補助薬に関する新たなエビデンスを検出し、「禁煙補助剤使用ガイドライン」の提案が可能となる。また、遺伝情報を組入れた禁煙治療の確立は、喫煙者のアドヒアランス向上にも繋がり、喫煙に基づく疾病の予防および効率的な治療に寄与し、国民の健康増進、受動喫煙の問題の解決、最終的には医療費の削減にも繋がる。

公開日・更新日

公開日
2010-10-19
更新日
-