大規模コホートを用いた生活習慣病の一次予防のための運動量策定に関する運動疫学研究

文献情報

文献番号
200926052A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模コホートを用いた生活習慣病の一次予防のための運動量策定に関する運動疫学研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 秋三(九州大学 健康科学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上園 慶子(九州大学 健康科学センター)
  • 眞崎 義憲(九州大学 健康科学センター)
  • 長野 真弓(九州大学 健康科学センター)
  • 山津 幸司(佐賀大学 文化教育学部)
  • 内藤 義彦(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 清原 裕(九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2006年,わが国の「新しい健康づくりのための運動基準・指針」,「健康づくりのための身体活動・運動量の基準値」,および「健康づくりのための最大酸素摂取量の基準値」作成に,多くの研究が参考にされたが,その多くは欧米人を対象とした疫学研究であり,日本人に関する論文は数本で参考程度に留まっている.そこで本研究は,日本人地域住民および勤労者の身体活動量実測調査,身体活動量と種々の生活習慣病発症との関連の検討を計画した.これによって,生活習慣病の一次予防からみた身体活動量・運動量基準値策定の確立を図る.
研究方法
久山町研究における「久山コホート」,㈱両備ホールディングス,㈱CRCにおける「職域コホート」で,加速度計およびJALSPAQによる身体活動量の実測調査と質問紙調査をおこなった。「久山コホート」では、2009年の久山町循環器健診の受診,3軸加速度計を用いた1週間の身体活動量調査に参加,1日8時間以上の計測日が3日以上得られた20歳以上の1,878名(参加率80.8%)を対象に,入水時以外の起床から就寝までの身体活動量を実測した.
結果と考察
1988年に久山町循環器健診を受けた心血管病の既往のない40歳以上の住民2,632名において、定期的な運動は脳梗塞発症の独立した予防因子であった。2つ(地域と職域)の新規コホートで実施した、3軸加速度計による身体活動量の実態調査では、地域住民1,878名の1日平均歩行数は約6,000歩程度、日常生活で消費する身体活動パターン(歩行もしくは生活活動)には性差を認めた。職域では現時点で解析可能であった300名の身体活動量は、極めて不足傾向にあることが判明した。また、勤労男性の身体活動量を規定する有益な質問項目は「仕事中の姿勢」であり、体重当たりの1日総消費エネルギー量は、立位姿勢での身体活動量が多いほど多いという量-反応関係を認めた。
結論
わが国の地域一般住民における定期的な運動は脳梗塞の独立した予防因子である.また,身体活動量の実態が明らかとなった.大規模疫学研究や特定保健指導のような現場で比較的容易に導入しやすい身体活動質問紙の開発が進み,職域コホートにおいて高い妥当性を得た.また,ICTを活用した非対面型介入プログラムは,従来型の対面指導中心の保健指導を補うツールの一つとして有用であると考えられた.今後,生活習慣病の一次予防におけるわが国独自の身体活動・運動に関する科学的根拠の蓄積,身体活動量の評価および介入ツールの開発と確立を進めていく必要がある.

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-