わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200926038A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
豊田 一則(国立循環器病研究センター 病院(脳血管内科))
研究分担者(所属機関)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学 循環器内科)
  • 中川原譲二(中村記念病院 脳神経外科)
  • 古井 英介(財団法人広南会 広南病院 脳血管内科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学 脳神経外科)
  • 長谷川泰弘(聖マリアンナ医科大学 神経内科)
  • 奥田 聡(国立病院機構名古屋医療センター 神経内科)
  • 山上 宏(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
  • 木村 和美(川崎医科大学 脳卒中医学)
  • 岡田 靖(国立病院機構九州医療センター 脳血管センター 脳血管内科)
  • 古賀 政利(国立循環器病センター  脳血管内科)
  • 永沼 雅基(熊本労災病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中再発予防の根幹を成す内科治療である危険因子管理と抗血栓療法の有効性と安全性を検証するため、国内の脳卒中基幹10施設を選んで3年間の多施設共同研究を行う。
研究方法
4つの多施設共同研究を企画、遂行した。
結果と考察
研究1「rt-PA患者登録研究」では、低用量rt-PA静注療法施行600例の臨床データを解析し、その全体成績として本治療法が国外の標準用量での治療と同等以上の治療成績を得ていることを、国際誌に発表した(Toyoda K, et al: Stroke 2009)。各危険因子と治療成績の関連を調べた多数のサブ解析が進行中である(Nezu T, et al: Neurology 2010など)。研究2「超急性期脳出血への降圧療法に関する研究」では、本主題に関する全国アンケート調査結果を国際誌に発表し(Koga M, et al: Hypertens Res 2009)、国内多数施設が行っていたニカルジピン静注を用いた収縮期血圧140?160 mmHgないしそれ以下への降圧の安全性・有効性を検討するため、研究参加10施設で前向き観察研究を始めた。2010年3月末現在で89例が登録され、主要評価項目である72時間後の症状進行、24時間以内の降圧薬中止を要する副作用は、ともに既往文献から算出した予測値以上に安全な成績を示している。研究3「急性脳主幹動脈閉塞症の実態に関する後ろ向き多施設共同研究」では、rt-PA治療国内承認後の主幹脳動脈閉塞を伴う脳梗塞患者1176例の治療実態を、循委坂井班と合同で登録・解析した。慢性期の転帰良好に、若齢、初期重症度が軽いこと、内頸動脈閉塞例でないこと、再開通療法の施行が関連した。研究4「急性期脳出血患者への抗凝固療法再開に関する多施設共同観察研究」では、心房細動患者の脳出血発症後の抗凝固療法再開について全国アンケート調査を行った。来院時のワルファリン是正手段や抗凝固療法の再開基準とその方法は施設によってさまざまであり、標準化の必要性が示唆された。本研究班参加10施設で、さらなる前向き登録研究を行う予定である。
結論
急性期脳梗塞へのわが国独自の低用量rt-PA静注療法の有効性と安全性、主幹動脈閉塞を伴う急性期脳梗塞患者への急性期治療効果、日本人に多い病型である超急性期脳出血への降圧療法の必要性、抗凝固療法中に発症した脳出血患者への対応など、いずれも未解決の問題に対して一定の研究成果を得、その公表に努めた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
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