今後の特定健康診査・保健指導における慢性腎臓病(CKD)の位置付けに関する検討

文献情報

文献番号
200926027A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の特定健康診査・保健指導における慢性腎臓病(CKD)の位置付けに関する検討
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 毅(公立大学法人 福島県立医科大学 医学部 腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 井関 邦敏(琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部)
  • 吉田 英昭(札幌医科大学医学部内科学第二講座)
  • 鶴屋 和彦(九州大学大学院包括的腎不全治療学講座)
  • 守山 敏樹(大阪大学保健センター)
  • 山縣 邦弘(筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻腎臓病態医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
26,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣病を背景にした心血管疾患(CVD)の一次予防を主眼に開始された特定健康診査(健診)・保健指導では、血清クレアチニン(Cr)値が必須項目でなく、必須項目の尿蛋白に対しても保健指導法の明示がない。本研究では特定健診受診者大規模コホートの前向き観察研究を中心にCVDや死亡の主要な高危険群である慢性腎臓病(CKD)の生活習慣病およびCVDの発症への寄与度、CKD発症・進展に対する諸要因、特定保健指導によるCKD発症・進展、生活習慣病・CVD発症への効果を解析し、種々の要因解析や医療経済解析を踏まえ、CKDの位置付けを明確にした健診・保健指導モデルを提言することを目的とする。
研究方法
約50万人規模の連結可能匿名化データベース(血清Cr値を任意に測定しているコホートを含む)を確立し、順次全国から収集された約11万人分の特定健診初年度データを横断的に解析した。テーマ別ワーキンググループ(WG)では、地域の健診受診者のデータをもとにCKDの頻度、その関連因子および地域差、簡便で安価な尿中微量アルブミン半定性法の有用性(以上要因解析WG)、一般住民健診での各腎健診項目の追加実施による陽性率、偽陽性率、偽陰性率、マルコフモデルを用いた費用効果(以上医療経済WG)、CKDの実態と特定保健指導の関連(以上保健指導WG)を検討した。
結果と考察
CKDとメタボリック症候群の重複は概ね50%未満で、各健診項目との相関も弱く、現行特定健診でCKDを高危険群としてスクリーニングすることは困難で、早期発見には尿蛋白と血清Cr測定が必須であることが確認された。コホートの違い(協会健保と国保)によりCKDの頻度に大きな差があり、解析すべき要因として経済・社会的要因が重要であることが示唆された。一部コホートでの健診へのアルブミン尿測定(ACR)の追加により、尿蛋白試験紙法偽陰性が少なからず存在することが示された。アルブミン簡易定性法はACRと比較的良好に相関し、スクリーニング検査としての有用性が示唆された。医療経済解析では尿蛋白試験紙法による早期発見により腎機能悪化、透析導入を14%以上抑制可能であれば費用効果上、検尿は有用と試算された。蛋白尿とCKDステージは現行特定保健指導レベルと相関せず、CKDの多くは介入対象から洩れることが示された。
結論
現行特定健診における高危険群のスクリーニングに際しての問題点がCKDの視点から示された。今後特定健診受診者の前向き観察研究による経時的変化量を指標に含む要因解析、マルコフモデルによる医療経済解析およびCKD危険群に対する保健指導要項の策定を予定している。

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
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