保健指導への活用を前提としたメタボリックシンドロームの診断・管理のエビデンス創出のための横断・縦断研究

文献情報

文献番号
200926018A
報告書区分
総括
研究課題名
保健指導への活用を前提としたメタボリックシンドロームの診断・管理のエビデンス創出のための横断・縦断研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-021
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
門脇 孝(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 島本 和明(札幌医科大学附属病院内科学)
  • 清原 裕(九州大学大学院医学研究院環境医学分野)
  • 大門 真(山形大学医学部第三内科)
  • 中尾 一和(京都大学大学院医学系研究科臨床病態医科学)
  • 伊藤 千賀子(グランドタワーメディカルコートライフケアクリニック)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座)
  • 伊藤 貞嘉(東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座)
  • 齋藤 康(千葉大学大学院医学研究院細胞治療学)
  • 野田 光彦(国立国際医療センター糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 山内 敏正(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科)
  • 原 一雄(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科)
  • 岡村 智教(国立循環器病センター予防検診部)
  • 北村 明彦(大阪府立健康科学センター健康開発部)
  • 島袋 充生(琉球大学医学部附属病院第二内科)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学健康増進予防医学)
  • 斉藤 功(愛媛大学大学院医学系研究科医療環境情報解析学講座公衆衛生・健康医学分野)
  • 山田 美智子(放射線影響研究所・臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メタボリックシンドロームの診断基準ならびにメタボリックシンドロームに着目した特定健診・特定保健指導に関して,横断的研究・縦断的研究のアプローチから新しいエビデンスを創出する.
研究方法
フォローアップ開始時にウエスト周囲径を測定してあり,その後の心血管疾患発症等のイベントを把握している12コホートのデータを統合したデータベースを構築した.今年度は縦断的研究において特定健診の対象となる40歳?74歳の男性13,257人,女性16,031人について,ウエスト周囲径・BMIと心血管疾患発症との関連,メタボリックシンドロームと心血管疾患発症との関連に加えて,保健指導レベル別にみた心血管疾患発症の予測能について解析した.
結果と考察
日本人において,ウエスト周囲径はBMIと同様にリスクファクター重積に加えて,心血管疾患発症と関連があり,ウエスト周囲径の測定は有用であると考えられた.ウエスト周囲径の基準値を75?90cmの間に設定した場合,非メタボリックシンドローム群に対するメタボリックシンドローム群の心血管疾患発症の年齢調整ハザード比は男性1.5-1.8,女性1.5-1.7であった.これは,メタボリックシンドロームの診断基準におけるウエスト周囲径の基準値を75-90cmの間のどこに設定しても,メタボリックシンドローム群は常に非メタボリックシンドローム群と比較して,男性は1.5-1.8倍,女性は1.5-1.7倍心血管疾患発症のリスクが高いことを意味する.また,メタボリックシンドロームの診断基準を海外の診断基準に準拠させて解析した場合,心血管疾患発症の年齢調整ハザード比に大きな変化は認められなかった.さらに,ウエスト周囲径の基準値を男性85cm,女性90cmとする現行の特定健診における保健指導対象者の選定と階層化の方法は,心血管疾患発症のリスクが高い者の抽出に有効であることが裏付けられた.但し,BMIとウエスト周囲径の基準値をともに満たさなくともリスクファクターが存在あるいは集積している群では,心血管疾患発症のリスクが上昇していることも明らかとなった.
結論
メタボリックシンドロームの診断基準,ならびに特定健診・保健指導におけるウエスト周囲径の位置付けと基準値の設定,保健指導対象者の抽出アルゴリズムに関しては,横断的研究ならびに縦断的研究における検討で示された本研究のエビデンスに加えて,社会的な保健医療資源も勘案しながらも,予防医学的見地から再検討すべきものであると判断する.

公開日・更新日

公開日
2010-09-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200926018B
報告書区分
総合
研究課題名
保健指導への活用を前提としたメタボリックシンドロームの診断・管理のエビデンス創出のための横断・縦断研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-021
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
門脇 孝(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 島本 和明(札幌医科大学附属病院内科学)
  • 清原 裕(九州大学大学院医学研究院環境医学分野)
  • 大門 真(山形大学医学部第三内科)
  • 中尾 一和(京都大学大学院医学系研究科臨床病態医科学)
  • 伊藤 千賀子(グランドタワーメディカルコートライフケアクリニック)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座)
  • 伊藤 貞嘉(東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座)
  • 齋藤 康(千葉大学大学院医学研究院細胞治療学)
  • 野田 光彦(国立国際医療センター糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 山内 敏正(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科)
  • 原 一雄(東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科)
  • 岡村 智教(国立循環器病センター予防検診部)
  • 北村 明彦(大阪府立健康科学センター健康開発部)
  • 島袋 充生(琉球大学医学部附属病院第二内科)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学健康増進予防医学)
  • 斉藤 功(愛媛大学大学院医学系研究科医療環境情報解析学講座公衆衛生・健康医学分野)
  • 山田 美智子(放射線影響研究所・臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メタボリックシンドロームの診断基準ならびにメタボリックシンドロームに着目した特定健診・特定保健指導に関して,横断的研究・縦断的研究のアプローチから新しいエビデンスを創出する.
研究方法
フォローアップ開始時にウエスト周囲径を測定してあり,その後の心血管疾患発症等のイベントを把握している12コホートのデータを統合し,特定健診の対象となる40歳?74歳の者について解析した.横断的研究では,男性16,215人,女性17,760人を対象としてウエスト周囲径・BMIと心血管疾患のリスクファクターの重積の関連について解析した.また縦断的研究では男性13,257人,女性16,031人を対象として,ウエスト周囲径・BMIと心血管疾患発症との関連,メタボリックシンドロームと心血管疾患発症との関連,ならびに保健指導レベル別にみた心血管疾患発症の予測能について解析した.
結果と考察
ウエスト周囲径の増加に伴い,メタボリックシンドロームの平均リスクファクター数・リスクファクター重積者の割合は増加した.平均リスクファクター数が1を超えるウエスト周囲径のカテゴリーは男性では80-85cmから,女性では90-95cmからであった.また,リスクファクター重積を予測するウエスト周囲径に関して検討すると,ROC曲線解析で感度と特異度の和を最大にするウエスト周囲径は,男性85cm前後,女性80cm前後と算出された.ウエスト周囲径の基準値を75-90cmの間に設定した場合,非メタボリックシンドローム群に対するメタボリックシンドローム群の心血管疾患発症の年齢調整ハザード比は男性1.5-1.8,女性1.5-1.7であった.現行の特定健診における保健指導対象者の選定と階層化の方法は,心血管疾患発症のリスクが高い者の抽出に有効であることが裏付けられた.但し,BMIとウエスト周囲径の基準値をともに満たさなくともリスクファクターが存在あるいは集積している群では,心血管疾患発症のリスクが上昇していることも明らかとなった.
結論
メタボリックシンドロームの診断基準,ならびに特定健診・保健指導におけるウエスト周囲径の位置付けと基準値の設定,保健指導対象者の抽出アルゴリズムに関しては,横断的研究ならびに縦断的研究における検討で示された本研究のエビデンスに加えて,社会的な保健医療資源も勘案しながらも,予防医学的見地から再検討すべきものであると判断する.

公開日・更新日

公開日
2010-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
独自のオールジャパンの研究体制の下で,横断的研究・縦断的研究のアプローチから,メタボリックシンドロームの診断基準ならびにメタボリックシンドロームに着目した特定健診・特定保健指導に関する日本人の新しいエビデンスを創出した. 特に,メタボリックシンドロームの定義・診断基準を巡って国際的・学術的な議論がある中で,本研究の成果として得られたエビデンスは,我が国におけるメタボリックシンドロームの定義・診断基準を再検討する上で極めて重要である.
臨床的観点からの成果
日本人において,ウエスト周囲径はBMIと同様にリスクファクター重積や心血管疾患発症と関連があり,ウエスト周囲径の測定は有用であると考えられた.また,メタボリックシンドローム群は非メタボリックシンドローム群と比較して心血管疾患発症のリスクが高まることと,現行の特定健診における保健指導対象者の選定と階層化の方法は心血管疾患発症のリスクが高い者の抽出に有効であることが裏付けられた.より一層効果的な特定健診・保健指導の実施を通じて我が国の心血管疾患発症率が抑制されることが期待される.
ガイドライン等の開発
本研究で得られたメタボリックシンドロームの診断・管理に関する新しいエビデンスは,内臓肥満を診断の必須項目とする我が国のメタボリックシンドロームの定義・診断基準の改訂に関する議論においても極めて有用である.新たな疫学研究および臨床研究を踏まえて科学的検討を行うこととする日本内科学会ならびに関連学会の合同会議の場や,メタボリックシンドロームの診断・管理に関するガイドライン策定等で本研究の成果が反映されることが期待される.
その他行政的観点からの成果
BMI・ウエスト周囲径の基準値を満たさなくともリスクファクターが存在あるいは集積している群では,心血管疾患発症のリスクが上昇していることも明らかとなった.特定健診・保健指導におけるBMI・ウエスト周囲径の位置付けと基準値の設定,保健指導対象者の抽出アルゴリズムに関しては,社会的な保健医療資源も勘案しながら,予防医学的見地から検討すべきものであると判断する.本研究の成果が,保健指導対象者の選定と階層化のアルゴリズムの最適化に関する議論に反映されることが期待される.
その他のインパクト
本研究班に関するホームページを作成し,公開した(http://kourou-metabo.jp/).また,「循環器疾患等生活習慣病対策総合研究・糖尿病戦略等研究 研究成果発表会」等で発表された本研究の成果は,新聞・テレビ・雑誌・インターネットニュース等で幅広く取り上げられ,メタボリックシンドロームならびに特定健診・特定保健指導に対する国民的・社会的な関心の高さを示すものであると考えられた.

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
155件
その他論文(和文)
120件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
60件
学会発表(国際学会等)
31件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
本研究班に関するホームページを作成し,公開した(http://kourou-metabo.jp/).

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Watanabe M, Kokubo Y, Higashiyama A,他
New diagnosis criteria for diabetes with hemoglobin A1c and risks of macro-vascular complications in an urban Japanese cohort: the Suita study.
Diabetes Res Clin Pract ,  (88) , 20-23  (2010)
原著論文2
Okamura T, Kokubo Y, Watanabe M,他
Triglycerides and non-high-density lipoprotein cholesterol and the incidence of cardiovascular disease in an urban Japanese cohort: The Suita study.
Atherosclerosis ,  (209) , 290-294  (2010)
原著論文3
Higashiyama A, Okamura T, Ono Y, 他
Risk of smoking and metabolic syndrome for incidence of cardiovascular disease--comparison of relative contribution in urban Japanese population: the Suita study.
Circ J ,  (73) , 2258-2263  (2009)
原著論文4
櫻井勝, 三浦克之, 中村幸志,他
中年期日本人男性における腹部肥満の有無別に見た代謝異常集積と脳心血管疾患発症との関連
日循予防誌 , 44 (1) , 1-9  (2009)
原著論文5
Hirokawa W, Nakamura K, Sakurai M,他
Mild metabolic abnormalities, abdominal obesity and the risk of cardiovascular diseases in middle-aged Japanese men.
J Atheroscler Thromb  (2010)
原著論文6
Kuramochi D, Unoki H, Bujo H,他
Matrix metalloproteinase 2 improves the transplanted adipocyte survival in mice.
Eur J Clin Invest. , 38 (10) , 752-759  (2008)
原著論文7
Unoki H, Bujo H, Jiang M,他
Macrophages regulate tumor necrosis factor-alpha expression in adipocytes through the secretion of matrix metalloproteinase-3.
Int J Obes (Lond). , 32 (6) , 902-911  (2008)
原著論文8
Kusakabe T, Tanioka H, Ebihara K, 他
Beneficial effects of leptin on glycaemic and lipid control in a mouse model of type 2 diabetes with increased adiposity induced by streptozotocin and a high-fat diet.
Diabetologia , 52 (7) , 657-683  (2009)
原著論文9
Nakagawa Y, Kuwahara K, Takemura G,他
p300 plays a critical role in maintaining cardiac mitochondrial function and cell survival in postnatal hearts.
Circ Res. , 105 (8) , 746-754  (2009)
原著論文10
Oyamada N, Sone M, Miyashita K,他
The role of mineralocorticoid receptor expression in brain remodeling after cerebral ischemia.
Endocrinology. , 149 (8) , 3764-3777  (2008)
原著論文11
Tanaka T, Masuzaki H, Yasue S,他
Central melanocortin signaling restores skeletal muscle AMP-activated protein kinase phosphorylation in mice fed a high-fat diet.
Cell Metab. , 5 (5) , 395-402  (2007)
原著論文12
Noguchi M, Hosoda K, Fujikura J,他
Genetic and pharmacological inhibition of Rho-associated kinase II enhances adipogenesis.
J Biol Chem. , 282 (40) , 29574-29583  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-