多施設コホートを基盤とした糖尿病・メタボリックシンドロームの発症要因と脳卒中・心筋梗塞の発症に果たす役割に関する前向き研究

文献情報

文献番号
200926015A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設コホートを基盤とした糖尿病・メタボリックシンドロームの発症要因と脳卒中・心筋梗塞の発症に果たす役割に関する前向き研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉政 康直(国立循環器病センター 動脈硬化代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 雄平(国立循環器病センター 高血圧腎臓内科)
  • 清原 裕(九州大学医学研究院 環境医学)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学 内科学第2講座)
  • 斉藤 功(愛媛大学 公衆衛生学)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病センター動脈硬化代謝内科)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病センター 予防検診部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、糖尿病、特に食後高血糖が循環器疾患のハイリスクであるかどうか糖負荷検査を実施し、これらの疾患の早期診断、糖尿病の有効な予防方法の確立、脳卒中や心筋梗塞の発症を減らす具体的方法の確立を目的とする。またそれが国の政策立案に十分貢献し、国民の保健・医療・福祉の向上につながる結果となることを目的とする。
研究方法
吹田市、久山町、端野・壮瞥町研究の対象者9,390名(男性4,222名、女性5,168名)のベースライン時健診と75g糖負荷検査の結果を用いて、平均観察期間13.2年の追跡研究を行った。指定統計調査調査票の目的外申請を行い、原死因の把握を行った。糖負荷は、空腹時に75g糖液を服用させて負荷2時間後に血糖を測定し、空腹時及び負荷後血糖値から正常群、IFG群IGT群、糖尿病群に分け、正常群を基準に、調整Cox比例ハザードモデルを用いて原死因別のリスクを検討した。
結果と考察
正常群を基準として、IFG、IGT、糖尿病型の全死亡に対する調整ハザード比は1.1 (0.9-1.3)、1.2 (1.0-1.4)、1.7 (1.4?2.0)倍であった。また、女性のIFG、IGT、糖尿病型の全死亡に対する調整ハザード比は1.4 (1.0-1.8)、1.5 (1.1-2.0)、2.2 (1.6?3.1)倍であった。循環器病死亡のリスクは、IFG+IGT群では1.7、DM群では1.8と有意であった。悪性腫瘍死のリスクはIFG群1.8、糖尿病群1.7でいずれも有意に高かった。喫煙は糖尿病や境界型の死亡のリスクをさらに上げることが分かった。
結論
9千名の一般住民の糖負荷検査のコホート解析の結果から、男性の糖尿病型、女性の境界型と糖尿病型は全死亡のリスクである。さらに喫煙がそのリスクを上げるため、糖尿病、境界型の血糖コントロールと同時に禁煙指導を進めていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200926015B
報告書区分
総合
研究課題名
多施設コホートを基盤とした糖尿病・メタボリックシンドロームの発症要因と脳卒中・心筋梗塞の発症に果たす役割に関する前向き研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉政 康直(国立循環器病センター 動脈硬化代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 雄平(国立循環器病センター 高血圧腎臓内科)
  • 清原 裕(九州大学医学研究院 環境医学)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学 内科学第2講座)
  • 斉藤 功(愛媛大学 公衆衛生学)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病センター 動脈硬化代謝内科)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病センター 予防検診部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ベースライン時に糖負荷検査と腹囲が測定されているとともに、動脈硬化に関する検査が精密に実施された、吹田市(都市部)、久山町(郊外)、端野・壮瞥町(農村部)の3地域のコホート研究を統合した9千人を対象として、糖尿病、特に食後高血糖が循環器疾患のハイリスクであるかどうか糖負荷検査を実施し、これらの疾患の早期診断、糖尿病の有効な予防方法の確立、脳卒中や心筋梗塞の発症を減らす具体的方法の確立を目的とする。またそれが国の政策立案に十分貢献し、国民の保健・医療・福祉の向上につながる結果となることを目的とする。
研究方法
施設OGTTのデータ(吹田4,963名、久山2,487名、端野壮瞥町1,938名の合計9,388名)を作成した。指定統計調査調査票の目的外申請を行い、原死因の把握を行った。糖負荷は、空腹時に75g糖液を服用させて負荷2時間後に血糖を測定し、空腹時及び負荷後血糖値から正常群、IFG群IGT群、糖尿病群に分け、正常群を基準に、調整Cox比例ハザードモデルを用いて原死因別のリスクを検討した。
結果と考察
114,300人年の追跡の間に、1,427名の死亡が確認された。正常群を基準として、IFG、IGT、糖尿病型の全死亡に対する調整ハザード比は1.1、1.2、1.7倍であった。また、女性のIFG、IGT、糖尿病型の全死亡に対する調整ハザード比は1.4、1.5、2.2倍であった。男性の糖尿病型の全死亡に対する調整ハザード比は1.5倍であった。また、HOMA指数1.5未満を基準として、HOMA指数2.5以上の群の男女合計の全死亡調整ハザードは1.2と有意に高かった。糖尿病正常群で非喫煙群を基準に、全死亡のハザード比は、耐糖能正常で喫煙群が1.6、IFGで喫煙群が1.8、IGTで非喫煙群が1.3、IGTで喫煙群が1.8、糖尿病型で非喫煙群が1.7、糖尿病型で喫煙群が2.9であった。
結論
9千名の一般住民の糖負荷検査のコホート解析の結果から、男性の糖尿病型、女性の境界型と糖尿病型は全死亡のリスクである。さらに喫煙でそのリスクが上がるため、糖尿病、境界型の血糖コントロールと同時に禁煙指導を進めていくことが望まれる。また、糖負荷検査は予後と関係があることが分かった。しかし、糖負荷検査自身受診者に対して、時間的、経済的、複数の採血があるために代わりになり得る検査として、HOMA指数が考えられた。今後さらに慎重に検討を行い、感度特異度の良い項目を検討して、生活習慣改善の方策を資することができるようにする。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
糖負荷検査は予後と関係があることが分かった。しかし、糖負荷検査は受診者に対して、時間的、経済的、複数の採血があるために代わりになり得る検査として、HOMA指数が考えられた。今後さらに慎重に検討を行い、感度特異度の良い項目を検討して、生活習慣改善の方策を資することができるようにする。
臨床的観点からの成果
9千名の一般住民の糖負荷検査のコホート解析の結果から、男性の糖尿病型、女性の境界型と糖尿病型は全死亡のリスクである。さらに喫煙がそのリスクを上げるため、糖尿病、境界型の血糖コントロールと同時に禁煙指導を進めていく必要があることがわかった。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
財団法人 循環器病研究振興財団 の発行する冊子「平成21年度 厚生労働科学研究費 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業及び推進事業」の取り上げられる。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
25件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Akasaka H,Katsuya T,Saitoh S, et al.
A promoter polymorphism of Lamin A/C gene is an independ genetic predisposition to arterial stiffness in Japanese general population (The Tanno-Sobetsu study).
J Atheroscler Thromb , 16 , 404-409  (2009)
原著論文2
Doi Y, Ninomiya T, Hata J, et al.
Proposed criteria for metabolic syndrome in Japanese based on prospective evidence: the Hisayama Study.
Stroke , 40 , 1187-1194  (2009)
原著論文3
Doi Y, Ninomiya T, Hata J, et al.
Impact of glucose tolerance status on development of ischemic stroke and coronary heart disease in a general Japanese population: the Hisayama Study.
Stroke  (2010)
原著論文4
Mukai N, Doi Y, Ninomiya T et al.
Impact of metabolic syndrome compared to impaired fasting glucose on the development of type 2 diabetes in a general Japanese population: the Hisayama Study.
Diabetes Care. , 32 , 2288-2293  (2009)
原著論文5
Imamura T, Doi Y, Arima H, et al.
LDL cholesterol and the development of stroke subtypes and coronary heart disease in a general Japanese population: the Hisayama Study.
Stroke. , 40 , 382-388  (2009)
原著論文6
Arima H, Tanizaki Y, Yonemoto K, et al.
Impact of blood pressure levels on different types of stroke: the Hisayama Study.
J Hypertens . , 27 , 2437-2443  (2009)
原著論文7
Arima H, Yonemoto K, Doi Y, et al.
Development and validation of a cardiovascular risk prediction model for Japanese: the Hisayama Study.
Hypertens Res  (2009)
原著論文8
Nakano T, Ninomiya T, Sumiyoshi S,et al.
Association of kidney function with coronary atherosclerosis and calcification in autopsy samples from Japanese elders: the Hisayama Study.
Am J Kidney Dis  (2009)
原著論文9
Nakashima Y, Kiyohara Y, Doi Y,et al.
Risk factors for coronary atherosclerosis in a general Japanese population: the Hisayama Study.
Pathol Res Pract. , 205 , 700-708  (2009)
原著論文10
Song J, Sumiyoshi S, Nakashima Y, et al.
Overexpression of heme oxygenase-1 in coronary atherosclerosis of Japanese autopsies with diabetes mellitus: the Hisayama Study.
Atherosclerosis , 202 , 573-581  (2009)
原著論文11
Kokubo Y, Toyoda K, Okamura T, et al.
Impact of Blood Pressure Category on Carotid. Artery Intima-Media Thickness with and without Higher C-reactive Protein in a General Urban Japanese Population: The Suita Study.
Stroke. , 41  (2010)
原著論文12
Kokubo Y, Makino H, Okamura T,et al.
The Relationship of Oral Glucose Tolerance Test with All-cause and Stroke Mortality in a General Urban Japanese Cohort: The Suita Study.
Stroke. , 41  (2010)
原著論文13
Furukawa Y, Kokubo Y, Okamura T,et al.
The Relationship between Waist Circumference and the Risk of Stroke and Myocardial Infarction in a Japanese Urban Cohort: The Suita Study.
Stroke. , 41  (2010)
原著論文14
Kokubo Y, Okamura T, Watanabe M,et al.
The Relationships of Oral Glucose. Tolerance Test with All-cause Mortality, Cardiovascular Diseases, and Cancers Mortality in a Prospective Urban Japanese Population: The Suita Study.
Circulation.. , 120 , 398-399  (2009)
原著論文15
Okamura T, Kokubo Y, Watanabe M,et al.
Triglycerides and non-high-density lipoprotein cholesterol and the incidence of cardiovascular disease in an urban Japanese cohort: The Suita study.
Atherosclerosis.  (2009)
原著論文16
Watanabe M, Okamura T, Kokubo Y, et al.
Elevated serum creatine kinase predicts first-ever myocardial infarction: a 12-year population-based cohort study in Japan, the Suita study.
Int J Epidemiol..  (2009)
原著論文17
Okamura T, Kokubo Y, Watanabe M, et al.
Low-density lipoprotein cholesterol and non-high-density lipoprotein cholesterol and the incidence of cardiovascular disease in an urban Japanese cohort study: The Suita Study.
Atherosclerosis. , 203 , 587-592  (2009)
原著論文18
Kokubo Y, Nakamura S, Okamura T, et al.
Relationship between blood pressure category and incidence of stroke and myocardial infarction in an urban Japanese population with and without chronic kidney disease: the Suita Study.
Stroke. , 40 , 2674-2679  (2009)
原著論文19
Arima H, Yonemoto K, Doi Y, et al.
Development and validation of a cardiovascular risk prediction model for Japanese: the Hisayama Study.
Hypertens Res , 32 , 1119-1122  (2009)
原著論文20
Nakano T, Ninomiya T, Sumiyoshi S, et al.
Association of kidney function with coronary atherosclerosis and calcification in autopsy samples from Japanese elders: the Hisayama Study.
Am J Kidney Dis , 55 , 1-4  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-