虚血性心疾患に対する外来型心臓リハビリテーションの有効性のエビデンスの確立と普及方策の検討に関する多施設研究

文献情報

文献番号
200926009A
報告書区分
総括
研究課題名
虚血性心疾患に対する外来型心臓リハビリテーションの有効性のエビデンスの確立と普及方策の検討に関する多施設研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 葉一(国立循環器病センター 心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊東春樹((財)日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院)
  • 百村伸一(自治医科大学附属大宮医療センター総合医学第1)
  • 野原隆司((財)田附興風会医学研究所北野病院循環器内科)
  • 代田浩之(順天堂大学循環器内科)
  • 増田 卓(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科)
  • 上月正博(東北大学医学系研究科機能医科学講座内部障害学分野)
  • 牧田 茂(埼玉医科大学 リハビリテーション医学教室)
  • 上嶋健治(京都大学大学院医学研究科EBM研究センター)
  • 折口秀樹(九州厚生年金病院循環器内科)
  • 安達 仁(群馬県立心臓血管センター循環器内科)
  • 長山雅俊((財)日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院循環器内科)
  • 大宮一人(聖マリアンナ医科大学循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、わが国における虚血性心疾患に対する心臓リハの普及促進をめざし、特に外来通院型心臓リハに関して有効性のエビデンスの確立および普及方策の検討を多施設研究として実施することである。
研究方法
本年度は、1)虚血性心疾患に対する外来型心臓リハの有効性に関する多施設前向き登録研究、2)冠動脈インターベンション(PCI)後外来心臓リハの効果に関する前向き無作為割り付け試験、3)冠動脈バイパス術(CABG)後心臓リハの効果に関する多施設後ろ向き調査、4)急性心筋梗塞(AMI)後心臓リハ全国実態調査追加解析(心臓リハの採算性、1セッションあたり参加患者数)、5)海外有力施設調査、6)心臓リハの社会的認知度に関する調査、を実施した。
結果と考察
1)多施設前向き登録研究: web症例登録システムにより今年度新たに366例、合計610例が登録された。
2) PCI後前向き無作為割り付け試験: 研究計画が倫理委員会で承認され今後症例登録を進める。
3)CABG後多施設後ろ向き調査: CABG後外来心臓リハ施行群242例と非施行例107例の予後を調査した結果、心臓リハ施行群は運動耐容能増加率が有意に大きく、3年後までの心疾患による再入院率が有意に低いことが明らかになった。
4)全国実態調査追加解析: 心臓リハの収支バランスは施設ごとのばらつきが大きいこと、平均的施設では1日のAMI心臓リハ参加患者数は2-5人と少ないことが示され、参加率・継続率の向上などの経営努力が必要であることが初めて明らかになった。
5)海外心臓リハ実施有力施設調査: わが国と比較して欧米の心臓リハプログラムでは、栄養士・臨床心理士の配置率や運動負荷試験に基づく運動処方決定率が高く、時期別・重症度別の複数のセッションが選択可能で、プログラム完了率が高く、Phase IIIへの連携が整備されており、患者窓口負担額が低いなどの新知見が明らかになった。
6)心臓リハの社会的認知度に関する調査: web調査の結果、一般健常者5716名のうち90%が心臓リハについて聞いたことが無いなど、心臓リハの社会的認知度が著しく低いことが明らかになった。
結論
CABG後の外来通院型心臓リハにより運動耐容能や冠危険因子のみならず長期予後改善が得られることが初めて示された。また全国実態調査、海外有力施設調査から心臓リハの採算性と患者数、およびわが国の心臓リハがめざすべき方向性に関する知見を得た。さらに心臓リハの社会的認知度がきわめて低いことを明らかにした。今後、引き続き前向き登録および無作為割り付け試験を継続する予定である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200926009B
報告書区分
総合
研究課題名
虚血性心疾患に対する外来型心臓リハビリテーションの有効性のエビデンスの確立と普及方策の検討に関する多施設研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 葉一(国立循環器病センター 心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊東春樹((財)日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院)
  • 百村伸一(自治医科大学附属大宮医療センター総合医学第1)
  • 野原隆司((財)田附興風会医学研究所北野病院循環器内科)
  • 代田浩之(順天堂大学循環器内科)
  • 増田 卓(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科)
  • 上月正博(東北大学医学系研究科機能医科学講座内部障害学分野)
  • 牧田 茂(埼玉医科大学 リハビリテーション医学教室)
  • 上嶋健治(京都大学大学院医学研究科EBM研究センター)
  • 折口秀樹(九州厚生年金病院循環器内科)
  • 安達 仁(群馬県立心臓血管センター循環器内科)
  • 長山雅俊((財)日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院循環器内科)
  • 大宮一人(聖マリアンナ医科大学循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、わが国における虚血性心疾患に対する心臓リハの普及促進をめざし、特に外来通院型心臓リハに関して有効性のエビデンスの確立および普及方策の検討を多施設研究として実施することである。
研究方法
本研究では、1)虚血性心疾患に対する外来型心臓リハの有効性に関する多施設前向き登録研究、2)冠動脈インターベンション(PCI)後外来心臓リハの効果に関する前向き無作為割り付け試験、3)冠動脈バイパス術(CABG)後心臓リハの効果に関する多施設後ろ向き調査、4)急性心筋梗塞(AMI)後心臓リハの効果と費用に関する多施設調査解析、5) AMI後心臓リハ全国実態調査追加解析、6)海外有力施設調査、7)心臓リハの社会的認知度に関する調査、を実施した。
結果と考察
1)多施設前向き登録研究:web症例登録システムにより合計610例が登録された。
2) PCI後前向き無作為割り付け試験:研究計画が倫理委員会で承認され今後症例登録を進める。
3)CABG後多施設後ろ向き調査:CABG後外来心臓リハ施行群242例と非施行例107例の予後を調査した結果、心臓リハ施行群は運動耐容能増加率が有意に大きく、3年後までの心疾患による再入院率が有意に低いことが明らかになった。
4) AMI後多施設調査解析:AMI後心臓リハ施行群387例と非施行例286例を比較したところ、心臓リハが医療費を増加させることなく運動耐容能と冠危険因子を改善させ、再入院を有意に減少させることが示された。
5)全国実態調査追加解析:心臓リハの収支バランスは施設ごとのばらつきが大きいこと、平均的施設では1日のAMI心臓リハ参加患者数は2-5人と少ないことが示され、参加率・継続率の向上などの経営努力が必要であることが初めて明らかになった。
6)海外有力施設調査:わが国と比較して欧米の心臓リハプログラムでは、栄養士・臨床心理士の配置率が高く、プログラム完了率が高く、Phase IIIへの連携が整備され、患者窓口負担額が低いなどの新知見が明らかになった。
7)心臓リハの社会的認知度に関する調査:web調査の結果、一般健常者の90%が心臓リハについて聞いたことが無く、心臓リハの社会的認知度が著しく低いことが明らかになった。
結論
AMI後およびCABG後の外来通院型心臓リハにより長期予後改善が得られることがわが国で初めて示された。また全国実態調査、海外有力施設調査から心臓リハの採算性と患者数、およびわが国の心臓リハがめざすべき方向性に関する知見を得た。さらに心臓リハの社会的認知度がきわめて低いことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 虚血性心疾患に対する外来通院型心臓リハビリテーション(リハ)の効果を多施設調査により検討した。急性心筋梗塞後心臓リハ施行群387例と非施行群286例の予後を多変量解析し、心臓リハ参加が虚血性心事故(死亡または再入院)を有意に減少させる独立規定因子であることを明らかにした。また冠動脈バイパス術後の外来心臓リハ施行群242例と非施行群107例の予後を調査し、心臓リハ施行群は運動耐容能改善率が有意に大きく、3年後までの心疾患再入院率が有意に低いことを明らかにした。これらはわが国で初めての知見である。
臨床的観点からの成果
 過去の報告において、わが国では退院前の病院滞在型心臓リハはある程度普及しているものの、退院後の外来通院型心臓リハの普及はきわめて遅れていることが指摘されている(Circulation J 2007;71:173-179)。本研究では多施設調査により、急性心筋梗塞後および冠動脈バイパス術後患者が退院後に外来通院型心臓リハを継続することにより運動耐容能や冠危険因子の改善に加えて、長期予後の改善が得られることをわが国で初めて示した。今後は外来心臓リハの普及促進方策を進める必要がある。
ガイドライン等の開発
 日本循環器学会の「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン (2007年改訂版)」(日本循環器学会ホームページ http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_nohara_h.pdf)の次期改訂においては、本研究班の成果が取り入れられるべきである。
その他行政的観点からの成果
 全国実態調査解析により、心臓リハの収支バランスは施設ごとのばらつきが大きいことおよび、わが国の平均的施設で想定される1日当たり心臓リハ参加患者数は2-5人と少ないことが初めて示され、参加率・継続率向上などの経営努力と心臓リハ施設基準の要件緩和が必要であることが明らかになった。さらに海外施設調査の結果、わが国と比較して欧米の心臓リハプログラムでは、栄養士・臨床心理士の配置率が高く、患者窓口負担額が低く、プログラム完了率が高く、第Ⅲ相リハへの連携が整備されているなどの新知見が明らかになった。
その他のインパクト
 平成20年11月1日に市民公開講座を開催し一般市民115名の参加者を得た。また共同通信「医療新世紀2010年5月6日付け」(http://www.47news.jp/feature/medical/2010/05/post-317.html)に当研究班の研究成果の一部が掲載された。さらに心臓リハの社会的認知度をweb方式で調査した結果、一般健常者5716名のうち90%が心臓リハについて聞いたことが無いなど、心臓リハの社会的認知度が著しく低いことが明らかになった。

発表件数

原著論文(和文)
37件
原著論文(英文等)
34件
その他論文(和文)
139件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
71件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-