がん患者及びその家族や遺族の抱える精神心理的負担によるQOLへの影響を踏まえた精神心理的ケアに関する研究

文献情報

文献番号
200925077A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者及びその家族や遺族の抱える精神心理的負担によるQOLへの影響を踏まえた精神心理的ケアに関する研究
課題番号
H21-がん臨床・若手-021
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
清水 千佳子(国立がん研究センター中央病院 第一領域外来部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂東 裕子(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
  • 加藤 友康(国立がんセンター中央病院 総合病棟部)
  • 野澤 桂子(山野美容芸術短期大学)
  • 山本 精一郎(国立がんセンター がん対策情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳癌患者のサバイバーシップに関連する諸問題の中でも、特に若年性で問題となる妊孕性と外見関連の副作用とその情報提供に焦点を絞り、実態を明らかにし、科学的根拠と患者ニーズに基づいたサバイバーシップ支援プログラムを構築することを目的とする。
研究方法
①乳癌化学療法による卵巣機能障害と妊孕性温存に関する情報提供プログラムの構築
化学療法後の妊孕性温存および乳癌術後の妊娠が予後に与える影響についての情報の情報源・情報の質を評価し、乳癌診療に携わる医師・患者を対象に、卵巣機能障害についての認知度、情報提供体制の調査を実施。
②化学療法をうける患者の外見変化に対する情報提供および支援プログラムの構築
外見に与える変化・QOLについてアンケート調査を行い、実際にどのような外見変化が生じているのか、外見変化がQOL低下に関連しているのか明確にし、情報提供の質を評価する。
結果と考察
1)外来通院化学療法中の患者に対する副作用に関するアンケート調査
苦痛度の高い外見変化は頭髪の脱毛、乳房切除、眉毛・睫毛の脱毛、手の爪の変化、顔や手の浮腫、皮膚の色素新着などであった。若年者群(50歳以下)と高齢者群(60歳以上)の比較では、客観的身体症状、客観的外見症状には有意差を認めなかったもののの、「自分の外見が変化した」と感じた患者は若年者層に多く(p<0.05)、外見関連QoLも若年者群の方が低かった。
2)若年乳癌患者に対する薬物療法の情報提供と治療選択に関する実態調査の実施
妊孕性温存についての関心を表出した患者群としなかった患者群の比較では、患者背景(年齢、出産歴、臨床病期)および医師からの情報提供の有無、薬物療法の内容に有意差を認めた。
3)卵巣機能予備能測定法の開発
研究計画を策定した。
4)乳癌患者のサバイバーシップに関する合同班会議
各研究班の特徴と目標が明らかとなった。乳癌患者のサバイバーシップに関連するテーマとして、遺伝子検査に関する情報提供の在り方に関しての研究が不十分であることが判明した。
結論
がん治療による外見の変化には身体的副作用と同様に苦痛度が高いものも含まれ、特に若年者層における外見関連支援のニーズが高いことが明らかとなった。乳がん初期治療後の妊孕性に関して、患者は必ずしも治療時にニーズを意識しているとは限らない。今後の検討において、若年乳癌患者の潜在ニーズに踏み込んだ情報提供の在り方を検討したい。

公開日・更新日

公開日
2010-06-08
更新日
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