センチネルリンパ節理論による頭頸部癌微小転移の解明と個別的治療法の開発

文献情報

文献番号
200925068A
報告書区分
総括
研究課題名
センチネルリンパ節理論による頭頸部癌微小転移の解明と個別的治療法の開発
課題番号
H21-がん臨床・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 泰久(愛知県がんセンター 頭頸部外科部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉本 世一( 国立がんセンター中央病院 頭頸科)
  • 松塚 崇(福島県立医科大学 医学部)
  • 甲能 直幸( 杏林大学 医学部)
  • 本間 明宏( 北海道大学 医学部)
  • 塩谷 彰浩(防衛医科大学校 耳鼻いんこう科)
  • 横山 純吉(順天堂大学 医学部)
  • 藤岡 保範(杏林大学 医学部)
  • 小須田 茂(防衛医科大学校 放射線医学)
  • 古屋 信彦(群馬大学 医学部)
  • 吉田 知之( 東京医科大学 医学部)
  • 永藤 裕(杏林大学 医学部)
  • 吉崎 智一(金沢大学 医学部)
  • 上村 裕和(大阪府立成人病センター 耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
センチネルリンパ節(SN)理論に基づく頭頸部癌微小転移の診断法と治療法の開発により、これまでの標準的治療法の改良でなく、低侵襲で機能を温存する個別化医療の開発を目指す。
研究方法
1)頭頸部癌リンパ節生検法の症例登録によるデータベース化とガイドライン作成では調査研究計画を実施した。 2)口腔癌に対するSNナビゲーション頸部郭清術の研究では臨床第2相試験の計画書を作成し実施した。 3)咽喉頭癌に対するSNナビゲーション頸部郭清術の研究では多施設での前向き研究の計画を検討した。 4)分子生物学的手法によるSN微小転移検出とその臨床応用ではLAMP法とその応用であるOSNA法の臨床応用を検討した。 5)放射性同位元素を用いないSN診断法の開発では被爆のないより安全な、さらに空間分解能に優れたSN検出法として、磁性体造影剤を用いた診断法とインドシアニングリーン(ICG)蛍光法によるSN生検法の開発の研究に着手した。 6)センチネルリンパ節薬物療法の研究では、転移リンパ節の制御にSN理論に基づくリンパ管を利用した薬物療法を応用する研究を開始した。
結果と考察
1)7施設、計177症例のSN生検術の実態調査を行った結果、本研究によるSN生検法の偽陰性率は6.9%であった。 2)臨床的にリンパ節転移を認めないlateT2とT3口腔癌症例にて、SNナビゲーション領域頸部郭清術の有用性を検証する。平成21年12月から登録を開始し、1月にweb登録を導入、これまで6施設でweb登録システムの導入を完了した。 3)咽喉頭癌に対するSNナビゲーション頸部郭清術の多施設での前向き研究を検討した。 4)臨床研究の結果からは、サイトケラチン19をマーカーとしたOSNA法を用いた転移リンパ節の迅速診断はこれまでの病理診断と同等の精度を持つ可能性があると考えられた。将来的にSN転移術中迅速診断への臨床応用が可能であることが示唆された。 5)磁性体造影剤を用いたMRIによる頸部リンパ節転移診断が検討された。ICG蛍光法では頭頸部領域のSNを経皮的に同定できると考えられ、臨床応用への展開が期待される。 6)基礎的研究では舌癌頸部リンパ節転移の動物モデルを作成中である。臨床研究では動注化学療法による臨床試験を計画した。
結論
SN理論に基づく頭頸部癌微小転移の診断法と治療法の開発は、これまで原発部位と病期により一律に行われてきた治療の改良に留まらず、個別的かつ低侵襲な革新的外科治療法を実現する可能性がある。過剰侵襲のない最適な外科治療と機能障害の軽減さらに術後再発の減少のある個別化された外科治療が期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
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