災害時の保健・医療・福祉及び防災分野の情報集約及び対応体制における連携推進のための研究

文献情報

文献番号
202227029A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時の保健・医療・福祉及び防災分野の情報集約及び対応体制における連携推進のための研究
課題番号
22LA2003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 原岡 智子(松本看護大学 看護学部)
  • 池田 真幸(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
  • 李 泰榮(イ テヨン)(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
  • 宮川 祥子(慶應義塾大学 看護医療学部/健康マネジメント研究科)
  • 冨尾 淳(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 相馬 幸恵(新潟県三条地域振興局健康福祉環境部)
  • 菅 磨志保(関西大学 社会安全学部)
  • 市川 学(芝浦工業大学 システム理工学部)
  • 池田 和功(和歌山県湯浅保健所)
  • 奥田 博子(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
14,137,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交代 池田真幸(令和4年4月1日~令和4年8月31日) →李 泰榮(令和4年9月1日以降) 所属機関異動 研究分担者 池田真幸 国立研究開発法人防災科学技術研究所(令和4年4月1日~令和4年8月31日) →防災科学技術研究所より出向   内閣府 政策統括官(防災担当)付 参事官(地方・訓練担当)付(令和4年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
災害に対する情報収集システムの活用を含む保健医療福祉調整本部体制について、実世界での経験を評価し、その効果的な運用や課題を抽出し、実社会での活用を推進することが目的である。令和4(2022)年度の重点目標は、実社会における災害情報フローの把握と有るべき姿の検討である。
研究方法
関係者へのヒアリング、被災自治体等へのアンケート調査、既存資料の収集を行い、情報フローを含めた保健医療福祉調整本部の有るべき姿等について研究班内での検討を行った。また、日本公衆衛生学会総会においてシンポジウムを企画・開催して研究成果の発表を行った。
結果と考察
(1) 風水害時における保健医療福祉活動実態に関する調査研究:保健医療福祉活動に関する事前の計画作成や訓練実施等をはじめ、災害時に行った対応とそれにあたった拠点や人員等の体制、さらには、組織間の情報の共有と活用に関する実態が明らかになった。具体的には、組織間の情報の共有について、まず地域の被害程度に関する情報、次に医療機関や福祉施設の被害状況や支援要請などの支援に必要な情報の共有が行われていた。

(2) 保健医療調整本部等の検討:インタビューした好事例において、県保健所と市保健所の合同の調整本部が設置され、全支援団体・組織が参加し、迅速な情報収集・分析および対応が行われていた。都道府県におけるCOVID-19の対応については、結果的にIncident Command System (ICS)の機能を含んだ組織であったと考えられる。

(3) 災害対応における情報流通の課題と要求事項に関する研究:情報収集の課題は第1層:通信インフラ、第2層:設備・制度、第3層:情報マネジメント、第4層:意思決定と評価に構造化された。それぞれの階層で情報流通の課題と要求事項が整理されたことから、今後はそれぞれの課題に対応すべき組織的主体を同定し、課題解決のために行うべき施策についての検討を進める。

(4) 情報集約及び対応体制等に関する海外の情報収集:調査を行ったいずれの国・機関においても、情報集約を通じて状況認識を共有する一連のプロセスが重視されており、多機関・多職種が関わる中で効果的・効率的な災害対応に不可欠な取組みとして推奨されていた。本部組織等における情報システムの整備については、WHOが提示する要件を参考に整備するとともに、人工知能をはじめとする新たな技術の動向にも着目し、定期的に見直し・更新を行うことが重要である。

(5) ドイツ南西部で発生した水害に関するインタビュー調査:主な課題として、国と州の調整や役割分担、住民の多くが高齢者でインターネットを使ったコミュニケーションがとりづらかったこと、災害後の人口減少・医師不足等が挙げられた。民間やボランティアが大きな役割を果たしていた。

(6) 避難者・在宅者等の情報把握・支援の検討:支援団体はいずれも、地域住民の住居等を含めた被災による影響や、生活上の支援ニーズを明らかにし、支援につなぐために調査を行っていた。支援者間の情報共有の不足、行政の健康相談票の生活支援の観点の不足などの課題があげられた。

(7) 災害ケースマネジメント等の検討:生活再建期は、概ね保健師等による巡回調査が行われ、基礎自治体から地域支え合いセンターに被災者情報が提供されていたが、応急対応期に把握された被災者情報は、生活再建期の支援体制に伝達されていない傾向が見られた。また、行政と個人情報を共有した活動が可能な専門士業連絡会の活動について、官民連携に基づく支援体制構築の課題と可能性が示された。

(8) 情報収集のあり方研究:災害時保健医療福祉活動支援システム(D24H)を導入して訓練を行い、本部がどのような情報収集体制を整えるかを明らかにした。情報収集体制の整備や意思決定方法に課題があり、今後、情報収集とその活用方法についての訓練・研修の実施が必要と結論づけた。

(9) 情報能力向上方策等の検討:保健所情報システム(くものいと)は操作が容易で普及しやすい一方で、D24Hは少し複雑であり研修や解説の機会が必要である。情報活用の流れ・業務として、情報の収集、分析、評価、共有、管理があり、その体制を早急に構築する必要がある。
結論
実社会・実災害での状況として、地域の被害程度や医療機関・福祉施設の被害状況等の情報が共有され、またICSに沿った体制が一定程度とられていた。災害対応の有るべき姿の全体像として、情報流通について階層的に整理された。また、状況認識の共有や、民間との連携等が重要である。主要な実務として、被災による影響や生活上の支援ニーズ等の把握、関係者間のネットワーク、情報共有が重要である。災害対応の向上の検討として、情報活用方法の明確化や活用訓練が重要である。

公開日・更新日

公開日
2023-07-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202227029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,372,000円
(2)補助金確定額
18,372,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,670,491円
人件費・謝金 827,899円
旅費 1,961,394円
その他 8,677,216円
間接経費 4,235,000円
合計 18,372,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-09-19
更新日
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