『新しい生活様式』に即した熱中症予防対策の評価及び推進のための研究

文献情報

文献番号
202227027A
報告書区分
総括
研究課題名
『新しい生活様式』に即した熱中症予防対策の評価及び推進のための研究
課題番号
22LA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
横堀 將司(日本医科大学 大学院医学研究科救急医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 神田 潤(帝京大学 医学部)
  • 鈴木 健介(日本体育大学 保健医療学研究科)
  • 阪本 太吾(日本医科大学付属病院 救命救急科)
  • 林田 敬(慶應義塾大学 医学部救急医学)
  • 登内 道彦(一般財団法人気象業務支援センター配信事業部)
  • 伊香賀 俊治(慶應義塾大学 理工学部)
  • 上野 哲(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所)
  • 三宅 康史(帝京大学 医学部 救急医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
14,133,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延は国民生活に大きな影響を及ぼしている。本研究は、コロナ禍における熱中症対策の科学的論拠を集積し、効的な周知啓発を実施することにより、将来的な熱中症予防施策の推進を目指すことを目的とした。
研究方法
 『COVID-19蔓延下における熱中症対応の手引き』(R2改訂版)に即したマスク着用等の新しい生活様式と熱中症発症の予防効果の評価。新しい生活様式下での熱中症発症のリスク関連因子の評価を行うため、医療機関で熱中症と診断された対象の情報を収集する。また対象の一般診療情報を解析し、病態や治療の現状を把握し、発生の予防に向けた地域医療へのアプローチを検討する。
研究の種類・デザイン:前向き観察研究。2022年6月1日(予定)から9月30日までの期間に、日本救急医学会に登録された医療機関(日本救急医学会指導医施設約140施設)で熱中症と診断された患者を対象にする。「熱中症に関する全国調査」の調査用紙に加えさらに別個に発症患者のマスク着用の有無及びCOVID-19の診断の有無(PCR検査と抗原検査)を問う質問紙を用い、全国的にマスク着用およびCOVID-19と熱中症発症とのリスク関連を調査する。
結果と考察
 まず、コロナ禍における熱中症治療・予防における新規エビデンスの集積を行った。熱中症のレジストリ研究であるHeatstroke Study(HS)参加施設の165施設から、2020年に1,081例、2021年に669例が登録された。死亡率は2020年8.4%、2021年9.1%であった。熱中症重症度分類Ⅲ度が2020年96.4%、2021年97.0%とほぼ全例を占め、65歳以上約65%、屋外発症約50%、労作性熱中症30~40%となった。Active Cooling実施率は2020年の33.5%から2021年には22.3%に減少した。
続いて熱中症診断支援アプリ「Join Triage」を用いたリアルワールドの患者データをも使用し、熱中症重症度分類をマスク非着用群とマスク着用群で比較した。これによると、熱中症を発症した476例中、Ⅱ・Ⅲ度熱中症でマスク着用例は226例(47.5%)、非着用例は160例(33.6%)で有意差が認められ(p<0.01)、熱中症重症化とマスク着用の関連性については引き続き議論が必要であると思われた。
また、熱中症の発症には大きく暑熱順化が関わることから、経年的な暑熱順化の変化を知ることも重要であったが、これにおいては2015~2021年の7~9月の熱中症救急搬送者数を用い、都道府県別日別に10万人当り1人の割合で救急搬送される日最高WBGT(W10)を求めた。いずれの年齢でもW10は月ごとに上昇しており、盛夏になるに従い暑熱順化が高まったと考えられた。さらには医療情報との連携により活用可能な暑さ指数(湿球黒球温度:Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)の二次元分布を推定し、活用に資することを目的に計算システムを試作する取り組みも行うことができた。COVID-19前の2012~2018年の夏季における匿名レセプト情報から得られる熱中症受診者と、WBGT6都市平均最高値を合わせ分析したデータからは、本邦の夏季の熱中症受診者数は、基本的に8月上旬にピークを迎え、WBG31以上の発生頻度と期間の長さにより受診者数が影響を受けると考えられた。さらには、熱中症後の転帰を予測するリスク評価ツール(J-ERATOスコア)の検証をHSのデータから行った。多変量ロジスティック回帰分析により、J-ERATOスコアは退院までの生存率(調整オッズ比[OR]0.47;95%信頼区間[CI]0.37-0.59)および1日目の播種性血管内凝固(DIC)の発生(調整OR 2.07;95%CI 1.73-2.49 )の独立予測因子であった。J-ERATOスコアの至適カットオフ値は5点であった。
結論
 研究により得られた成果の今後の活用・提供:上記の研究も勘案しつつ、『新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き(第2 版)』(以下、手引き)を編集した。このなかではクリニカルクエスチョンとして、予防(マスク・エアコン)、診断(臨床症状・血液検査・胸部CT 検査)、治療(冷却法)などについて現在のエビデンスを集約し、広く発出することができた。2020年の初版と比して、マスクの身体における影響や、熱中症治療における冷却方法の推奨などを、最新のエビデンスをもとに改訂することができた。この取り組みは次年度の『熱中症ガイドライン2024』の発出に繋げる予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202227027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,372,000円
(2)補助金確定額
13,179,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,193,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,205,188円
人件費・謝金 1,226,296円
旅費 530,780円
その他 3,977,954円
間接経費 4,239,000円
合計 13,179,218円

備考

備考
自己資金:218円

公開日・更新日

公開日
2023-09-28
更新日
-